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覇道高校、新撰組! 第十八幕  
2006.06.25.Sun / 05:13 
八神は足が縺れつんのめる様に倒れた。
黒い雪に全身を包まれ、身動きも呼吸も出来ない。
既に肺腑には酸素など無く、体のありとあらゆる器官から警鐘が鳴り響いている。
(腕突かないと…顔から落ちちゃうな…)
場違いな感傷に浸る。
考える事すら怠慢なのだが、体の防衛本能だろう、腕が咄嗟に前方へと動こうとするがもはや体に積もりに積もった黒き雪が阻み指一本すら曲がらない。
体から一切の力が抜けた。
感覚神経は既に降参したらしく今どんな体制なのかが解らない。
ふわりと浮いた感じがすることだけは辛うじて解る。
ごぼり、と身を包む外殻から音が漏れた。地面にぶつかった音だろうか。
八神は体が次第に冷たくなるのを感じた。
(ごめん…僕…死ぬわ…)
五体を伸ばし、空に昇る感覚に身を任せる。
死の恐怖からか、自然と閉じていた目を見開く。
別に意味は無かった。もし何かが見えたら儲け物だ、ぐらいだった。
(綺麗な月だ…)
眼前には星空が広がっていた。最後にこんな景色を見れて死ぬのも悪くは無い。
大きく深呼吸をし、空の肺に冷たい空気を取り込み――
(息が出来る!?)
八神はがばりと体を起こすが不安定な足場に体がぐるりと回る。
夜空が一回転して、水面へと顔面が思い切り叩きつけられ何か破裂したような音が響く。

「ミコト!だいじょぶ!?」
「掴まれ!」
なんとか地に足を付き立ち上がった。水を纏いつつ顔を上げるとプールサイドからこちらに手を伸ばす鮎と剣信が見えた。
何がなんだか解らなかったが、とりあえず差し伸べられた二つの手に片手ずつ差し伸べると、二人はプールに浸かった体を引き上げてくれた。
「ごほっ…ごほ…僕…生きてる?」
「ボクが聞きたいよ!大丈夫なの!?」
八神は一通り体を見回すが全身がびしょ濡れという以外、外傷は無い。
横隔膜は酸素を貪欲に欲し未だ痙攣を繰り返す。
「こほっ…縺れて…倒れたのが…プールだったのか…」
「なんか、なんかなんか!ミコトが急に黒くなって膨れ上がって!もう解んなくなって!それで、それで!」
「ぁー、頭がジンジンする…ちょっと落ち着いてよ鮎。」
「落ち着いてなんかいられないよっ!」
大声で喚く鮎。プールに浸かって全身から塩素の匂いを漂わせる八神の襟首を掴み高速に揺する。
八神は殺意があるのではとも思えるほど絞めてくる腕にタップをしつつ、
「…でもなんで?」

答えは帰ってこないだろうと思っていた呟きに律儀に返す者が居た。
「狙ったのか、はたまた運が良かったのか…後者だったら大したもんだよ、ミコト?」
先ほど隠れていた更衣室の影から鮮やかな薄緑色の西洋甲冑が現れた。ハスターだった。
がしゃり、がしゃりとプールサイドをゆっくりと歩きつつ、こちらに寄ってくる。
そして吟遊詩人の様に詩の一説を歌う。

  <暗黒のもの>を召還せし者
  凶事あるを肝に銘ずべし
  滅ぶべき敵 流るる水により命護らる  

「<暗黒のもの>ってのがあの黒い雪みたいなもんだよ。呪われた対象は体を包み込まれ、酸素を奪われる。その弱点が…」
「『水の中では呼吸できるのよ』…か。」
八神は先刻、イタクァが最後に呟いた謎の言葉を思い出す。
「そ。奴らは水が嫌いな様でね。その水を浴びると消えてなくなるんだ。」
「あ!ボクそれ本で読んだ気がするよ!オカルトでは有名な話だよね?」
鮎がさっきの動揺は何処へやら。目を爛々と輝かせ話に乗ってくる。
(こいつ、オカルト好きだったのか…)
と八神は親友の知られざる一面をかみ締める。
そんな事を知ってか知らずか、鮎は続ける。
「でも…さっきの詩、続きあるよね?」
ご名答!とハスターは鮎を指差し、
「最後の節はこうだ。」

『喚び出されし暗黒 喚びし者に報いぬ…』

「水を浴びた<暗黒のもの>は…詠唱者へ返っていき、殺すんだ。腹癒せにね。小さい奴だよ、まったく。」
ハスターは両手の手の平を天に掲げる。
「かはっ!!」
飛び込み台のほうから擦れた呻き声が聞こえる。
黒魔術部の少女は既に全身が<暗黒のもの>に包まれ咽を掻き毟っている。
顔面といえば既に黒頭巾を被ったかのようになっている。先ほどの呻きは体内から搾り取られた酸素が漏れた音だろう。
八神を包んでいた物が全部返ったとすると、小柄な少女では数刻と持つまい。
少女の体は可也の量の<暗黒のもの>に包まれて膨れ上がっている。
「あの子の負けだね。ジ・エンドだよ。」
ハスターはまるでニュースキャスターの様に淡々と告げ、
「これで『本』も戻…」
「そこからプールに飛び込めーーーっ!!」
八神の大音声がそれを遮った。
思わぬ行動をされたハスターは多少混乱し、
「あの子はミコトを殺そうとしたんだよ?なのにキミは…」
「早く飛び込めっ!」
八神は耳を貸さずに叫び続ける。
だが少女は既に動いては居ない。黒い雪はまだ積もり続け完全な球となっている。
「遅いよ。あれだけ膨れればニンゲンじゃ身動き一つ出来ないね。気絶、してるんじゃないかな?あのままあとは死ぬだけだよ。」
「なら!ならあんたならなんとか出来るだろ!?あの子を助けられないのかっ!?」
八神はハスターへと険しい剣幕で詰めかかる。襟の一つでもあれば掴んでいるだろう。
だがハスターは冷酷にも吐き捨てる。
「それは無理だよ。呪われた者は決して逃げられない。それはオレにも当てはまる。奴らもあれでいて古代の支配者だからね…。喚び出されたからには一つのイノチは必ず持って行くぞ。」

黒い球体は蠢動を繰り返す。それは咀嚼している様にも見え、酷く禍々しかった。
「ミコト…あの子…死んじゃうっ…」
八神の腕を力強くぎゅっと握る鮎。小さな両手は白く成る程結ばれて震えている。
鮎も怖くて直視できないのだろう堅く目を瞑っていた。
「こんなことする悪い子じゃなかったのに…なんでっ…!」
目の端に雫を浮かべ、頭を振る彼女。

八神はそんな鮎を見て、腰に挿したバルザイの柄をぎゅっと掴んだ。
(目の前で困っている人が居る…)
もう片腕でスラックスのポケットの奥に突っ込んだニトクリスの鏡を力強く掴む。
(何人も、何人もだ…!)
飛び込み台の上に存在する黒い球体となった少女を見据える。
(そして…僕は助ける術を持っている。)
先ほどの自分の体を締め付けられる音が――フラッシュバックだろう――幻聴が聞こえる。
(間違ってないですよね、つらら先輩!!)
幻聴を打ち払う。恐怖は確かにあった。だがこのまま何もしない方が、怖かった。

「鮎、剣信…」
八神はゆっくりと口を開く。ガクガクと震える体を抱きしめ、気合を込めて言葉を作る。
赤い目で見上げてくる鮎。多分察してくれているのだろう、沈痛な顔をした剣信。
「すぐ…終わらせてくる。あの子を助けて、終わりにする。」
「…えっ?」
「命…!」

はにかんだ表情をしているのだろう。それを自覚し、気合を入れる。
八神はすっ、と鏡を掲げた左手を翳した。

"汝とは解り合えぬ。――逆転世界"

女性の声が聞こえた途端、スピーカーから流れるノイズの様な音が一瞬辺りに響く。
ぶつっ、と言った音が途切れると、鮎が握っていた筈の八神の腕は無く、代わりに気絶した少女がプールサイドに横たわっている。
「えっ?…嘘。嘘、だよね?」
鮎は瞬き一つ無く、
「ミコト?隠れてるんだよね?冗談…だよね?いつもみたいにさ、ボクを驚かせるんでしょ?」
剣信は静かに目を瞑り、口を閉ざす。
鮎は震える声で、
「ねぇ…やだよ…嘘って言ってよ…ミコト…ミコトぉー!!」
凝縮の感覚が早くなり、心臓の様に蠢く、<暗黒のもの>に―――叫んだ。


      ■        ■        ■


「はぁ…」
春の夜風は未だ冷たく、火照る肌を優しく撫でる。
縁側に、もの鬱気に月を見上げる女性が座っていた。つららだ。
「はぁ…」
「二十四回目」
傍から見れば深窓の令嬢にも見えなくも無い、メランコリックを漂わせるつららの横には舞鬼が寄り添っている。
手にはカウンターを持ち、かしゃりとボタンを押す。数字が刻まれたバレルが回転し、『0024』を小窓に表示する。
つららはその光景を横目で見据え、ゆったりと手をカウンターへと伸ばし――ボタンを連打する。
ガシガシガシガシ!
「ああーっ!あああああーっ!」
この世の終わりとでもそうは驚きそうも無いテンションで舞鬼が叫ぶ。
だが、けろりとした表情に戻り、
「まぁ、落ち着けよ。つーちゃんよー」
いつ用意したのか程よい熱さの湯のみを渡してくる。
つららは緑茶という事を確認し、こくりと咽を鳴らす。
一息ついたところで、見上げていた月から目を離し、畳の部屋へと目を移す。
そこには昏倒しているクトゥグアの姿があった。
「ナイス、パワーキャラ」
舞鬼が親指を立て、ウインクしつつ言ってくる。
「…怖かったんだ。これは正当防衛だろう。きっと。」
つららは湯飲みに口をつけ、再び月を見上げる。
「八神が出て行ったきりだが…どうしたのだろうか…」
「黙って帰ったってコトは…ないね。もう一度探しに行こう。つーちゃん。」
「…そうだな。」
つららは綺麗に背筋を伸ばし、優雅に立ち上がる。
嫌な予感がして、少し胸を押さえた。
「ん?どしたの?びっくりして胸がおっきくなっちゃった?唯でさえ大きいのに!ムキーっ!」
「そそんな訳あるかっ!」
つららは顔を高潮させて生徒会屋敷の玄関へと移動する。
「…少しは元気、出たかな。」
「覇道!何をしている!?行くぞ!!」
「はいはーい♪」
気絶したクトゥグア以外、生徒会からは人が居なくなった。


      ■        ■        ■


八神の視界は再び闇に包まれていた。
当然身動きなど出来ず、当然呼吸など出来やしない。
(つらら先輩のが移っちゃったかな。)
ため息の一つもしたいが、生憎肺には吐く息が無い。
(僕も十分馬鹿だな…。)
急に頭の後ろがむず痒くなるが腕が動かせないので掻けない。
(ま、体が勝手に動いちゃったんだ。仕方ないよな。)
体内に入り込んだ雪がまた一塊の酸素を奪ってゆく。
それにつれ一気に持って行かれそうになった意識を何とか取り戻す。
ぐぐぐ、と体にこびり付いた雪が圧縮を繰り返し始め、
(そろそろだな…。)
<暗黒のもの>は限界まで圧迫し、そして――爆ぜた。


      ■        ■        ■


鮎はその光景を見ていた。
黒い雪が弾け、中に居た八神がどさりと飛び込み台の上に落ちる音も聞いた。
震えて一歩も動けなかった足を睨み括を入れる。
鮎はプールサイドを走り、走り、飛び込み台の梯子へ向かう。
スカートなど気にせずに昇る。
最後の段を上り、高みへと移動。
そこにはぴくりとも動かない親友、八神・命の姿がある。
「うっ…ううっ…」
鮎は力なく膝から崩れ落ち、
「うぁああああああああん!!バカバカバカぁ~!」
泣いた。





△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

【あとがき】

雪都「来週終わる確立80%」
つらら「天気予報みたいだな。」
雪「もし終わんなかったとしても20%の所為にします。」
つ「そういえば、天気予報の0%や100%は解る。だが…」
雪「間の数字が微妙だよね。」
つ「そうだ。50%と60%など、もはや何がなんだか。」
雪「どっちかにしなさい!って感じだよね。」
つ「私もそう思う。」
雪「あれ?何の話してたんだっけ?」
つ「天気の話だろう。」
雪「あ、そっか」
つ「では、私は急ぎの用事故」
雪「やがみんならプールですよ。」
つ「そうか、すまない。ではな。」
雪「じゃねー。……あれ?」
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テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学
COMMENT TO THIS ENTRY
--きょうは、八神ま--

きょうは、八神まで深呼吸するつもりだった。

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