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覇道高校、新撰組! ~真昼の星 第八幕~  
2006.08.18.Fri / 03:45 
F1をご存知だろうか?
たまにニュースで映像が流れたりするから一度は目にするだろう。
サーキットを周回するごとにタイヤが目減りするのでそれを交換しにピットインするときの光景を思い描いて欲しい。

飛行機レース参加の各学校控え室は、それと似たり寄ったりの雰囲気である。
天井がやや低く、それでいて広い空間だ。
壁が一辺だけ開放されており、庇の下には我が覇道高校エントリーの飛行機が堂々と鎮座している。
なかなかに壮観なのだが、湿度と熱気を兼ね備えた夏特有の空気が入り込むのが少々辟易だ。
頑張れ控え室内の冷房設備。君が吐き出す冷気だけが希望である。

先ほどピットを想像して欲しいと言ったが、あれから喧騒を取り除けば良い按配かもしれない。
真夏にデパートの屋上で仮面ヒーローのショーをやり終えた一団のようにリラックスムードが漂っているからだ。

開会式に代表として出た僕は流石に疲れ、今はパイプ椅子を引きつれ扇風機の前を領地する。
「八神、お茶だ。この天気だ、暑かったろう。」
暑いという単語とは逆、涼やかに立ち振る舞う女性が小さなお盆にちょこんと乗ったグラスを渡してくれた。
長い艶やかな黒髪を首元で一つに結われた房がふわりと揺れ、石鹸の香りが仄かに香る。
日本刀のように鋭い左目と、ヒビの入った様な亀裂が走る右目を持った御堂・つらら先輩だ。

「ありがとうございます。流石に炎天下、立ってるだけで汗が吹き出ますよ、ホント。」
清涼感溢れるガラスの湯のみに冷えた緑茶が満たされていた。さすが先輩、抜かりがない。
漂流者が念願の陸地に立ち、初めて口にする一杯の水の様に勢いよく飲み干す。
「ふふっ、もう一杯飲むか?」
仕方ない奴だ、と言いたそうな優しげな笑顔で聞いてくるので僕はお礼を言いもう一杯ご馳走になることにした。
音もなく、だが堂々と歩む先輩の背中を見送ったのち、壁にかかったアナログ時計を見つめた。
午後十二時。
あと二時間で開幕だ。


逸る心を抑えつつ、ホワイトボードに目を向ける。
先ほど作戦会議と銘打ち舞鬼会長が何処からか持ってきたものだ。
レースの内容はごく簡単である。
複座の小型飛行機にペアで搭乗。
そしてここ、羽田空港から一斉スタートしゴールは南方の大島までの一直線。純粋な速度がものを言う純レースだ。
だがボードに書かれた作戦が「勝て!!」しか記されてないのは大いに危機感が生まれたとしてもそれは致し方ないことだろう。

でも、下が海というのは付け焼刃の飛行技術しかない僕には緊張が少々和らぐ。天空橋さんを疑う訳ではないが、万が一墜落した場合でも死にはしないもんな。
というか、いくら空路を一時買い占めたから一般人でも飛行して良いとは言え、他の学校はちゃんとライセンスを取得している学生が操縦桿を握るんだろうなぁ、ちょっと無謀だろウチは。

自分がそのレースのメインパイロットという現実に嘆息しつつ、我が相棒となる小型飛行機に目を移す。
そこには最終点検を行っている天空橋さんの姿。
頬に描かれている横一文字の真っ黒いオイルの線を拭いもせずに一心不乱。
飛行機が大好きだが、何かに必要に怯え、飛行機に搭乗出来ない少女。
ライセンスは持っていると聞くので、きっと後天的な何かが問題なのだろう。
…君が乗れなくなったのは何故なんだ?

「おいっ、ミコト!」
肩が外れるのではないかと言うほど強く叩かれた。
振り返れば奴が居た。というか奴しか居ない。
茶色い皮ジャケットに白いスカーフ。炎のような真っ赤なスラックスを着込んだ腐れ幼馴染の鮎である。
実はコイツがメインパイロットこと僕の背中を預けるサブパイロットなんだよなぁ、これが。誰か代わってくれないか?
「んだよ、淡水魚!塩かけて焼くぞ!」
「ワケ解んない事言うな。んなことよりこのカッコ見て言うことないの?」
「…もう着てるの?暑くないか?」
「まったく…。コイツは…。」

言わんとしていることは解る。
似合っているか、似合っていないかと聞かれたらこれがなかなか似合うのだ。
馬子にも衣装と言いたいが、こういう皮肉の類は通じないのが奴。
華麗にスルーするのが吉だ。

「ったく暑いなぁ…」
さっそくスカーフを外し、厚手のジャケットを脱いで、僕の扇風機を遮り冷を取る。
やっぱ暑いだろう。というか近くに寄んな、暑い。あと扇風機返せ。

ワレワレハ、ウチュウジン…カ?などと扇風機の前でビブラートを纏い喋る鮎の頭を叩こうとしていたのは幸か不幸か第三者によって遮られた。
「覇道高校様ですね?整備は終わりましたでしょうか?そろそろ機体をお預かりしたいのですが。」
緑色のつなぎに同じ色のツバ付き帽子を被った二人組みの男が現れる。
胸には大会係員の文字が刻まれたプレートが輝いている。
何しろ百校を超えるほどの大会なので、各自に任せスタート位置に機体を置くとなると多少の衝突が起こる事を予期し、ガレージからスタート地点への移動は全て係員に一任される。恐らく彼らはその役員なのだろう。

「あ、もう終わりますん。もうちょい待っててなー。」
独特のイントネーションの天空橋さんは何度か機体の装甲をレンチで軽く叩いてから良し、と呟く。
「オッケーです。では、この子お願いしますわ。」
「はっ。では失礼します。」
男らは帽子を目深に被り一礼。
一人は前輪に縄を結び始め、もう一人は近くに停車させていた小さな牽引車へと乗り込んだ。
しっかりと繋がったか確かめ、結び役の男は再び一礼し牽引車へと乗り込み、ウチの飛行機を伴い飛行場へと消えていった。

天空橋さんは飛行機が見えなくなるまでずっとその光景を見ていた。
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テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学
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