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覇道高校、新撰組! 第十七幕  
2006.06.24.Sat / 04:12 
イタクァはもう一度足元の雪球を見る。
何やら淡い青色で文字らしきものが刻まれていることに気づく。
彼女はゆったりとした仕草で屈み、まじまじと見つめた。
『対イタクァ用追尾弾』
「ついび…だん?」
「そ。追尾するから追尾弾。」
ざくざくと小気味良い音で雪を踏み締め、悠然と歩いてくる男二人。
その内、黒剣を片手に下げた整った顔の少年が言う。
「このバルザイの堰月刀、ルーン文字を刻めば誰でも魔術が使えるらしいですね。」
そして、と続ける少年。
「便利なことに翻訳機能も付いてる。何やら現代文字でも刻めばその記された意の効果が出るとか。」

足を崩したまま地べたに座り、唖然としているイタクァ。
似たような格好をしていた少女―――鮎が立ち上がり、
「場所チェンジのへんな鏡は第一の罠って感じかな。本命じゃなかったんだよ?」
何故か得意げな表情で告げる。そして剣の少年、命が続ける。
「本命は鮎の持った追尾性能を持った雪球。あと、僕らはそれから目を逸らさせる第二の罠、かな。」
こくこく、と横で頷く剣信。
イタクァは呆然を通り越し、無表情に近い顔で二人を交互に見つめ、
「じゃあ…最初に私の弾が当たらなかったのはぁ…」

遠く、最初に三人が出てきた塹壕から罵声が上がる。
「オレに当たったんだよ!!」
黄緑色の西洋甲冑を着込んだ男が肩を怒らせガラの悪い男の様に歩いてきた。
近づくにつれ腹部に青い光が見えた。それは文字でこう書かれていた。
『よく当たる的』
「いつの間にか勝手に書きやがって…痛かったぞミコト…」
「あはは、悪い悪い。」
ミコトと呼ばれた少年は少しも悪びれずに返す。
突然の乱入者にイタクァは狼狽し、
「ハスターじゃなぁい…」
「よっす!やっぱお前も負けたかぁ。」
「…も、って事は?」
ハスターは申し訳なさそうに小首を傾げヘルムの横を掻く。
痒いから、では無く照れた時の癖なのだろう。
「言葉の通り、だ。コイツらこの学校の生徒。で、オレらみたいなの取り締まってる。OK?」
「正確にはアンタ達を呼び出した本人から『本』を取り上げることが目的なんだけど。」
剣を持った少年、命がすかさず訂正する。

未だ勝負に負けたという事態が飲み込めていないイタクァ。
いつの間にか周囲には命、鮎、剣信、そしてハスターが取り巻いている。
「さて、約束ですが当然覚えてますよね?」
小柄の中性的な顔立ちの男、命が言う。バルザイは腰の辺りに鞘も無いのに収められている。
「敗者は勝者の命令を一つ、聞くんだよねー」
何処か幼さが残る整った顔を精一杯淫靡さを映し、にやにやと笑う鮎。
「一生奴隷、ってーのはどうだい?こんなんでも役に立つんじゃないかな?」
ハスターは若草色の甲冑を着込んでいて表情は解らないが、恐らくとても憎たらしい顔をしているのだろう。
声のトーンでそうイタクァは察した。

「さーて…どうしよっかなぁ~…?」
命と鮎、ハスターの三人は両手をわきわきと蟹の足の様に蠢かせ、イタクァを取り囲む。
なにやら困り顔でその三人を見つめる剣信。
そんな中、彼女は先ほどのショックで腰が抜けてしまったのだろう。
下半身を引きずるように後退するがままならない。
「い…い…」
百人が見れば百人が恋に落ちそうな怜悧な美しさを持ったイタクァの顔は恐怖に引きつり、今にも泣き出しそうである。
「嫌やぁああああああ!!」
純銀の世界が広がる体育館。
一人の女性の叫び声が響き、そして消えていった。


     ■    ■    ■


山林の中、開けた土地があった。
そこには古びては居るが寂れてはいない洋館――女子寮である――と船首を半分ほどその建物にめり込ませた廃船さながらの海賊船が存在していた。
深い瑠璃を流した夜空、寮の広大な庭には篝火が焚かれ、辺りを昼間の様に煌々と照らしていた。
「ん?深山、どうかしたのか?」
将校服を着込んだ体躯の良い青年が問いかける。
問われた先には眼鏡をかけ、黒髪をオールバックにした青年が居た。
深山と呼ばれた青年は思案顔で校舎の在る方向を見つめていた。
「いや、少々気にかかることがあってね。」
「お前にも気に掛けることがあったのか、はっはっは。…さては女か?」
「まさか。」
鼻を鳴らし一笑に付す、深山・左蔵。
くるりと優雅に体を回し、海賊船へと向き直る。
「戦況はどうかね?」
右腕を勢い良く水平に払う。皺一つ見当たらない制服がぱんっ!と小気味良い音を奏でた。
将校服を着込んだ男が通信兵――サバゲーとは思えない程の装置を使っている――から受け取った穴が開いたレシートの様なものに目を移し、
「順調に制圧中だ。女子寮に入り込んだ賊は全て排除。以後、あの船に残った奴らを排除するために突入をかける。」
「そうか。負傷者は如何かね?」
「負傷者はゼロ。相手は刀剣を使用との事だが、さすが深山コーポレーション製の軍服だ。防刃に優れているな。あって打撲程度だ。」
「ふむ、担当の者に伝えておこう。」
「他にははじめての女子寮に興奮し、不埒な行為をした男子兵数人を独房に連行するなどの珍事があったが概ね作戦に支障は無い。」
「ご苦労だ。」

左蔵は腕を組み、泰然自若と海賊船を見つめる。
既に数人の尖兵がガスの圧力でBB弾が発射されるAKを掲げ、突入しているのが見えた。
「にしても…相手は何処の所属だ?本物の骸骨だぞあれは。中には人はます入れない。それに撃てば砂の様に消滅すると聞く。あれは何だ?」
左蔵はにやりと口を歪め楽しそうに告げる。
「それは秘密だ。別段、貴様も気にしては無いのだろう。アレが使えているのだ、内心相手など気に掛けてないのでは無いかね?」
「…ふふっ、まぁな。違いない。」
二人の男は顔を見合わせ笑いあう。
そして将校服を着込んだ男が笑いを止め、真剣な面持ちで、
「左蔵、うちの部活に入る気は無いか?やはりお前以上の指揮官は悲しいことに居ないんだ。」
「断る。私は既に部活に入っているのでね。それを止める気もないし、掛け持ちもせん。」
「君の様なフレッシュな部員を募集中!一緒に青春の汗を流さないか!?」
「…言い方の問題では無いが。」
「また振られた…か。」


     ■    ■    ■


八神、鮎、剣信、ハスターの四人は野外プールの更衣室の影に隠れていた。(ちなみにイタクァは今頃体育館の掃除をしている頃だ。)
冗談の様に広い校庭の一角、これまた冗談のような広さのプールだ。
プールには何個か種類があり、一片25メートルプールに、50メートル、100メートル、200メートルと四種類存在する。
八神たちはその一片200メートルの長距離用のプールに居た。
コースもとんでもない数があり、クラス全員(平均して百人ほど)に一コース宛がわれるので、広さといえばちょっとした湖であった。
水面は静かに波を立たせ、映る夜空を歪ませる。
神秘的な光景の中、背の低い影が飛び込み台に立っていた。

「あいつか?」
八神は近くに居ても耳を澄まさねば聞こえないような小声でハスターに語りかける。
「そうだよ。オレらを呼び出したのは彼女だ。」
八神はもう一度月明かりに照らされる少女を見た。
背は低い方だろう、長い髪は二つに結われている。
何やら制服の上にストールを羽織っている様で、時折ゆったり吹く風に棚引いていた。
その小柄な体格には不釣合いな大きな板の様なものを抱えていた。
あれが探していた『本』であり、全ての元凶である魔書、セス・ビショップ抜書なのだろう。

「あれ?あの子…」
鮎は隠れていることを忘れたのか、雑談をするようなトーンで言う。
三人は慌てて止めようとするが気になる単語がその口から出た。
「黒魔術部の子だよ。ボク知ってるよ?仮入部したとき見たもん。」
「後半は聞かなかったことにする…。けど黒魔術部か。魔法に憧れはしそうだな…。」
「おいおい、そんなことより召喚の儀に入ったようだよ!」
ハスターが小さい声で咎めるように叫ぶ。

八神はイタクァの事を思い出した。
「私を呼び出したら、プールの方へ行くような事を言っていたわぁ。水辺で召喚と言えば…クトゥルフよぉ。間違ってもアイツだけは目覚めさせては駄目。」
イタクァの表情は真顔になる。
「呼び出されたら世界中のニンゲンの気が狂い、そして死ぬわ。たった呼び出されただけでね。洒落じゃ済まない奴なのよ…。」
そう言い終わると表情は元の気だるげなものに戻る。
ゴシック調の服についた雪を手で払い、
「そうそう、坊や、水の中では呼吸できるのよ。知ってた?」
そうワケの解らない事を言って彼女は掃除に取り掛かったのだ。

「よし、僕が行く。皆は隠れていてくれ。何があるか解らない。」
「ミコト…」
「……解った。」
剣信は相変わらずの心配顔で同意してくれた。
鮎は納得の行ってない声だが仕方ない。
「そうだ、あの鏡貸してくれる?」
八神は鮎に問いかけ、しぶしぶ彼女は位置逆転の魔法が罹った鏡を手渡してくる。
渡された手の平大の鏡をポケットに仕舞い、バルザイの柄をぽんと叩く。
「行こう。」
黒い刀身に緋色の光が滲んだ。


     ■    ■    ■


一方その頃――
「姐さん!オレを弟子にしてください!」
畳が敷かれた部屋、生徒会の屋敷に土下座を繰り替えす男が居た。
「い…いや、クトゥグア君、少し落ち着いたらどうだ?」
土下座にターゲッティングされたのは日本人形の様な美しさを持った女性だった。
『常に冷静さを』がモットーの御堂・つららだが、今は明らかに狼狽が見て取れる。
「私はまだ修行中の身の上、弟子というものは…」
「そこを何とかお願いします!姐さんの強さに惚れ込みました!どうかお願いします!」
赤毛の長髪が土下座されるたびに翻り、まるで焚き火を見ているようだった。
男、クトゥグアの額は畳に擦られ血が滲んでいた。
畳にも当然血は付いており、
「…新手のストーカー?」
つれを見つつ舞鬼は至って真顔。
「違わい!」
土下座のスピードを上げつつ律儀につっこむクトゥグア。

(ストーカーより怖いものが有るんだが…)
つららは水呑み鳥のおもちゃさながらがくんがくん揺れているクトゥグアを怯えが多少入った目で見つめる。
「頼む、頼むから土下座を止めてはくれないか?」
「いえ!弟子にして頂けるまで止めません!オレの誠意です!」
「その誠意が怖いんだ…」
つららはふっと目を逸らし、どうしたものかと困り顔。
開け放たれた襖から、庭が見える。
夜空には鮮やかな黄金色の月が浮いている。


     ■    ■    ■


もう一人、その月を見る者がプールサイドに佇んでいた。八神だ。
そしてゆっくりと視線を下ろし、「よしっ」と小声で気合を入れる。
八神は瞳に意思を灯し声を上げる。
「『本』!返してもらえるかな!」
プールサイドから飛び込み台は15メートル程の高さにある。
その飛び込み台に一人の少女が立っている。その少女はそこで初めて八神を見据える。ガラス玉のような空ろな瞳で。
少女は開いていた一抱えもする大型の『本』をばたんと閉じ、
「嫌。」
感情が篭っていない声で、きっかりと拒否を示した。
「嫌…じゃなくて、それ貸し出し禁止なんだ。危険だからさ。」
「危険。無い。」
会話するのも億劫なのかぶっきらぼうに澄んだ声で応答する少女。
「ね?怒ってないから、一緒に返却しよう?」
「うるさい。邪魔するな。」

少女は感情の篭っていない顔を八神に向ける。
それは目の前を横切る羽虫を見るような冷たい目で、
「――――――――――。」
何かを言った。
少女の口から何かが発せられるが、それが何なのか解らなかった。
大勢の男たちの呻き声の様なものが聞こえる。
歌っているのか、それとも叫び声なのか、判断つかない声が少女の口から発せられる。
ただ一つ解るのは恐怖だった。

八神はがばりと顔を上げた。
いつの間に俯いていたのかもすら思い出せない。
気づいた頃には既に少女の歌は止んでいた。
少女は羽織っているストールをマントの様に翻す。
今まで筋すら動いて無かった無表情顔に仄かに笑みが生まれた。

「ん?雪?」
八神は空を見上げた。
顔に冷たいものがヒヤリと付いたのだ。
拭いつつ上に視線を移すと確かに雪が降っていた。
だがその雪はただの雪ではなかった。黒い雪があるだろうか。
八神は肩に積もった黒の雪を払い落とすが、なお深深と振り続ける雪がそれを許さない。
周囲を見回すも黒い雪が降っているのは八神の周りだけ。
そして――
「これ、何だよ…」
止む事を知らないのか、雪は今だ降り続ける。振り続け雪は八神の体を包み込む。
地面に落ちた黒い雪は蟲の様に這い回り、足に纏わり付いたかと思えば徐々に上ってきている。

「ばいばい。」
少女はもとの鉄面皮に戻ると再び『本』を広げプールを見据えた。
八神は静止しようと口を開いたが、
(声が出ない…!?)
いつの間にか黒い雪は体の周囲に厚く積もっており、まるで着ぐるみをしているようだった。
顔にも徐々に積もってきており、口が塞がれ、息をすることも侭ならない。
(冗談じゃないぞ!窒息しちまう!)
急いで手で口を塞いだ雪を払おうとするが、降る勢いが増した雪に追いつかず拭う事が出来ない。
もがいている間に雪は目の高さまで包み、脳天へと移動し、八神を完全に包み込んだ。
「ミコトっ!」
「…くそっ!」
遠くのほうか微かにくぐもった声が聞こえる。鮎と剣信だろう。
「まだいたの。」
少女は面倒くさそうな、いや、その感情すら込めるのが面倒くさいと言わんばかりの声で呟く。
(馬鹿、こいつは危険すぎる!二人とも逃げろ!)
声に為らない声で叫ぶが伝わるはずも無かった。
思い切り叫ぼうとしたからか、口から気管へと雪が入り込み、吐き気と同時に更に酸素が奪われる。
もう咳き込む息も、吐き出す息も無い。
横隔膜が空気を寄越せと蠢動するが生憎雪を口から招き入れるだけだった。
(鮎、剣信!逃げて…くれっ!)
霞がかかって来た意識を呼び起こし、最後の力を振り絞り意思を伝えようと八神は体を動かす。
関節が思うように動かず、油が切れた人形のようにギクシャクと体を動かすが、
(…くそっ!)
縺れた足が何かに引っかかり、そのまま落下する。

「――!」
「――!」
何か聞こえた気がするが、もはやその意味も八神は解らなかった。
全身に力が入らず、意識もまた薄れていった。
軽い浮遊感を覚え、八神は―――




▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

【あとがき】

雪都「三時間かかったよママン」
つらら「私はお前の母上では無い。それよりなんとかしてくれないか?」
雪「律儀に突っ込むね。で、何を?」
つ「もはや職業病だ。なんとかして貰いたいのは――」
クトゥグア「姐さん!こんな所に居たんですか!」
つ「いやぁああ!!」
ク「……姐さん?」
つ「いや、何でも無い。それよりお前、何故此処が解った?」
ク「あのチビっこい奴が教えてくれたんですよ。」
つ「覇道め…」
ク「それより姐さん!どうか弟子に!」
つ「…おい、何とか為らんのか?」
雪「ならないんじゃないかな…。」
ク「姐さぁーん!」
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テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学
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