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キャスタ×ホリック 『バカ野郎に花束を ~三話~ 』  
2006.06.22.Thu / 04:32 
シュウが目を覚ますと空が見えた。
それはまるで鮮やかな水色のカンバスに所々綿飴を散りばめた様。
彼は違和感を二つほど覚えながら抜けるような蒼穹を見つめていた。
一つめは雲が尋常じゃない速さで流れていること。
二つめは後頭部に定期的に鈍器で殴られるような衝撃と熱が与えられていることだ。
「おい、ベアトリクス。いつから俺はソリにジョブチェンジしたんだ。」
「知るかっ!」
「お前、人様を引きずっといてなんだそれは!?摩擦熱で目を覚ます黄金体験させやがって!!」
「目の前でオオトカゲの餌やりショーなんか見たくなかったんだよ!もういい!じゃあ離す!」

ベアトリクスは大八車のように掴んでいたシュウの両足をパッと離した。
軽くなった所為かそのまま長身の彼女は加速し走り去って行っていく姿が見える。
「痛つつつ…」
慣性で少し距離を追加し引きずられたシュウは後頭部を擦りつつ立ち上がった。擦った方の手のひらを見ても血は付いていない。
(ベアトリクスに殴られて…気絶したのか…。で、そのまま引きずられていた、と。)
半眼でどんどん背中が小さくなるベアトリクスを睨む。
愚痴の一つでも零そうかという時、それは不意に阻まれた。
背後から大地よ裂けろと言わんばかりに振動が起こっていてる。
それはしだいに近づいてきて―――
「きしゅあああぁぁ!」
シュウは声の主、爬虫類王バジリコックを確認もせず、尋常じゃない冷や汗を浮べ全力で驀進した。

ずいぶんと走っただろうか、遺跡の石畳もまばらになってきている。
シュウは踝ほどの長さの草むらを踏みしめ前方を見据えた。
地面はゆっくりと上り坂となっている。
この小高い丘を登れば砂漠地帯へと繋がる。
「そう言えばよ、お前さっき私を制止したよな?何でだ。」
あれからベアトリクスに追いつき今は併走している。
彼女は疲れ一つ見せない顔でシュウを伺い見た。

魔術師はイメージ的に部屋に閉じこもり研究ばかりしていると思われがちだが、実際はかなり肉体の鍛錬も重視している。
研究に対しての体力、スタミナ、精神鍛錬などの目的もあるが、真の目的は魔術が対応できない場面に備えての事だ。
自然の理に揺さぶりをかける魔術は万能ではない。
呪文――声がキーとなる故、声帯を潰されたり、口を塞がれるだけで魔術など使い物にならなくなる。
そんな事態に陥れば、最終的には身体能力に頼るほか無い。
よって魔術師の間では研究と同等に運動にも重きを置いている。

疲れを見せないベアトリクスに対してシュウももちろん例外ではなく、息一つ荒げずに問われた疑問に答えた。
「バジリコックの爪を採ってきて欲しいとアイザックに頼まれたんだ。」
「アイズぅ?」
ベアトリクスは頓狂な声をあげ、一人の男を思い浮かべた。
体格は少し小柄でいつも笑顔は絶やさない奴。シュウと同じく学生時代からの付き合いの男だ。
そのアイズがバジリコックの爪を欲しがっている?
「なんでだ?」
自然と疑問が声に出る。
シュウはそんなことも知らないのか、と言いたそうに嘆息。
「極めて高価なんだ。バジリコックの爪はな。文献にも『剥いだ爪の毒は十年隔てた今でさえ尚分泌され続けている。恐らく恒久的なものではないかと推測される。』と記されている。おおかた、研究にでも使うんだろうさ。」
「…いくらだ?」
シュウは視線をやや上げ、虚空を見つめ軽く唸る。
そしてすらりと伸びた指を何本か立て、数回に渡り形状を変えた。
変わったのはシュウの手だけではなく、ベアトリクスの目の色もそうだった。
「よし、足だけ残して他は焼こう。」
「そこの金に目が眩んだ女、待て待て待て。」

またもや後方に付いてきている大型のトカゲ、バジリコックに手を翳し、魔術を編んでいるベアトリクスをシュウが静止する。
唇を尖らせた不機嫌顔のベアトリクスを一瞥し、
「お前の十八番、炎は効かなかっただろうが…」
「じゃあ、お前の消滅の『可能性』の魔術で足以外消してくれよ。」
「それは無理だ。成功か不成功かだったら成功してみせる。だが足以外消すとなると体液が吹き出るだろう。アイツの体には猛毒が駆け巡っているのを忘れたか?肌に触れるだけで死に至る様な冗談みたいな毒だ。それが断面から勢い良く散布されて見ろ、流石の俺でも死ぬかもしれん。」
「次の論文のテーマが決まったな。未知なる不死魔術の考察 -何処まで適用されるのか-、でどうだ?」
「そんな体当たり的企画嫌だ…」

やりとりをしている間に緩やかな丘の頂に着いた。頂と言っても一番高い場所というだけで大して高度は無いのだが。
丘は展望が良く遺跡を遥かまで見通せる。
反対方向には砂時計の中に入ったらこんな景色なのだろうかと思えるほど砂しかない大地、砂しか見えない雄大な砂漠だった。
追われている立場で無ければシートの一つや二つは広げて弁当でも食べたいと思える、そんな絶景だった。
その頂にはまるで円環が半分埋まったような形をした、とても大きな石製のアーチが架かっている。
見上げればアーチの内側には文様が描かれている。古代の住民の生活の様子にも、小粋なミミズが躍り狂っている様子にも見えた。
恐らくこれは遺跡と砂漠の境界として建てられた門のような物だろう。
砂漠に棲むバジリコックもここを通って来たのか、とシュウは想いを馳せる。

「こっから先は走れねぇな…」
ベアトリクスは苦虫を噛み潰した表情。
砂漠を走るなど装備上自殺行為な上、足を取られロクに進むこともままならないだろう。
地元民のバジリコックに追いつかれるのは予想が容易だ。
「背水の…この場合、背砂の陣という事だな。」
「余裕じゃねぇか、シュウさんよ?」
「そうでも無いさ。まぁ、一つだけ策は有るが。」
「つ、爪は採れるのか?」
「…採れる、だろうけど、食うか食われるかって時に己の身の安全より先に金か…」
「そそそそれよりどんな作戦なんだよ!?」

耳の先端まで真っ赤に染めたベアトリクスを冷ややかな視線で見つめるシュウ。
吊り上がった双眸を細めつつ、作戦を世間話でもする様に告げた。
それを聞いた彼女は眼を見開いたかと思えば口元を緩める。
大きな胸をぼふんと叩き、シュウから離れて行った。
「先に謝っとく、悪いな。」
シュウは後ろをすっと振り返る。
草原の丘に一際目立つこんもりと盛り上がったものが見えた。バジリコックだ。

砂塵を巻き上げ暴走列車のような勢いでこちらに向かってくるのを見据え、シュウは精神を統一する。
(チャンスは一度…悟られるな!)
右手を開き前方に向ける。一度大きく空気を肺に送り込み十分に酸素を蓄える。
バジリコックは前方十メートルを切った。
血走った眼に自分が映っているのを泰然と見つめ、シュウは呪文を紡いだ。

"―――汝、凍れる国の姫と為れ"

辺りを取り巻く大気が一度蠢動。
それは直ちに収まるや、乾いた音が丘に木霊する。
見えない鞭が空を打った時発するような小気味良い音だった。

突如、シュウの手の向けられた方向、ターゲットの色が無くなった。
モノクロになったそれはガラスを踏み割るような音を発てつつ砕け散る。
砕けるのは―――草揺れる大地だった。
そこだけ白黒写真なのでは無いかと思える奇妙な地面。
最初は点ほどだったものが徐々に同心円状に広がって行き、広がるに連れ世界に嫌われたかの如く崩壊する。
異変を感じ取ったのかバジリコックが足を止めるが、既に遅かった。
四本足が支える地面は灰色に染まり、バリン、バリンと叫び陥没してゆく。
バジリコックが悲鳴を挙げる暇も無く、巨大なクレーターに飲み込まれると同時、
「ベアトリクス!今だっ!」
「おうっ!」
シュウから遠い地点からベアトリクスの声は届く。
立つ位置は巨大な石アーチの根元。そのアーチの壁に向かい手を翳している。

"―――無間地獄の柘榴を刻め!"

澄んだ声が響き渡るとベアトリクスの上等なシルク糸を思わせる赤髪が踊る。
不自然なほど強い突風が一瞬吹いただけでもとの静寂が戻る。が、それの静寂は柄の間だった。
アーチの壁には一筋の紅い線が走っていた。
熱した鉄線でスチロールを削った断面に似ていて薄黒い煙が天を目指し昇っている。
異変は音から始まった。
ずり…ずりり…と死体を引きずるような音が鳴ってから、
紅い線が奔った壁が徐々にスライドしていく。
この時点で鳴動は休み無く轟いていた。
石が複雑に組まれて作られているアーチが崩壊を告げている。

「一旦撤収だ!逃げるぞベアトリクス!」
「言われなくても逃げるっつーのぉ!」

シュウとベアトリクスはバジリコックが落ちたクレーターに、アーチを形作る石というか岩が埋まっていくのを確認。
その後直ぐに頭上から降ってくる石の雨を掻い潜りつつ、丘を走り下っていった。


▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

…終わらなかった。
あっれー、おかしいな。
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テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学
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