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キャスタ×ホリック  ~夢見るお姫さま 一話~ 
2006.08.30.Wed / 05:40 
乗り合い馬車にしては大きなものだった。
四頭の牝馬が先頭を悠々と闊歩する。馬は皆、まったくと言って良いほど染み一つ見当たらない鮮やかな栗色。
毛並みは素人目にしても艶やかで、縮れ一つない。風を切るたびに髪一本一本が踊るように靡いている。
御者の座席には目が痛むほど真白の軍服を着込んだ兵士が座り、手綱を握り締めていた。
それなりの数の勲章を胸に下げ、肩には金色の紙縒りが宛がわれている。儀式用の軍紀礼装である。
牽引する客室もそれは豪華なもので、深い色の緑をしており、黄色の線で縁取られる。
記号化された狼の紋章が王国ご用達を示していた。
馬車は大麦畑の畦道をがたごとがたごと走る。

「ぅぅああぁ~、揺れるっスね~」
馬車内に数多くある向き合ったビロード地の椅子群のひとつ。
腰窓の傍の椅子に掛けた褐色肌の少女がビブラートのかかった声で独自の音階に乗せて歌う。
年は十代中盤ほど。短く整えられた銀髪が陽光と共に煌く。
黒のタートルネックセーターに下は黒スパッツ。モノクロのバッシュを穿いた健康そうな少女だ。
「静かにしろと言ったはずだ、インレ……。と、言ったのはこれで三度目だ。」
少女インレの向かいに座る二十歳前後の男は硬く目を瞑り、窘める。声色は既に怒気はなく、諦観を帯びていた。
上下をタキシードで包み、濡れたような色をした漆黒のブーツ。ネクタイも黒という葬式帰りのような井出達だ。
「だってだって!お出かけなんて久しぶりっスから~。」
「お出かけじゃない。仕事だ。」
「ボクにとっては似たようなもんっス!ほら、マスターも歌いましょう!」
マスターと呼ばれた男、名をシュウと言う。
彼は頭痛がするのか眉間に皺を深く刻み指を軽く宛がい深く嘆息。
対面の少女は男と真逆に太陽さえ負けを認める眩しい笑顔。
窓に体を乗り出し、奏でていた鼻歌が佳境に入った頃だ。

「さっきからうっせぇぞゴラ!!!黙って乗れねぇのか!!アア゛!?」
床板が話せるなら悲鳴の後に激しい抗議をするくらいに蹴った音と怒声が馬車を駆け巡る。
しんと静まった周囲と対照的に荒く息巻いている大柄の男が居た。
成人男性の中でも一際高背の部類に入るだろう身長の持ち主である。
デニムのズボンに上半身は裸という街中を歩けば一発職質だろう風体。
綺麗に剃られた禿頭は怒り心頭と言うべきか、唐辛子の如く朱に染まっている。
「オラ、テメェだよ黒いガキ!聞いてんのかァ!」
シュウは瞑っていた目を薄く開ける。触れれば切れるのではないかと言うほど鋭い、刃のように研ぎ澄まされた眼光だが、別段睨んでいるわけではない。生まれつきだ。
その視線に大柄の男は一瞬怯むが、立て続けに怒鳴ることにより持ち直した。
「向かいに座ってるお前か!?ガキの保護者はよぉ!」
ダミ声にドスを利かせた、質問と言うより恐喝に近い言葉を投げかける。

だが、受けたシュウは蛙の顔に水を掛けたような平然顔。
「ほら、回りの皆さんにご迷惑だ。ごめんなさい、だろ?」
突然の事態に野原を駆け巡る子供状態から一転、小動物の様に怯えているインレに諭す口調で促した。
「ご、ごめんなさい。」

インレは小さな頭を深く下げた。
普通ならここで終わるかと思われたが、その謝罪では既に大炎上した大男の怒りは沈下出来ないようだった。
「ごめんで済むかいボケがぁ!」
男は警戒していたシュウが案外大人しい性格だと思い付け上がったのだろうか、肩を揺らしながらこちらに歩いてくる。
馬車は広いと言えども、それは馬車の世界でであり、歩けば十数歩で端から端まで到達する。
大柄ということもあり、直ぐにシュウとインレの座席へと到着した。

「ったくよぉ、ここは家族連れで来るトコじゃねぇんだよ。あ?解ってんのか?オイ」
微笑失笑、その類のあざ笑う声。恐らく大柄の男と同じ感想の者達から発されたものだ。
確かにこの馬車の乗員は明らかに偏った人種で構成されていた。
男。
それもどれも皆腕っ節の強そうな者ばかりである。
中には小柄な者も居るが体格は豪く堅強であることが伺える。
二十歳そこいらの細身の青年と十代の少女は此処では明らかにマイノリティであった。

インレは兢々としており、赤いルビーのような目が落ち着きなく揺れる。
幾度もシュウに向けられては逸らすを繰り返している。彼が再び目を瞑り黙しているからだ。
「静かにしろと言ったはずだ、インレ。四度目。」
聞こえるか聞こえないか程度に言うが少女には聞こえていたようだ。
そんなぁ…と呟き、今にも涙が零れる臨界点である。

「おい、聞いてんのかよっ、ガキ!」
馬車内は最早喝采で包まれていた。低い、それでいて下品な声が幾重も発せられる。
それは皆大男を呷る文句であり、止めようとするものはただ一つもない。
気を良くした大柄の男は周囲を見回しアピールするように片腕を大きく一回転。
太い唇の端を歪ませ、筋肉質の腕はインレの胸倉を掴む――

「…手を出すなら話は別だ。そこら辺にしとけ。十分反省しているだろう。コイツには珍しい事なんだ。」
ことはなかった。
男の手首はシュウに握られている。
座ったままで無造作に添えられているだけだ。
乗客の歓声は酣となっており、野卑な単語が踊る。踊る。
対する大柄の男のテンションは、意外にも周囲とは逆。赤色から青色へと変わっていた。
丸太の様に太い筋肉質の腕には血管が浮かび上がり、禿頭には青筋が見えている。
呷り、囃し立てられるが大柄の男はそれに対応することが出来ない。
何故なら握られた腕が寸分も動かないからだ。

「何をしているっ!!」
客室とは隔たれている別室から濃紺の軍服を着た体躯の良い兵士二人が乗り込んできた。
手には室内戦用に近距離対応処置として銃身が詰められた特殊短銃を携えている。
「私闘は禁止されている。やり足りぬのなら牢でやってもらうことになる。」
セーフティーを外した音が鳴り、客室は無音となる。
銃身を向けられたシュウと大男。
シュウは添えていた手を離し二三度はたく。
「失礼。牢は勘弁なのでね。」
「…チッ」
大男は毒吐き元の席へと戻っていった。

彼の手首には一筋の痣が出来ていた。それも古いものではない。
場所はシュウに掴まれていた場所。
「ブッ殺す…。」
男は忌々しげに足元を睨んでいた。


           ■    ■    ■


「足元に気をつけろ。」
「はいっス…。」

馬車は目的地へと到達。
乗客は順繰りに下車し、三々五々と散っていった。
先から俯きを維持し続け、心が所在なさげなインレに注意を促す。
バッシュの踵が石畳をノック。最後の乗員が降りたことを確認した兵士は再び配置に戻り、馬車がまた走りだす。
行方は城門。見上げるほど大きく、見惚れるほど荘厳な門である。

馬車に揺られ、到着したのは城下町。
円形の巨大広場に城。そこから放射状に道が伸び、その両脇に店。
暫く外周へ向かうと民家が目立つというよく整備された拓けた国である。
当然、人通りが少ないということはない。
ただでさえ主要な大通りなのだが、現在は磨きを掛けて賑わいを見せている。
理由。それはとある催し物である大規模な祭りが起ころうとしているからだ。
シュウらはその『催し物』に参加すべく、今ここにいる。

「おい、てめぇ…」
インレが電気が駆け抜けた様に肩を震わせる。
聞いたようなフレーズだが、先の野太い声ではない。
調律が行き届いた楽器を思わせる声だ。
「何だ、ベアトリクスか。」
シュウが振り返るとそこには長身の女性が居た。
成人男子の平均よりもやや背が高いシュウだが、彼女は彼が少し首を上げるぐらいの背である。
長く無造作に伸ばされた炎色の髪は腰まで届く。
右目は隠れているが、左目が異様に燃え上がった色をしている事ならば、恐らく逆もそうなのだろう。
純白のワンピースに所々解れが見える何処かの軍服のジャケットを羽織るというアンバランスな服装だ。
そのまま登山でも出来るのではないかと思える茶のロングブーツはしっかりと大地を踏みしめ、腕を組み、シュウを睥睨。

彼女の横には年は十代中盤だろうか、くすんだ金髪をした中性的な顔立ちの犬耳少年、コタロウが居た。
目的不明の金具がごたごた付いたレザーのパンツ、ジャケット。
大型犬でもしないような刺々しい首輪を付けていて一見アウトローっぽさはあるが、挙動不審の文字がここまで似合う奴は居ない程の顔をしている。
なにやら困った顔でぁぅぁぅ言っているが、まぁいつもの事である。
「何だ、ベアトリクスか…、じゃねぇよ失礼な!!つか、さっきのあれは何だ!?」
「…さっきの?」
「馬車のあれだ!!見ててイライライライライライライラしたっつの!!」

男勝りな口調で怒鳴り散らす長身の女性ベアトリクス。
大柄の男に負けず劣らず激昂している。
「ごめんなさいっス…」
それを見たインレが落とした肩を更に落とし、地獄行きが決定された罪人のような顔で悔いた。
「あっ…あっ…インレのことじゃねぇんだよ。このバカ、あ、シュウな。こいつが不甲斐ないからああなるんだ。うん。絶対そう。決まり。」
「でもマスターは…」
「あたしだったらあのクソ男の鼻っぱしらをグーで一発殴って終わりだぜっ。」
ベアトリクスは腕をL字に曲げ、力瘤を作る動作をするが勿論瘤は出来ない。

「暴力沙汰は流石にまずいってば…ベアトリクス。」
呆れを含んだトーンで、だがバカにはしない、そんな言葉が別方向から投げかけられた。
「なんだ、アイザックかよ。」
「自分はさっき同じような扱いをシュウに受けて怒ってたのにさ…」

アイザックと呼ばれる男性はシュウと同じく二十歳前後なのだが、一見すると十代後半にも見える、そんな男だ。
濃緑の髪は短く刈られ、もみ上げが長く伸ばされそれぞれ円環で括られている。
コインほどのレンズを持つ眼鏡が特徴的である。
横には比較的地味なこげ茶で構成されたエプロンドレスを羽織った少女が居た。
肌はアルビノを超える白。無色を誇る白さである。
髪はアイザックと同じ緑色でボブカットを少し短くした様。
無表情な顔で小首を傾げ、落ち込むアイザックの肩をゆっくりとさする。
「主人様、鰤は今が旬でございます。」

「…ヘルメスの調子は悪くないのか?」
シュウが視線を逸らし困った顔でアイザックに尋ねるが、
「ん?いいや、いつもと同じだよ?」
「そうか…そうだよな…いつもなんだよな…」
「変なシュウだね、ヘルメス。」
「御意。」
ちなみにこの間、ヘルメスと呼ばれた少女は眉一つ動かすことない。

「でもシュウ、あれはちょっと良くなかったかな。インレちゃんが可哀想だった。」
ふとアイザックは真顔に戻る。
常時微笑みを絶やさない彼(気絶時、就寝時含む)が真顔になるのはそうそうない。
それは皆、真剣に忠告してくれるとき。
シュウもそれを察しているらしく、跋が悪そうに唸ってから。一息つく。
「インレ、悪かったな。もっと早く助けるべきだった。」
「ううん、ボクが悪かったっス。マスターは全然悪くないっスよ…。それに、助けてくれたの、嬉しかった…ありがとっス。」

インレの顔にやっと笑顔が戻る。それはぎこちない、はにかんだ、不器用なものだった。
それを見たシュウはくすりと笑い彼女の小さな頭を優しくなでる。
「………まだ時間もある。お出かけは久しぶりだったな。」
間の抜けた音の空砲が立て続けに響く空、色鮮やかな風船が転々と舞っている。
きょとんとしたインレの眼はまん丸に見開かれて、頭にはクエスチョンマークが浮遊中。
「好きなもの買ってやる。一つだけだぞ?」

どうやら配線が繋がったらしく、顔に元気が流れだす。
褐色の頬を火照らせて、赤い瞳はまるで宝石のよう。
「は、は、は、早くっ!早く行きましょうっス!」

目の端にコタロウが物欲しそうにベアトリクスの袖をひっぱり困らせていることや、メイド服のヘルメスが無表情にアイザックの襟を掴んで放さなかったりしているが、この際無視する。

この仕事が終わったらゆっくり街を見せてやるか、とシュウははしゃぐインレを見つつ密かに心に決めたのだった。



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久しぶりに書いたなぁ…キャスホリ。
バイトに慣れ、他の事を考えながら仕事が出来るようになってからネタが溜まる溜まる。
それを吐き出してみたりせんとす。

覇道は少し休憩かな
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