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覇道高校、新撰組! 第十九幕  
2006.06.27.Tue / 01:22 
「なん…で…?」
鮎はふらふらとした足取り近づく。
糸の切れた操り人形の様に八神は動かない。
「何で死んじゃったんだよ!」
「だっから、誰かが犠牲になんないと助かんなかったんだろ!」
「じゃあボクが!…あれ?」
八神は上半身だけ起こし、右腕を擦っている。
顔には苦悶の表情が張り付いていた。
大きく深呼吸し、再び八神は続ける。
「鮎には任せらんないってーの。本当は、一か八かだったしさ。」
疲労が残っているのか、八神は一旦立ち上がり、がくりと膝を折り中腰になる。
そのまま崩れそうだった所を鮎の後方から剣信が飛び出し肩を貸し支えた。
「あ…りがと、剣信。」
「…気にするな。」
体に寄り添うように体重を預ける八神。
剣信はほっとした顔で優しい声を出す。言葉は少ないが思いやりが十分伝わる。そんな声。

「……まさかアイツとやりあって勝つとはね。感服だよ、ミコト。」
ハスターは少女をお姫様抱っこで抱え、ふわりと空中に浮いていた。
「それ…なんて書いてあるんだい?」
両手が塞がっているので首を回し、何かを指すような仕草。
鮎は何の事か解らなかったが、八神がそれに反応した事で、問われたのが彼だと解る。
八神は剣信に頼み、ゆるりとその場を半反転。背中には青白い文字でこう書かれている。

《ライフ あと1機》

「これは…っとさっきので一個減ったけど『あと一回死ねるよ』って意味が書いてあるんだ。ハスターが言ってたろ?黒い雪は一つイノチを持っていくまでは帰らないって。だから―――」
何やら八神がハスターに向かい説明しているが鮎はまったく耳に入らない。ただ唖然とするだけだ。
「太古、文字は50ほどしか無くてね。それゆえにバルザイはあまり力が無かった。でも、今は違うようだね。君らとバルザイが組めば、それこそなんでも出来そうだ。さっきは馬鹿にして悪かったね、バルザイ。」
ハスターは少女を抱えたまま器用に肩を竦める。
八神が下げている肉厚の黒刀の表面に紅の光がじわりと宿り、そして消えた。
「ハスター、その女の子は…」
「あぁ、生きてるよ。君が助けたんだ。」
「良かった…。後やることは…」
八神はありがとう、と支えていてくれた剣信に告げ、飛び込み台の端に落ちていた『本』、セス・ビショップ抜書をゆっくりと持ち上げ――思い切り表紙を叩いた。
鞭を打ったような乾いた音が鳴り響く。
鮎は何をしたのか解らずにとにしてるの?と言おうと口を開きかけたが、それは阻まれる事となる。
『…痛いです。』

「え?だれ?剣信?」
きょろきょろと鮎は顔を巡らせ、剣信へと問いかける。
だが剣信は被りを振る。
女性の声で違うと解ってはいたが聞いてみたのだ。、ハスターでもは無く、黒魔術部の少女は未だ気絶しているので違う。
当然自分は声を出していなかったし、八神が叩いておきながら痛い、と言うのは変だ。それとも叩いた手が痛いのだろうか。
「こいつが言ったんだ。『本』を持ち出した犯人であり、全ての元凶。」
八神が大型の『本』を片手で持ち上げ、ゆさゆさと振る。
『頭。クラクラです。やめて…。』

耳を澄ませば確かに『本』から声は聞こえていた。
八神はばしばしと表紙を叩き続ける。
「鮎、知ってたよな?あの雪が水に弱いって。」
「う、うん。言われるまでは忘れてたけど、本で読んだよ。でも、なんで?」
「有名なオカルトの本に載っている事を黒魔術部の子が知らないなんて変じゃないか?それに知ってたら使わないよな。こんな水がある場所で。」
「たまたま読んでなかった…とかじゃないの?」
鮎の疑問に八神は首を振り否定を表す。
「たとえ読んでなかったとしても…彼女は笑ったんだ、喚び出した後にね。これから何が起こるか解って居る、そんな風に。」
八神は本を脇に抱え、そのまま続ける。
「黒い雪を知っていたのにリスクを知らないはずが無い。」
「じゃあ…」
「笑えるのはリスクを受けても平気な奴…この『本』だ。大方、あの女の子を操っていたんだろう。」

八神がしゃべり終ると静寂が訪れる。
風にみなもが揺れる音だけが聞こえる。
『ごめん…なさい。ごめん…なさい。』
八神が抱える『本』から女性のすすり泣く声がする。
「ごめん、って人を殺そうとしといてそれだけ!?」
鮎がたまらず声を張り上げた。
親友がぐったりと倒れていたのがまだ目に焼きついている。
結果、永らえたが一つ間違っていれば八神は死んでいただろう。
思わず歩きよっていたのを剣信に掴まれた。
八神も頭を振り、鮎を静止する。
『ごめん…なさい…。ごめんなさい。』
広い広い水面を駆け巡る夜風に乗って、何度も何度も悲痛な言葉が溶ける。
息を呑むほど美しい月が中天に輝いていた。


     ■     ■     ■


深夜、生徒会屋敷。
和風さが漂う棟に囲まれた中庭には大きな火が焚かれており、橙の焔が屋敷に纏う暗い藍を払う。
低い櫓状に組まれた薪が勢い良く燃え、濛々たる灰色の煙は天へと昇る。
焚き火の周囲には物干し竿が設置され、制服が幾つも干されていた。
「にしても…」
すらりとしたスタイルの長身の女性が呟く。
「夜間、プールで泳ぐのは関心しないな。」
「っくしゅ!違いますよつらら先輩!」
首から下をまるごと包み込む、大きな白いタオルを体に巻いた八神が声を荒げる。

あの後、ハスターがおもむろに飛び込み台へと着地。
『本』を抱えた八神、鮎、剣信、鉄の塊同然のハスターと抱えられた少女。
重量がさすがに耐えられなくなったのか台が深くしなり、反動で全員が春先の未だ冷たいプールに叩き込まれたのだ。
そのときの光景をちょうど八神を探していたつららと舞鬼に見つかったのだ。
確かにあれだけ見れば単なるお調子者の集団だろう。
「ということで悪いのはあの甲冑を着込んだ変態です。」
「また変態になってるYO!?」
なにやらハスターが叫んでいるが、つららは眉一つ動かさずに呆れた声で、
「何が『ということ』なのか解らんが、まぁ…無事ならば構わない。」

キャンプファイヤーと呼べなくもない大掛かりな火に新たな薪をくべた左蔵(ちょうど『本』を回収した時刻、海賊船を制圧した様で八神らの様子を見に生徒会屋敷に来ていた)が言う。
「流石、御堂先輩。懐が深い。八神よ、新撰組であるならばかくあらん。」
「はいはい、僕が悪かったですよ…。」
「自白しましたぜ?つーちゃんおやびん。」
いつの間にか八神の傍に居た舞鬼がタオルの裾を捲ろうとしつつ(八神は無言で押さえている)告げ口する。
つららは舞鬼を目で制しつつ、
「川原…と言ったか。お茶でも飲むか?」
「あ、はい…ありがとうございます。」
知らない土地、知らない人に緊張しているのかしおらしい鮎。
鮎も当然プールに浸かり濡れ鼠になったが、今は舞鬼の制服のスペアを着させてもらっている。
少しキツいと漏らしていたが、それを言ったら舞鬼先輩がどう発狂するか解らないから、と緘口令を敷いている。
「橘も飲め。遠慮はするな。」
「…すいません、部長。戴きます。」
剣信は剣道部に入っており、その部長が御堂・つららである。
面識があるゆえか、こちらにはあまり問題はなかった。
左蔵はどこでも自分主義(そういえば『天動説ではない。我輩以外動説だ』と、以前言っていた)だからどうでも良かったりする。
黒魔術部の少女は学校内にある病院へとハスターが搬送した。
別状は無いらしく、暫くすれば元気になるとの事だ。

「して、八神。」
そんなことを考えていると、つららが思い出したように告げる。
「…本当に傷はないのか?」
心配顔で問いかけてくる。まだ知り合って間もないが、この人は本気で心配してくれているのが解る。
「はい。大丈夫ですよ。任務も無事完了です。明日、図書委員会へ掛け合います。」
ぽん、と八神は横に置いた『本』の表紙を触る。
その『本』をつららは一瞥し、また八神へと視線を戻す。
「唯の書物ではないな。恐らく今日起こった一連の事件の大元…と言ったところか。」
「まぁ…そんな感じです。」
「八神…」
侍のような意思が強い相貌が向けられる。
つららはそのまま手を挙げ、
「良くやった…。偉いぞ。」
わしわしと頭を撫でてくる。
つららの顔は笑みにあふれ、鋭かった眼も今は優しげに曲げられている。
「は、恥ずかしいですって!先輩!」

みんなの笑い声が屋敷に響き渡る。
春の夜、そんな事件に幕が下りた。



▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

【あとがき】

雪都「あー、終わりませんでしたよー。どうせ終わりませんよー」
つらら「何を拗ねている…」
雪「このあとエピローグ的な展開なんだけど」
つ「ほう」
雪「すっごく長くなった…いや、長くなってる途中だからここら辺で切った次第」
つ「どれどれ?…捲るのが面倒くさいな。」
雪「長いと読む気うせるしね」
つ「稚拙な文はな」
雪「……まぁ、19話で終わりってのも半端だし、20話目で限よく終わらせたくなったということで、どうでしょう?」
つ「まぁ、仕方ないな。」
雪「ということで次回は淡々と後日談ですがお付き合いいただけると嬉しいです。」
つ「…因みに私は出るのか?」
雪「今のところ出番は無いです。」
つ「…………。」
雪「痛い!痛い!無言でぶたないで!深刻に痛い!」
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