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覇道高校、新撰組! ~真昼の星 第六幕~  
2006.07.23.Sun / 05:11 
生徒会屋敷は大雑把に言えばロの字型をしている。
伝統的な和風建築であり、高さは無くその分広い。寺のように伽藍造りの棟が中庭を囲んでいる形だ。
僕らは西側の縁側に座し、中学の頃訪れた京都の庭園を思わせる中庭を見つめながら、熱い日本茶と和菓子をお供にして会議とも呼べる雑談を交わしていた。
「というわけで、飛行機同好会のお手伝いをしようと思います。」
先ほどのあらましを包み隠さずつらら先輩に話した。天空橋さんの事、同好会の人手不足、そして飛行機大会に出たいという夢…。
つらら先輩は思案顔で湯気が仄かに昇る桜があしらわれた湯飲みに薄い唇を付けた。
喉を小さく鳴らし、床に湯飲みを置く。乾いた音が立つ。
そのまま、彼女の濡れた日本刀のように鋭く輝く相貌が僕に向けられた。
「助けは同情では決して出来ん。生半可な気持ちならば相手に失礼千万だ。助太刀するなら腹を切る覚悟で死力を尽くせ。それが新撰組であり、人の道だ。」
「もちろん解っていますよ。」
「ふふっ、お前の目を見れば解ったが、一応、な。」
つらら先輩はいたずら好きの子供がまんまとミッションコンプしたみたいな得意げが混じった顔で笑う。一見、真面目街道驀進中で冗談など一笑に臥しそうなイメージがあるがとんでもない、案外お茶目な人なのだ。最近になって解ったんだけどね。
「私は賛成だ。あとは覇道の許可一つだが、少々難しいかもしれん。」
なにやら、先ほど舞鬼会長と来客にお茶を出したとき、「話たいことがあるからヤガミンと一緒に待ってて」といつになく真剣な表情をされたらしい。仕事かもしれないが私がなんとか説得してやろう、とつらら先輩は胸を張る。
タイミングが悪かったな、と一瞬思ったが、横で湯飲みを両手で硬く握り締めて、今にもやっぱウチのことはいいです、と言い出しそうな天空橋さんを見たらそんな気持ちは吹っ飛んだ。仕事の場合つらら先輩には負担をかけるが後で倍にして埋め合わせよう、とそんな皮算用をしていたときだった。


「あなた、邪魔ですわよ」
何やら深く考え込んでいたらしい。気配にまったく気づかなかった。
背後から聞こえたのはテレビでしか耳にしないようなお嬢様言葉。
その言葉は自信を込めに込めて飽和限界ギリギリのようなトーンで少々低くどこか艶かしい。
こんな声は鮎なんかには出来ないだろうし、天空橋さんがやるとは思えない。つらら先輩はもっての外だ。
「失礼した。」
いつの間にか立っていたつらら先輩が僕の湯飲みと半分食べた和菓子の皿を持っていた。
そうか、廊下側に置き過ぎたか。にしても廊下の幅は随分とあるから避けるなり跨ぐなりすればお釣りがお札で来そうなもんなんだけど。
無声映画のように声は出さずに喉だけ鳴らし笑う鮎と、困惑顔の剣信を見てから振り返る。左蔵が居ないがどうせ昆虫でも採取しているのだろう。そんな趣味があるのか知らないけど。
振り返った先にはやや長身で皮肉げに釣り上がった目をした女性が居て、こちらを見下ろしている最中だった。
鮮やかな金色をした髪は後ろにまっすぐ長く伸ばされていて、制服は覇道高校のものではない。夜の森みたいな深緑色をしたブレザーだ。
その後ろには黒いスーツを着た居様にがっちりしている体躯の男二人が居る。ちょっと、懐に手を入れて何しているんですか。
「あ、すいません。」
反射的に謝ると彼女は小ばかにした感じで鼻を一度鳴らし、ガードマンらしき男らを引き連れ優雅に去っていった。

鏡でもあればさぞかし間抜けな顔をしているだろうと思いつつ、三人が玄関へと消えていくのを見ていたら、
「うわっとと、もうなんか言われたみたいだねー」
またも背後から声がかかる。だが今度は聞き覚えのある声だ。
栗色の髪を両サイドに大きく束ねた、下手したら小学生に見えるんじゃないかという高校三年生であり、生徒会長の覇道・舞鬼その人だった。
「その点もいっしょにさ、ちょっち話すことあるから道場の方に行こうっ。キミは……うん、キミも一緒に来て。」
キョドっている飛行ジャケットを羽織った天空橋さんをにんまりと見つめる舞鬼会長。
思えばこのときから運命の歯車は音速で回り始めたのかもしれない。




「第一万飛んで二百三十一回、生徒会会議ー!」
どこから出したのか舞鬼は両手にクラッカーを一つずつ持ち、器用に時間差で発砲した。
場所は生徒会屋敷の道場。一面イグサの薫り高い畳張りで、中心に舞鬼先輩、そして囲むように座布団を車座に敷いている。
いつの間にか隣に座っている左蔵と「そんなやってるんか」と驚いていた天空橋さんに「前回は第三回だったけどね」と言っている鮎、クラッカーから排出されたごみをつらら先輩と剣信が回収する中、会議らしきものが始まった。大丈夫なのかこれ。

舞鬼会長は両腕を振り上げ、足元の座布団へダイブする素振りを見せてゆっくりと座った。
そしてこう告げる。
「えー、新撰組にお仕事が出来ました。」
「待ってくれ、覇道。」
すかさずクラッカーの残骸をポケットに詰め込みながらつらら先輩が介入した。
「八神は既に先ほど別件の仕事が出来た。私が二人分頑張るゆえ――」
そこで声は途切れた。それは解らなくもない。軽い足取りでつらら先輩に近づいた舞鬼先輩に口を塞がれたからだ。
「チッチッチ、わかってるからちょっち落ち着いてっ」
もう片方の手で一本だけ立てた人差し指をメトロノームの様に揺らす。
「ぷはっ……どういうことだ?」
よほど強い力で抑えつけられていたのか、つらら先輩は両手で引っぺがしてから半眼で訊いた。
その視線を知ってか知らずか舞鬼先輩は再び元の車座の中心の位置に戻る。
(八神…何がしたかったんだ覇道嬢は)
(しるかっ!)
会長はそのまま思わせぶりに咳を一度。乾いた咳で威厳などは欠片もなったがこう続ける。
「わが学校の飛行機同好会が飛行機大会にでれるように手伝って欲しい。依頼者は――あたし!」

遠くの喧騒が聞こえる。たぶん近くの剣道場からの声だ。そのくらいの静けさが支配する。
「わが…」
「復唱するな!一回言えば解るっ!先ずは理由だ!」
つらら先輩が頭痛に悩まされている様なというか実際に痛そうに頭を抱える。
先輩、会長を制御できるのはあなただけです。
「理由は挑戦状を送られたからっ。」
舞鬼会長はそう高らかに言って小動物のように体を弄り、二三度胸ポケットを軽く叩く。そしてスカートのポケットから一通の真っ白い封筒を出した。にしてもそっちかよ。
熨斗が無い熨斗袋の様にシンプルな封筒の宛名には大きく墨で『招待状』と書いてある。
「それ、招待状って…」
鮎が怪訝な顔で指で指すが舞鬼会長は華麗にスルー。
そのまま封筒を逆さにし、何度か上下に揺すると幾重に折りたたまれた白い紙が出てくる。
艶がある紙を開くと、青空を背景に一機の小型飛行機がプリントアウトされていて、ゴシックフォントがこう踊る。
『第2回メイプルズカップ開催』
それは飛行機同好会の部室で見たポスターと同じデザインのチラシだった。

天空橋さんはまん丸な瞳をこれでもかとさらに丸くし、鯉のように口をだらしなく開けていた。
舞鬼会長は彼女をにまにまと見つめてから、
「さっきね、喧嘩売られちゃったっ」
悪びれなく0点のテストを母親に見せる小学生のように清清しく言ってきた。
「さっき、ってあのキツめの女の子?」
廊下で睨まれた高飛車な雰囲気の女の子を思い出す。
「そだよっ。あの子から。五光院・楓(ゴコウイン・カエデ)ちゃんって言うんだけどね」
「五光院…まさか!?」
つらら先輩と天空橋さんが二人そろえて喫驚する。
「そのまさかー。五光院グループのご令嬢で、五光院女学園の生徒会長であり、飛行機大会の主催者、のね。」
なるほど、あのお嬢様気質は天然のものだったのか。にしても郵送ではなく直々に手渡してくるとはなかなか好戦的だことだ。
少し気が立っていたのと、舞鬼会長が喧嘩売られた、という事から友好試合というわけではなさそうだ。
名前が楓だからメイプルズ、か。楓の、とはよく言ったものだ。

「キミは飛行機同好会の子だよね。知ってるよっ。大会に出たいってのも知ってるよっ。活動内容書みたからね。」
うわ、絶対企んでる顔だ。
「つーちゃん、ヤガミンの仕事ってこのことでしょ?」
「む、確かにそうだが。」
「部長さんは大会に出れる、それに楓ちゃんをギャフンと言わせて私の気が晴れる、一石二鳥っ!」
勝つことは決定なのが会長らしい。あと、ギャフンは古いです。
「いいのっ!じゃあ、満場一致で決定です。」
まだ採決もしないウチに決定事項となったらしい。まぁ、反対意見はないけどさ。
舞鬼会長はレフ板のように輝いた笑顔を振りまき、

「新撰組は飛行機同好会を応援します!」

そんな会長とは対照的に未だ状況が把握できていない天空橋さんは死んだハムスターのようになっていた。
にしても、不思議と懸念がまったくないのは何故だろう。
道場を抜ける夕風を浴びつつ、そう思った。







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【あとがき】

いつの間にか主観になってるのはハルヒを読んでいるからです(ひ
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