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キャスタ×ホリック 『バカ野郎に花束を ~一話~ 』 
2006.06.11.Sun / 05:54 
「マザコン」
ぴくり。

見渡す。
視界いっぱいに石畳が広がっている。
見上げる。
底が知れないほど遠くまで青空が広がっている。雲ひとつ無い。
周囲には風化した家屋だったものらしき壁や、見上げるほど大きなアーチ状の天蓋が所々に点在する。
石が敷き詰められた大地の僅かな隙間に生えた雑草や、石版を捲り上げるほど太い根を張った大樹などが既にここが崩壊した街だと主張する。
そこは遺跡だった。

「マザコン~♪マザコン~♪」
ぴくっ。
そんな学者以外は興味も持たない多くの人に忘れられた土地を闊歩する二人の男女が居た。
先ほどから冷や汗をだらだらと流しつつ先頭を歩いているのは上下を黒色スーツに包んだ、まるで葬式帰りを思わせる男だった。
男は生まれつき吊りあがった眼の端を若干痙攣させて足を止め、また歩き出す。

「マザコンだぜ~♪シュウは~♪そりゃあもう無意識に倒置法で強調しちゃうくらい~♪」
音程が滅茶苦茶な即興の歌を唄っているのは長身の女性。
どこからか調達した短い小枝を指揮棒のように振りながら唄っている。
焔色の長髪は束ねられる事無く伸ばされ、腰の辺りで「こんな感じか」と適当に刃物でざっくばらんに切られている。
白いワンピースに体を包み、上に陸軍のジャケットを羽織っている。靴は学園支給品の戦闘用ブーツ。
上着と靴は幸い共通点があるが、まだアンバランスさは拭い去れていない。
そのアンバランスさは顔には適用されておらず、顔立ちは整っている。
片目が前髪で隠されていて、残った意思が強そうな琥珀色の眼は鼠を見つけた猫の様な面白いことを見つけたと言わんばかりの弓形になっている。

「うがぁー!黙れベアトリクス!俺は断じてマザコンではない!あれは…そう!妖精の仕業だ!」
吊り眼のシュウは今日何度も発した抗議の声を張り上げる。
ベアトリクスと呼ばれた長身の彼女はちらりとシュウを一瞥し、また、
「マッ・ザッ・コッ・ンッ~♪」
握った小枝をぶんぶか振り回す。どうやらサビに入ったようだ。

シュウは目頭を押さえつつ熱病患者の様な苦悶の表情を浮かべ唸る。
なぜこんな事態になっているかを検討するために時間を振り返り始めた。

      ●

「さて、俺らは何故魔術を行使できるかという初歩的な問題だが…ポリアンナ言ってみろ。」
「は、はひっ!」
五六人ほど入ればいっぱいいっぱいな小部屋の中に並べられた重厚な木製の机が並ぶ。
机には四人の少年少女が腰をかけていた。
シュウは鋭い視線を長い金髪を持ったその内一人の少女に向けた。
少女はおずおずと立ち上がり、
「えっとえっと、特殊な血統を継いでいるから…ですわ。」
「…そうだ。魔術の素質は先天的なものだ。魔術師の家系でもない一般人が使いたいな、と思おうと100%無理だ。」
シュウはくるりと振り返り黒板に向く。
白墨を手にし、簡易的な木を描きクリスマスツリーの様に小さな丸を五つ飾る。
「魔術が魔術と呼ばれる所以、それは在る物に強制的な揺さぶりを掛け自由に異変を起こすことからそう言われる。」
一つの小さな丸に矢印を伸ばし、
「世界は可能性に満ちてる。燃える可能性、凍る可能性、爆発する可能性、再生する可能性、滅ぶ可能性…まだまだ沢山ある。」
各個丸に『燃』『凍』『爆』『再生』と書き綴り、新たな小さい丸を書きなぐる。
「その小さな、だが目に現れない弱い可能性を掻き集め、具現化させる。それが俺たち魔術師の能力だ。」
木の外部に小さな丸を新たに記し、その丸から木へと矢印を描く。
『燃』と描かれた丸に矢印は集中しシュウは炎の絵で木を包む。
「この可能性を感じるのには各人適正がある。これは性格に起因する。積極的な性格ならば攻撃的な可能性を感じやすいし、博愛的な性格ならば医療的な可能性を感じやすかったりする。だからだな…」

シュウは白墨を置き、マントの様に羽織った深紅の教員用ローブの裾で指に付いた粉を拭く。
再び生徒のほうへ向き直り、
「自分の得意分野を早めに理解し、伸ばすことが重要だ。これはまた後に教えるが、可能性を集め、具現化するに至るスイッチとなるのが呪文だ。これは詠唱者の集中の妨げにならなければどんな言葉でも良い。これも自分に合ったものを考えておけよ。」
分かったか?と言おうとしたシュウは口を閉ざした。
教室の扉を軽くノックする音が聞こえたからだ。

「マスター?授業中失礼っス。お義母様がお呼びっスよ。至急来い、って言ってたっス。」
申し訳ない様に小さな軋んだ音を立てつつ開けられた扉から小麦色の肌をした銀髪の少女が顔を出す。
シュウの使い魔、黒ウサギのインレだった。
黒いタートルネックに下はスパッツ。長い黒靴下に白黒のバッシュを履いている元気の塊のようなオーラを漂わせた少女。
「母さ…学園長が?」
シュウは眉間に皺を寄せ疑問を口にする。
暫く硬直し、目を閉じた。そしてふるふると震えだす。
「嫌な予感が…そこはかとなくあり申さんことものぐるほしけれ。」
「マスター!お気確かにっス!」
シュウに駆け寄ったインレが袖を掴み揺する。
眼は虚ろで首が据わっていない赤ん坊の様に力なく項垂れているシュウの首ががくがくと揺れた。
その光景を黙って(というか口を開け唖然)見守る生徒たち。
「とりあえず行った方が良いっスよ!なんせ『至急』っス!」
「む、『至急』か…。」
両眼に精彩と鋭さが戻るシュウ。
「今日は復活早いっスね。お帰りっス。」
「ただいま。では、そういう事だお前達。すまないが自習していてくれ。インレ、後は頼んだぞ。」
「がってんで!行ってらっしゃいっス!」
軍隊の様だがどこか子供さが残る敬礼をするインレ。
シュウはローブを脱ぎ教壇に設置されたイスに掛け、黒ネクタイの位置を直す。
「『至急』の事態…か…。」
シュウは固唾を飲み込みどこか痛いような表情を浮かべる。
目を閉じ深く考える仕草。ふっ、と息を吐き眼を開く。
覚悟を決めた目だった。

「遅刻したら何をされるか。…行ってくる。」

      ●

「バジリコックの退治を命ずる!」
彩光の取れた大理石の広間。
薄い灰色を宿す石製の部屋扉には『えんちょうしつ』とカラフル+ポップ調のプレートがかかっている。
命令を発するのは小柄な人間だった。
眼はやや吊りあがりどこか楽しそうな表情を浮かべているが別に楽しいというワケではない。この顔が生まれつきだった。
ゴシックな服に身を包んでいるのは十代後半ほどの若い少女だった。
鴉の濡れ羽色の髪は両サイドで括られ腰まで長く伸ばされている。
その少女は体をすっぽりと覆うほど大きな皮椅子に腰掛ていた。
その目線の先には二人の男女が居る。
シュウとベアトリクスだ。

スーツに身を包んだ男、シュウが口を開く。
「学園長…。」
「お母さん、と愛を込めて呼ぶんじゃ!」
「お、お母さん…」
「うむ!」
シュウは横でにやにやと気持ち悪い笑みをしているベアトリクスを睨みつつ言った。
「執行部でも無い俺がなぜ怪物退治など?」
「先日の誘拐事件の罰、じゃなー。一刻も早く助けたいのは分かるが、下手をしたら生徒の身が危ないじゃろうが。」
魔法少女(実際魔法少女なのだが)のようなごたごたと装飾が付いたステッキでぽんぽんと手の平を叩きつつ、
「事態は良いほうに転がったが、もし悪いほうだったら?生徒は死んでいたかもしれんのじゃぞ?」
「…………。」
シュウは目を閉じ、黙して聞き入る。ベアトリクスも真顔で園長を見つめる。
「伊達に会議はしておらん。それに勝手に行動するものが居れば規律が乱れる。」
じゃが、と少女は続ける。
「その気持ち、解らんでもない。妾もお前…シュウが攫われたら、居ても立っても居られないじゃろう。まぁ、攫われる様には教育しておらんがの。」
かかか、と口を開け笑う園長。
イスから降りてシュウの前にぺたぺたと緊張感の無い足音で歩み寄る。
少女の背はシュウの胸ほどの高さでかなり背が小さいことが伺うえた。

「偉いぞ。シュウ。」
少女は背伸びをし爪先立ちで立ちつつ、シュウの頭を危なっかしく撫でる。
シュウは顔を真っ赤に染めてそっぽを向いた。
「じゃが規律は規律。泣いて馬謖を斬る、そのための罰じゃ。」
シュウは首を縦に振り、肯定の意を表す。

「ベアトリクスもベアトリクスじゃ!」
くるりと少女は長身の女性に振り向き睨む。
突然の事にシュウを見つめほくそえんでいたベアトリクスは眼を白黒させ、狼狽する。
「シュウに掴みかかり作業の邪魔をしたと報告が入っておる!討伐隊のお前が荒らしてどうするんじゃ!」
「あうあうあう…」
いつも気丈な態度で男勝りなベアトリクスが言葉を失い項垂れている。
ベアトリクスの半分ほどの身長の園長が両手を腰に宛がい説教している。
そんな不思議な光景を仕返しとばかりにシュウは笑みを浮かべつつ眺めていた。

      ●

意識を再び現代に戻す。
「あの時の仕返しか…つーか、俺は仕返しの仕返しをされている訳か…くそっ!」
「マママママママザコン~♪」
「うっせぇ!!お前もバジリコックをさっさと探せ!!」

バジリコック。正式名バジリスク。
トカゲ亜目バジリスク科。
小さいものでも全長20メートル、大きなものは小山ほどのものが観測されている。
トカゲをそのまま巨大にした風体だが特筆すべきはその猛毒性。
前足後ろ足の爪から分泌される毒は触れるだけで皮膚から体内浸透し死に至るという。
まず常人では相手にすらならないだろう。
爬虫類の王とも呼ばれるバジリコック。
普段は人が立ち寄らない砂漠地帯に住んでいるのだが時折人里に下りてくるのだ。
その度にオルムズド大学園に依頼が舞い降り、魔術師はボランティアとして討伐する。
他にも厄介な事態には魔術師に応援依頼が来る事が頻繁にあるのだが、それはまた別の話。

「って言ってもよぉ~」
ベアトリクスが小枝を振りつつ詰まらなさそうに抗議する。
「私の魔術で焼き払っちゃうか、お前の魔術で消し飛ばしちまえば視界が良くなって良いじゃんよ?」
「駄目なの。遺跡は大切だから傷つけちゃめーなの。」

遺跡は在るだけで良いのだ。
存在することに価値があるからだ。
古いものは希少で存在することだけで十分なのだ。
そんな遺跡になりたい、とシュウは良く分からないことを考えつつ古代人が舗装した石道を歩いていた。

「第一、奴はデカいんだよ。遠目にでも解るはずだ。それを退治ならいざ知らず、捜索する為に破壊したなんてのはだな――」
シュウは首だけ振り返り、後ろを歩いているベアトリクスに顔を向ける。
当の彼女の顔は勉強をやれと親に言われた子供の様に不貞腐れていた。
「だってよ、ここら辺をごっそり焦土にしちゃえばいつの間に倒してたりとかさ?こう、ゴォーって」
彼女が手を横の壁に翳すと綺麗に積み上げられた石の壁の一点が赤く光り、膨れ上がったかと思えばとろとろと溶けていった。
げっ、とベアトリクスは顔を引きつらせて呻き、
「いや、今魔術使う気はなくてだな、こう若きパトスが迸っちまったと言うか…」
ちろちろと残った火を驚愕の目で見つめているシュウに告げる。
怒るだろうな、と予測していたベアトリクスは疑問顔で見返す。

「落ち着いて聞けよ、ベアトリクス。」
シュウは右手の手の平をこちらに翳し静止のジェスチャー、もう片方の手は人差し指を口に当て、黙れの意。
ベアトリクスが再び疑問に思い、聞き返そうとしたとき、思わぬ方向に答えを発見した。
溶解した石壁の向こうからフシュルルルルと沸騰したやかんから蒸気が吹き出るような音が断続的にする。
定期的な音と共にこれまた律儀に火炎がたなびく。
穴から覘くは巨大なこげ茶色の爬虫類。目を閉じた顔はおそらく寝ているのだろう。

「一旦逃げるぞ!」
くるりとシュウは背を向け、恐ろしい速さで逃げていく。
ベアトリクスもハッと我に返り叫ぶ。
「お、置いてくんじゃねぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!」
「ぎゃおおぉぉぉおああううう!!」
彼女の叫び声が響いた一拍後、その後方には高さ十メートルはゆうにある巨大爬虫類が上体を反らし、天へと咆哮を突く。
「バッカ!起きただろうが!」
「知るかぁあ裏切り者ぉ!!」
「うぎゅるるるぉ!!」

シュウの後ろに半泣きで走り寄ってくるベアトリクス。
その後ろに向こう側の景色の色がほんのりと伺える薄い皮膜が付いた翼をはためかせ、石畳を踏み砕きつつ追跡してくる爬虫類王バジリコック。

前代未聞の追いかけっこが今開幕する。





▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

【あとがき】

雪都(以下、雪):また別の話が始まりましたね。
舞鬼(以下、舞):あたしの話がね!
雪:ちげーよwww
舞:えっ!?
雪:何その顔!?今気づいたの!?
舞:実は園長はあたし!
雪:子持ちかよ!?
舞:…しかもつーちゃんとの子だよ?
つらら(以下、つ):何を言っている阿呆。私はコウノトリには頼んで無いぞ?
雪:ピュアだ…
舞:ピュアだね…
つ:ん?どうかしたか?
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テーマ:オリジナル作品 - ジャンル:小説・文学
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おぉ ららさん おしさしぶりです
 
濃いって学園長?ww
名前を出す頃には描こうかな。

インレはもうスパッツ決定で(ひ

- from 雪都 -

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また濃いキャラがでてきたのぅ…
ぜひとも絵にしてほしいところ
しかし…
インレはもうスパッツ決定なんだ…

- from らら -

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