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覇道高校、新撰組! ~真昼の星 第一幕~ 
2006.07.03.Mon / 04:13 
相変わらず底が抜けたような蒼さの空の下、一人の男と一人の女が歩いていた。
歩く大地は道なき道。一面のまぶしい位の新緑の丘だ。
視界一杯には水色と薄緑色だけの光景が広がる。

男は歳が十代後半だろうか、ボブカットを少し短くした髪型。
中性的な顔立ちで学生服を着込んでいる――八神・命(ヤガミ・ミコト)だ。
八神はおもむろに立ち止まり、高い空をぐるりと仰ぐ。
首を精一杯起こし真上を見つめている。
そのまま腕を肩の高さで水平に伸ばし、ゆっくりと後方へ反れて――とすんと音を立て倒れた。

「あっ。」
それに気付いた女性が声を上げ小走りに八神に駆け寄った。
肩辺りで切りそろえられた髪は太陽の光を浴び濃い紫色を反射する。
前髪だけは長く伸ばされ両目が隠れていた。
八神よりも背が高いが、挙動などが弱弱しく感じられ、どこか小動物を髣髴とさせる。
制服の胸の部分に付いた校章とタイの色から八神と同じクラスであることが伺えた。

「大丈夫?」
その女性、ナコト=ミコテン=ルルイエがスカートの裾を軽く押さえつつ、倒れた八神を上から覗き込む。
「駄目かも…。こんな天気が良いんだ。寝転びたくて仕方ないー。」
八神は四肢を突っ張り、大の字になり草原へ身を預ける。

二人は覇道学園の敷地内にある大学病院からの帰りである。
あまりにも広大な敷地ゆえ電車やバスが通っているのだが、稀に見る快晴なので散歩がてら最短コースから外れ、丘へ寄り道に来たのだ。
何故病院へ行ったのかというと…先週の『本』を巡る騒動(犯人はナコトなのだが)、それに巻き込まれた被害者、黒魔術部の女の子の見舞いだった。
多少衰弱はしていたが、記憶障害も無く、すぐに退院出来るとの事だった。
彼女に総て、洗いざらいの事の顛末を告げたところ、
「わ、わたし魔法を使ってたんですか!?はうー、夢だったんです!!もっと詳しく教えてください!」
謝罪なんていりませんから詳しく、とにかく詳しく、と詰め寄られ見舞いに行く度話している気がする。
ナコトも低姿勢でぺこぺこ謝っていたが、どうも魔術部の子は点で責める気は皆目無く、むしろ友達になってください!と詰め寄られていた。

(大らかな子で良かったな…)
と八神は思いつつ、草原に吹く風を肌に感じる。
ナコトも八神の横に恐る恐る腰を下ろし、足を抱えて体育座りの格好で空を眺めている。
周囲360度から草ずれの音が波のように寄せては引き、また寄せて来る。
八神は視界を埋める青空を見つつ、空から海を見下ろしている様な錯覚に陥る。
目を瞑れば春の優しい息吹が肌を撫でる。
「もう溶けちゃいそうだな…。」
「だめ。とけちゃ。だめ。」
「もう駄目だー溶けるー。」
「あー。あー。」
真顔で慌てるナコトを見つつ、少しからかい過ぎたかなと思い、腹筋だけで上体を起こす。
大丈夫だよ、と言おうと口を開きかけたときだ。
耳元で羽虫が飛ぶような音が聞こえたので、八神は手で払った。
「ん?」
ぷーん、という甲高い音は定期的に聞こえている。
音は一向に遠のく事はなく、むしろ近づいてきているように聞こえる。
「虫じゃないのか…」
「ヤガミ。あれ。」
ナコトは空を見つめたまま、空の一点を指差している。

八神は指された方向に顔を向ける。
青色のキャンバスの中、一つの黒点が浮かんでいるのが目視できた。
「UFOじゃないよね。」
「ん。わからない。」
どうやらその黒点から音が来るらしい。
黒点は時が経つごとに徐々に大きくなり形が顕になってくる。
それは一見鳥のように見えたが、確実に何かが解った時には納得よりも驚愕が先に来た。
プロペラが先端に付いたセスナほどの大きさのクラシックタイプの飛行機だった。
翼は上下二段。ガラスの風防の向こうには操縦士が乗っており、手を上げぶんぶんと振っている。
それはもちろん挨拶ではなく、恐らく万国共通、逃げろという仕草で――
「って、なんでこっちに来るんだよ!!逃げるぞナコトー!!」
「うん。」
八神はがばりと立ち上がりそのままノーモーションで脱兎のごとく駆け出す。
背後にナコトがついてくる気配を察知し安堵する。

飛行機はというと、プロペラ音は爆音に近く、すぐ後ろに居ても可笑しくはない。
いつの日だったか、巨大な石が転がり迫ってくる映画を観つつ感じた思いを今行動に!
(こんな時は直角に逃げるんだっ!)
八神は一度振り返り飛行機の位置を確かめ、飛んでくると思われる直線上から直角の方向へ向かい、
「伏せろっ!!」
耳を覆いたくなる程のモーター音に阻まれ、聞こえないかもしれないが、出せる限りの精一杯の声で叫ぶ。
八神は着地のショックなど念頭にも入れずに草むらへ飛び込んだあと、後方を首だけ曲げるとこで確認する。
自分のすぐ近くの位置にうつ伏せに伏せるナコトの姿が見えた。
ほっと一息ついてから飛行機を探すと、すぐ見つけることが出来た。
なぜならプロペラが轟々と唸っている機首が視界をいっぱいに埋め尽くしていたから。
確かに直角へ避けたはずなのに、だ。

八神は顔だけ上げ、操縦席に座っているパイロット――両手の手のひらを合わせぺこぺこと泣きそうな顔で頭を下げている――に怨みの視線をぶつけ、ぱたりと力なく地面に頬を付ける。
「飛行機に轢かれて死ぬとか…やだなぁ…」
人間死期迫ると自然に手を組み神に祈るのかと自覚し、固く目を瞑った。


        ■        ■        ■


放課後の食堂は中々に込むものだ。
飢えにより餓鬼と化した生徒の喧騒の中、深山・左蔵(ミヤマ・サクラ)は思った。
授業は既に午前で終了している。
シルバーを基調にしたシンプルな腕時計は午後三時を示している。
午後三時。古風に言えば八つ時。すなわち――おやつの時間。

「甘味を前にすると女の戦闘力が上がるのではないか、と思うのだが。橘よ。」
「…そうだな。」

覇道学園は全体的に祭り気質の風潮がある。
行事には死力を尽くすのが覇道スピリッツというらしいが、今もまたその覇道スピリッツが迸る時間らしい。
大食堂――っと言ってもそこら辺のレストランよりは数段上等なレベルである――では毎日三時に戦争が起こるのだ。
レジを兼ねたカウンターは生徒らが発する熱気で歪んで見えた。
その修羅のオーラ漂わせる生徒らは、主に女生徒で構成されている。
左蔵はそれを見つつ、視点を上へと移動させると垂れ幕が見えた。
それにはこう書いてあった。

『デザート半額タイム ~君、糖尿になることなかれ~』

再び視線を下げ、女子の坩堝へと戻る。
「お、川原が一人の婦女子を屠ったな。腰が入った良い蹴りだ。」
「えっ…。」
左蔵の横に立つのは高身長で体躯がしっかりとした橘・剣信(タチバナ・ケンシン)だ。
あまり変化が見れない表情だが、親しい左蔵には一気に顔色が悪くなったのが解った。
「ははは、冗談だ。」
剣信はほっと安堵の表情を浮かべる。
「いやなに、往く手阻むライバルのストマックに拳を叩き込んで昏倒させただけだ。」
再び剣信の表情から血の気が失せる。
「…俺らには無理だな。」
「同じく。我輩もそう思う。」
二人は示し合わせたように片手に握られた紙切れを見つめる。
『生徒会用特別食券』


        ■        ■        ■


『本』騒動の翌日。屋上の一角。
多くの生徒らの中で花壇付近に固まるグループがあった。
シートの上に広げる弁当は空。昼食を終え、残りの時間をゆったりと消化している、八神、鮎、左蔵、剣信の四人だった。
特にいつもと変わらない、取り留めない時間。ふとした会話と会話の間の沈黙に八神がすっと立ち上がった。
「昨日は、ホントありがとう。みんなが居てくれなかったら、きっと…いや、絶対解決は出来なかった。」
「ど、どーしちゃったの?ミコト?」
鮎は八神を見てから、左蔵と橘に、そしてまた八神、と落ち着きなく交互に見つめる。
左蔵はそれに対し肩を竦め、剣信は首を横に振り答える。

八神はようやく頭を上げてから、三人を見つめる。真剣な目で。
「折り入って頼みがある。聞いてくれないか?」
鮎と左蔵、剣信の三人も表情を引き締め一度頷く。
ありがとう、と八神は言い、
「頼みは…これからも手伝ってくれると嬉しい、という事。みんな部活があり忙しいのは解ってる。我侭だとも解ってる。でも、これから昨日の様な事が起こらないとは言えなくて…。悲しいけど僕は非力だ。力がない。勿論全力で頑張るけど…困ったときはまた力を貸して欲しいんだ。頼む。」
八神は深く頭を下げてから、また上げ、そしてポケットから紙切れを数枚出した。
「これは生徒会や生徒会補佐の新撰組の手伝いをすると貰える特別な券で、一日だけ学食がフリーパスになるんだ。あ、内緒なんだけどね…。で、この券が御礼として支給されるし、どうかな?」
「ボクはダンコ手伝うよ!!フリーパスと聞いて引き受けないヤツがいるかぁ!!」
「…俺も手伝おう。」
鮎は満面な笑顔で快諾して、息巻いている。
剣信も穏やかな表情で八神を見つめて引き受けた。
左蔵は…
「八神、我輩は断る。」
左蔵は弁当を片付け、立ち上がった。うんざりとした顔で、だ。

「ちょっと…サクラ!」
鮎が屋上に響き渡らんばかりの抗議の声を上げる。
「待ちなよ!ミコトが困ってるんだよ!それを見捨てるの!?」
屋上に静寂が訪れる。無音に耳を傷めたのか左蔵が顔を顰める。
「…我輩は生徒会には興味がない。では、失礼する。」
「そっか…左蔵は忙しいよな…ごめんな、無理言って…。」
八神は苦笑いをし、悪かった、と頭を下げる。
左蔵は何も言わずに踵を返し、階段と歩みを進め―――ふと立ち止まる。
「食券などで釣らなくとも、我輩は問答無用で手伝おう。たとえ断られようとも、手伝おう。」

「……ありがとう。」
再び左蔵はくるりと振り向き、八神が頭を下げたのを見、
「礼は要らぬ。水臭い。」
眼鏡の奥にある鋭い両目が細められる。
ふと剣信を見ると無表情の中にやさしさを湛えている。
(橘の事だ。最初から解っていたのだろうな。)

そして川原へと向き直ると、
「…じゃ、左蔵の食券ちょうだいね。いらないみたいだし。」
八神に対して交渉の最中だった
「川原!折角我輩が『友情は見返りを求めず』という名言、いや、名場面を見せてやったというのに貴様という輩は!」
「うっさいバーカ!ボクだってこのメンバーの為なら無償で手伝うよ!でもどうせ貰えるなら貰ったほうが良いじゃん!?」
「そういう問題ではないのだ!」
「どういう問題だよ!?浸透圧なの!?」
「先ほどの授業で仕入れた知識をさり気無くひけらかすな!」
 
周囲には次第に雑談が再開された。
八神は「また2-Dか」とか「またあいつ等か」など声が聞こえたが不思議と恥ずかしくなかった。


        ■        ■        ■


左蔵は眼前に広がるエクレアの山とその山を恋する乙女の表情で削岩にかかる鮎を見つつ、コーヒーカップを口に運ぶ。
大学食の食事スペース。
中世ヨーロッパの城を思わせる内装で、天井は高く、壁一面に微細かつ精密精巧な絵が描かれている。
シャンデリアと白いシーツが引かれた遥か遠くまで伸びる長大なテーブルに鮎、左蔵、剣信は着いていた。
「八神がもうそろそろ帰る頃だな。」
左蔵はボーンチャイナの様な光沢を持った白磁のカップを置く。
「…そう…だな。」
剣信は氷が詰められ結露が起こっているコーラのグラスを見つめている。
口元を手で覆っていて、視点をずらそうともせずにただただコーラの泡を見つめている。
恐らく――
彼の正面、無言でスイーツを頬張っている鮎を見たくないのだろう。
見ただけで口の中が甘くなり胸焼けを起こすからだ。

左蔵は鮎を一瞥。
「まったく、そんな小さい体の何処へ入るのかね。」
鮎はぴくりと止まるがそのままエクレアの攻略に取り掛かる。
「僅かでも良い。背丈や胸囲、臀部、加え脳内に、とりわけ脳内に栄養が行渡らん事を。」
がたんと立ち上がった鮎は顔に青筋を浮かべ、優雅にコーヒーを嗜む左蔵に指を指し、
「むががーががうーがー!」
「…左蔵様最高、かね。そんな事は言わなくとも通じているよ。はっはっは。」
「うががー!うがうー!…もがっ!?」
口にハムスター如くエクレアを詰め込み、頬をぱんぱんに膨らませた鮎の顔色が赤くなる。
「おや?」
なにやら鮎がきょろきょろとテーブルを見回し、一点に止まる。
それは空になったアイスレモンティーの切り子グラスだった。
「うー!うー!」
「当たりかね?」
「う?」
「いやなに、多少エンターテイメント性が欲しいと思ってだね。そのエクレアの中に一つ、練りワサビを丸々一本入れたものがね――」
そう言いつつ、テーブルに置かれた三枝のキャンドル台の元から下ろし金と生ワサビの頭の部分が取り出される。
「安心したまえ。この時のための産地直送だ。チューブではないからな。はっはっは。」
「うーーーー!!!」
「待ちたまえ!そのエクレアは投擲用ではない!中からカスタードと生クリームが出るではないかね!」
「うーーーーーーー!!!!!」

剣信は未だ口元を手で覆い、氷が溶けきったグラスを凝視していた。
「命…早く…帰ってきてくれ…」
小さな声はすぐ横で騒いでいる二人によってかき消された。









△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

【あとがき】

雪都「舌の根乾かぬうちに始まりました新しい章が。」
つらら「まぁ、深くは問わんが…」
雪「いえ、これが僕の処女作ですからね。」
つ「ほう」
雪「それゆえ思い入れも強く、共に歩んで生きたいと思う所存。」
つ「くっ…お前と云う奴はっ…!」
雪(新作も考えてたんだけど、もう少し煮詰めたいからとりあえず話を決めてた覇道の続きを書いた、なんて言えないしな)
つ「…なんだと?」
雪「ナニモイッテマセンヨ?」
つ「御堂流読心術を甘く見るな!成敗!」
雪「ちょwwwwwwwなにそれwwwwwwwつかやめてwwwwwwww」
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
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