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覇道高校、新撰組! ~真昼の星 第七幕~  
2006.08.04.Fri / 15:19 
太陽は中天に居座り、夏場並みの日差しを容赦なく地上へ注いでいる。
水色の絵の具を白いカンバスに直にぶちまけたのではないかと思える程の青空には先刻からから空砲が立て続けに撃たれており、ポップコーンが弾けた様な軽薄な音と共に白煙が棚引き、そして溶けていく。

暑い。暑すぎる。
地面へ生卵を割り投下すれば目玉焼きが出来るかも危惧する程の炎天下ということもあるが、群衆の中に居ることも熱量が調子に乗る原因の一つではないのか。
僕は今、羽田空港に居る。
空港と聞いて何を想像しただろうか?
クーラーの効いたロビーや絶景が望める展望レストランなどだろうか。残念ながらそんな快適な場所ではない。
では何処だと聞かれれば「滑走路脇のちょっとした広場だよ」としか言いようがなかったりするわけだ。
当然関係者以外の立ち入りなどもっての他な場所であろうが、今は残念ながら関係者なので誰にも咎められはしない。

白学ランや空色のブレザー、黒のワイシャツに赤のネクタイなど、まさに多種多様の制服に身を包んだ生徒らの列の一角を形成している僕は、吐きたくもなるため息をし、やや上へと視線を移していく。
恐らく眼前の光景を描写すれば、今置かれている状況を明瞭簡素に皆さんに解って貰えることだろう。
まずシーツで出来ていたとしたら大病院のベッドを全部剥がす必要がある巨大な横断幕が架かっている。
想像できただろうか?そこにはこう書いてある。思い描いて欲しい。
『第2回メイプルズカップ』とでっかく墨字で染め抜かれている様子を。
そう、今まさに飛行機レース大会の式中であり、会場が貸切の羽田というわけだ。
僕には金持ちが考えることは今後もきっと解らないのだろうな。

庶民の家に生まれたことを再認識しつつ、端から端まで見るのが一苦労な幕からゆっくりと視線を下げると、櫓が組まれているのが見える。
その頂には闇に緑を少量垂らした色のブレザーを纏った女性。生徒会屋敷でSPを連れていた五光院とかいう令嬢だ。今は主催者として壇上へ上っている。
彼女は何本も束ねられた、ちょっとした花束状態の脚付きマイクに向かい高らかに宣言する。
「――今此処に、メイプルズカップ開催を誓います!」
ハウリングと共に怜悧を体現したらこんな感じなのだろうと思える声が響き、そして日差しに溶け亘った。

一瞬、無音がこの世に生を受けたが、後に生まれた轟きにより存在を絶たれる。
皆は味わったことがあるだろうか?周囲のテンションが上がるにつれ、自分の覇気が下がるという反比例の法則だ。
僕が今置かれた状態が今まさにそれ。
また気温が二三度は上昇したのではないだろうかという錯覚を覚えつつ、意識がゆっくりとブラックアウトしていった。


    ■     ■     ■


「ほらっ、ヤガミン!ベルト閉めたっ?飛んでいいっ?」
「ちょっと待ってくださいよ!」
インカム付きの飛行帽から檄が飛んできた。
僕は『覇道舞鬼』と側面にポップ調にペイントされた小型飛行機の副座に深く腰を下ろし固定。側面から二本のベルトを引き抜き、胸でクロスさせてから点対称側へと差し込んだ。
前方の座席にはツインテール用の穴が開いた恐らく特注であろう、ファーが付いた飛行帽を被る舞鬼会長が小さな体を精一杯曲げて振り向き、アヒルの嘴の様に尖らせた口を見せ付けてくる。
「もう、早くしないと大会始まっちゃうぞっ!」
まだ一週間あります。
というより舞鬼会長、何故一週間後の開催の大会の招待状を今日持ってきたんでしょうか、あの令嬢は。いくらなんでも急過ぎやしませんか?
「うーん…、それも挑発のウチだろうね、きっと。覇道の名を冠したならば一週間で飛行機ぐらいつくれるでしょう?って感じかなー。」
なるほど。
「ウチの会社の航空機部門に依頼すれば小型なんて二三時間もあれば鉄鉱石からでも造れるよ。だけどさ――」
舞鬼会長は視線を逸らし、飛行機同好会の部室へと顔を向けた。
大きく開放されたシャッターから内部が見える。天空橋さんは骨組みの機体をせかせかといじっていて、それを手伝っているのだろう鮎と剣信。左蔵は機体の傍に立ち、一言二言、天空橋さんに何かをアドバイスをしている風だ。
つらら先輩も最初は手伝っていたが、次第にクエスチョンマークが飽和状態となり、今は前線を離れお茶を煎れている。
「高所恐怖症なのに飛行機を作っては飛ばし、作っては飛ばしする。怖くても思わずしちゃうくらい飛行機が好きな子が大事に大事に作った飛行機にはきっと敵わないよ。」
子猫のように破顔して笑う。暫くして止み、低いトーンで「最初はね、」と繋ぐ。
「あの子が参加しないならそれはそれで良いと思ってた。」
きっと決めあぐねていたのだろう。大会手続きはしてなかった様子だが、機体の準備はしていた。
部室にポスターを貼っていたし、興味が無いわけではないだろう事は容易に想像がつく。
「…あの子に足りないのはあと一歩を踏み出す勇気なんだよ。」
「天空橋さんから書類を提出されるのを待っていたけど、我慢できなくなり焚きつけた、と?」
「最後の一歩ってさ、大きそうに見えるけど、やっぱりただの一歩なんだよ。…とかなんとか偉そうなこと言ってるけど、あたしのあの子を応援する踏ん切りは五光院ちゃんから挑戦が決め手なんだけどね。」

会長はそのまま天を仰ぐ。二つに結われた栗色の髪が軽やかに揺れた。
部室前の拓けた山の空間。木の葉の囁きが風に乗り聞こえる。
「ねぇ、ヤガミン。あたしこれで良かったのかなぁ…。」
空に問いかけるような、軽い呟き。独り言かと思われるが僕の名前が呼ばれているので答えるべきだろう。
そりゃ、舞鬼会長のやり方はちょっと強引だったかもしれない。けれど間違ったことかと言われれば、僕は首を横に振る。
「天空橋さんは少なくとも悲観してたり迷惑だったりはしてないと思いますよ。」
再び部室を見れば、天空橋さんは忙しそうだが、その表情には陰りが無い。迷いは断ち切られ、今は飛行機作りだけに専念している。
案ずるより産むが易し、と言ったところだろうか。後悔なんてものがあるとすれば、それは名前の通り後にすべきものだ。今は我武者羅に頑張れば良いのさ。

舞鬼会長は顔をやや伏せており、その表情は読み取れない。
僅かに口が動いたようだが、インカムからは何も聞こえてこない。故障か?
そのままエンジンの空蒸かしの音だけが腹に響く。
「よしっ!」
再びインカムから弾む様な声が聞こえてきた。言わずもがな、舞鬼会長から発せられるものだ。
聞こえたことに内心安堵したが、直ぐに聞こえなかったほうが良かったと思い直す羽目になったさ。
「操縦の基本その1!――まずは慣れろっ!」
教習所が真っ青になる程の飛行基礎技術を一週間で叩き込む地獄のフルコースの実質な幕開け宣言だった。

抗議を言い放つ前にプロペラが爆発したかのような唸りを上げて高速回転し、急加速。
後ろに仰け反るほどの重力を一身に受け、慣性の法則はやはり正しいと身をもって再認識する。
次には揚力だ。うろ覚えの理系の数式が頭にちらつく。
即座に諸手を挙げつつ、嘆息。
公式を思い出せなかった事にじゃない。暫く地上の人にはなれないだろうという予想に対してだ。
それが的中したのは態々言う必要は無いだろう。


    ■     ■     ■


「――上、開会式を終了致します!」
あまりの熱気に頭をやられたらしい。軽い走馬灯を見てしまったぞ。
アナウンスで誤謬を吹聴する理由が無いので、開会式は終了したのだろう。
小波のようなざわめきと共に、徐々に人並みが引きつつあるので確かだ。
人の流れは大晦日初詣に向かう人々のごとく一定であり、その方角には臨時で建設された簡易ガレージ群が見える。
参加校が全国から百校は軽く超える数であり、一校ずつに一つの専用ドックがあるので、アスファルトに連なる建物は宛ら近代都市の様だ。
おっと、客観している場合じゃなかった。こうしちゃいられない。
僕はまだ鈍痛が残る頭を被り振り意識蘇生を試みてから、覇道高校に宛がわれた控えガレージへと足早に向かった。





△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

【あとがき】
いろいろ矛盾が生まれてくる頃合です(ひ
ひょっとしたら場面場面に小出しにするべきではなく、短編なら短編を書き終え、編集に編集を重ねてからぶつ切りにしてから、投稿する方が話的にももう少し面白くなるのではないか、と、ひょっとしないことを考えていたりします。










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テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学
COMMENT TO THIS ENTRY
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バレましたかww
表紙がみくるのアップの本まで読みました。
題名は忘れました(ひ

辞書で引いたような小難しい単語を連発することもやろうと思えば出来ますが、読みやすさを重視してみました。
僕は気取った小説が書きたいのではなく、気軽に楽しんでもらえる小説が書ければそれで良いです。

もしそう思って頂けたなら嬉しいですさ。


理想だけど、もしそうなると僕だったら二三ヶ月は更新の感覚が空きますねww

- from 雪都 -

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遅れながら読ませていただきました
旦那ハルヒ読みましたね!
影響が見られますよ
とても比喩が面白いし読みやすいです


小説は全部書いてからぶつぎりにして編集してだす
理想です
私もそんなこと考えてたけど出来そうにありません…
根性がほしい…

- from らら -

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