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覇道高校、新撰組! 最終話 
2006.06.28.Wed / 05:11 
早朝、ホームルームにもまだ遠い時間、部屋の一室に二人の男女が居た。
教室が二つほど繋がった場所で、薄暗く空気が何処か湿っぽい。
開け放たれた窓からはランニングしている運動部の掛け声が聞こえた。
空きが目立つ書架の乱立する中、向かい合った豪勢なソファがあり、それに腰を下ろしている男女も自然と向き合う形になる。
間はガラス張りの机があり、その上には一冊の大型本が置かれていた。
「これ、ですね。」
幼さが残る顔立ちの青年、八神・命が手で本を示す。
「こここここ、これですっ!まさしくセス・ビショップ抜書ですっ!」
黒ぶちの眼鏡を掛けた図書委員長、本多・菜月が絶叫する。
先ほどから微細に振動を繰り返していた菜月の眼鏡は既にずれている。
「ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!」
本を大事そうに抱え、何度も何度も深いお辞儀を繰り返される。
三年生に頭を下げられる事になんだか心持なくなった八神はそれを静止。
十分後やっと冷静さを取り戻した菜月が疑問を口にする。

「あの…本は…いったい誰が…あ、いえ!犯人探しではないんです!別に咎めるつもりも更々無いですけど!…ただ個人的な興味でです。」
菜月は終わりに近づくにつれ声が小さくなり、言い終わる同時にすとんとソファに腰を下ろした。
別に黒いものは感じられなかったので八神は、
「持ち去った犯人は、この『本』です。」
「はぇっ!?」
理解できないのも無理は無い。少なくとも目で見るまでは。
「持ち去った…というのは正確ではありませんね。出て行った、が正しいかもしれません。」
「…というと?」
「この本がどんなものかは知ってますよね?」
「はい…とても力がある危険な魔道書です。」
『本』がテーブルの上で少し動いたが、菜月は感じなかったようだ。
それを八神は目の端に映しつつ、
「なら人を操るぐらいは簡単ですよね?それで自ら出て行ったとしたら?」
「そんな…!」
菜月の顔の色が青くなる。
何も知らない人が聞けば頭ごなしに否定するだろう。それをしないのは委員長が『本』の恐ろしさを知っているからで、
「でも何で…?」
「これは僕の憶測ですが…」
八神は視線を菜月から外し、そのままゆっくりと『本』へと移す。
「…隔離されたのが寂しかったから、じゃないでしょうか?」
『…………。』
喋れる筈の『本』が何も言わないので、八神はそのまま続けた。
「危険だから、と書庫の奥不覚に押し込まれてたんですよね?…知ってますか?この『本』には意思があるんです。もし貴女が何もしていないのに隔離されたらどうでしょう?」
「でも、その『本』は危険だからで!別に私とは…!」
「人だって危険です。何をするか解らない。その点では変わりないですよ。」
「……。」
「ですが閉じ込められた。同じ本なのに違う扱い。それが…我慢出来なかったんじゃないでしょうか。」
「…本当なんですか?」

その質問に八神は答えられなかった。それは答えるべき者が答えたからで、
『本当。』
菜月が目を見開く。喋り出したのが本ならば仕方有るまい。
『わたし。寂しかった。このまま。忘れられるの。死ぬと同じ。』
たどたどしい言葉が聞こえる。それは耳に響くのではなく、心に直接響く声。
『そして。傷つけた。いっぱい。いっぱい。』
そのまま沈黙が流れる。長いような短いような時が過ぎ、
『わたし。危険。わがまま。……いわない。』


     ■     ■     ■


教室。窓際の後方、ベストポジションの一つの机が八神の席である。
八神は当然の様に着席して片手で頬杖を付きつつ外を眺めている。
「おっす、八神。今日は早いんだな。」
「八神くん、おはよ。」
「…あぁ、おはよう。」
朝の部活が終わったのか、クラスメイトがちらほらと顔を出す。
時刻は八時、朝のホームルーム迄まだ時間がある。
帰宅部の八神にとって朝練などはまったく縁がないのでこの時間帯に来るのは初めてかもしれない。
まだ空席だらけの教室に朝日が眩しく射す。見慣れた教室の筈だが、どこか違う教室に迷い込んだような錯覚に陥る。
開け放たれた窓からまだ少し冷気が残る風が入ってきた。
涼やかで気持ちが良い風だったが、心には蟠りが。八神の気分は消沈していた。
(あれで…良かったのかな。)

先ほどの図書室での出来事を思い出す。
あの後、図書委員長の菜月はぐったりと肩を落とし静かに涙を流していた。
掛ける声も見つからず、かと言ってその場に居る事も躊躇われたので一言告げて八神は退室。
そのまま、もやもやした気持ちは晴れずにこのとおり教室に居る。
「はぁ…」
何度目のため息だろうか。数えるのも億劫だがかなりしているのではないか。
なにやら長い時間思案していたのか、教室の席は殆ど埋まっていた。

時計は八時半を差す。ホームルームの時間だ。
遠方から聞こえる巨大な鐘の音が空に響く。
この澄んだ音が三度響き終われば遅刻となり―――
「ぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
廊下側から呻き声とともに地響きがする。
「まさか…」
そのまさかだった。
三度目の鐘の音の余韻と共に、
「ボクは絶対にあきらめないぃぃぃぃぃいい!」
「…まずいな。」
「くっ、川原めっ!!我輩を踏み台にするとはっ!」
八神にとって馴染みの声が聞こえた。
騒がしいなぁ、と思ったが圧倒的な確立でいつもはその騒がしい一味に加わっている事を思い出し、八神はこれからもう少し早く家を出ようと決心したのだった。


「はぁーい、みなさんおはようございまーす♪」
ホームルームも終わろうかという時間、教室の前のドアがからからと開けられた。
タイトスーツを着込んだ妙齢の女性、このクラスの先生だ。
「ちーちゃん、遅刻だぞー」
鮎――なんとか間に合った――は猛ダッシュの疲れが取れないのか肩を上下し、息を整えつつ言った。
剣信――なんとか間に合った――は何やら心配そうな顔でこっちと左蔵の方を見てくる。
左蔵――だめだった――と言えばいつ巻いたのか白い包帯で片腕がぐるぐる巻きにされ、どこから持ってきたのか点滴セットが机の周囲に置かれていた。
先ほどの踏み台がどうのという台詞が関係しているのだろうが特には気にしないことにする。だって左蔵だし。

そうだそうだー、と先生は他の生徒にも非難された。
ちーちゃんの愛称で呼ばれている先生が子供っぽい顔を顰めて、
「ちーちゃんって呼ばないでください!千の畝と書いて『ちせ』っていう可愛い名前があるんですよ!」
そんな子供っぽい顔に反比例するモデルも驚愕理想郷な体をしたちーちゃ――千畝先生が主張する。
「それにせんせー遅刻じゃないです。」
えっへん、と言いつつ得意げな顔で胸を反らす。
「先生、実はさっきから教壇に居ましたもん。」
「「嘘つくなー!!!」」
「せんせーね、信じる事は大事だと思うの…。ってことでホームルームはじめましょ♪」
「大人ってズルイ…」
「いや、今ドアから入ってきたのにさっきから居たって言われてもな…」
そんな呟きが起こっていようとも千畝先生は黒板に向かい何か文字を書いていた。
批判を聞こうともしないで――恐らく聞こえていないのだろうだが――鼻歌交じりに続ける。

こんな光景を見て、いまいち乗気にならなかった八神は顔を伏せ、寝る体勢へと移行する。
沈んだ気持ちで何もやる気が起きなかったからだ。
「はーい、みんなー、注目ー」
再びドアがからからと開いた音がした。それと同時、周囲から感嘆やら口笛、ため息など聞こえる。
(どうでもいいか…)
「えっとね、転入生を紹介します。」
(…四月に始業式が始まってから一ヶ月も経ってないのに?)
予想外のイベントに八神は訝しげに顔をあげた。
視線を前に移せば、教壇には千畝先生の横に長身の女性が立っている。
千畝先生もそれなりに高い身長だが、彼女よりもその転入生のほうが幾分か高い。
寸法が合ってないのか、明らかにきつそうなうちの学校の制服を着ていた。
そのためか、それとも極度の緊張か、その転入生はもじもじして顔を地面へと伏せている。
「さ、自己紹介、して?」
千畝先生が小学校の児童を諭すように言う。ちなみに悪意は無い。
こくん、とその転入生は頷き、おずおずと顔を上げる。
黒髪のショートヘアだが前髪が長く、眼が殆ど隠れている。
だが―――
「び、美形ーッ!」
「いやんかわいいー♪」
「俺は今からこの子のファンクラブを結成する!」
なとどクラスが一同に盛り上がるほどの美人だった。

祭りと化した教室に慄いたのか、転入生はびくりと震える。
だが崖っぷちで耐えたようでおずおずと黒板へと向かい、名前を書いていった。

『ナコト=ミコテン=ルルイエ』

そう黒板に記されていた。
転入生は白墨を置いてから緊張を孕んだ仕草で語りかける。
「私。ナコト=ミコテン=ルルイエ。よろしく。ください。」
拙い日本語で喋り、お辞儀をするナコト。
「ナ・コ・ト!ナ・コ・ト!」
長身な割りに小動物的な仕草に男子や女子からもウケは良い様だ。早くもナコトコールが起こっている。
「ナコトさんはね、海外からお勉強にやって来たのよ。みんな、仲良くしてね。」
「「はーい!」」
クラス一同手を高らかに挙げる。
そんな光景を見つつ八神はひっかかるものを感じ、一人思案に暮れる。
(ナコト…ミコ…テン…ルルイエ…)
どこかで聞いたような単語に記憶を総動員するも、決定的な候補にあがる物はない
八神は首をひねっていると、
「じゃあ、ナコトさんの席は…」
千畝先生がクラスを見回す。すると横に居たナコトが、
「ヤガミの。…となり。良い。」
(そうかヤガミ…って僕!?)
一瞬でクラスが静けさに包まれる。
生徒全員がナコトとこっちを交互に見てくる。
(こっち見んな!)
そう思っていると、ナコトももじもじした様子で視線を送ってくる。
「うん、そうね。八神クンの隣空いてるわね。じゃ、ナコトさんはそこにね。」
「はい。わかったの。」
高い身長を頼りない足取りでふらふらと揺らしつつ歩くナコト。
だがコンパスが長いのですぐに八神の横、開いた空間に到着する。
「あ、机持ってこないと!せんせーうっかり!」
千畝先生は手の平でぺちんと額を叩く。
「えっとえっと、じゃあせんせーが取って来るからちょっと待って――」
「いい。ヤガミ。ずれて。」
言うや否や、ナコトはそのまま八神の椅子の少し空いた部分に腰を下ろそうとする。
はっ、と気づき周囲を見回せば冷たい視線が刺さっている。中には殺意すら感じるものも。
「プレイボーイ八神め」
「やっぱり八神君って…」
「…コロスコロスコロスコロス」
その中には鮎も混じっていて、中指だけ上げた手でこちらを睨んでいる。
ナコトの腰に押されるように八神は半分椅子を追い出され、その空いた場所に彼女は座った。
肩が触れ、体温も吐息も感じる近距離でナコトの顔が向けられる。
「ごめん。私。今度は。守る。から。」
その言葉に八神の疑問のパズルが一気に解けた。
解けたと同時、八神は教室の後ろドアから一気に飛び出した。


     ■     ■     ■


廊下。延々と続いているのではないかと思えるほどの場所を八神は走っていた。
「まさか…まさか…」
足を挫きながら、転びそうになりながらも足を止めることも無く駆ける。
授業が始まった時間帯なので人気は無い。
猛スピードで記憶を頼りに奔り続ける。
(3-G…3-G…あった!)
黒塗りのプレートに白く3-Gと書かれた教室の前に差し掛かりドアをノックしようとした時、
「八神…さん?」
後ろから声が掛けられる。それは目当ての人であり、
「菜月先輩!?」
眼を真っ赤に晴らした女性が居た。今朝会った黒ぶちの眼鏡がよく似合う図書委員長である。
片手には英語の教科書が抱えられていた。恐らく廊下に置かれているロッカーから出したのだろう。
「八神さん、遅刻ですよ?…って私も遅刻なんですけどね。えへへ。」
女性はくりくりとした大きい目を細めつつ照れ笑いを浮かべる。
「そ、そんなことより!」
八神は未だ混乱の最中で舌が上手く回らないが、そのまま菜月に問い詰める。
「なんであの『本』がうちのクラスに編入なんですか!?」

菜月は眼をぱちくりとしてから、やがて思い当たったのか教科書を持ったままポンと手を叩き、
「閉じ込めるのは…やはり可哀想なので…。」
「そ、それは解りますが…!」
「ハサミは確かに危険です。ですが、恐れていては、実はそれがとても素敵なものだとは気づきません…。ですから大事に仕舞うよりも、もっとみんなに知ってもらうべきかな、と思いまして。」
八神は無言で菜月を見詰める。
「でも、やはり特定の人にとってはハサミはとても凶悪な武器にもなります。あの子の元が元だけに、力を秘密に出来るのならば…という条件でなら、自由にしてあげても良いんじゃないかな、って。」
菜月はそこで思い出し笑いをする。先ほどの沈んでいた彼女とは別人のように優しい笑顔で、
「それにですね?自由にしていいよ、って言ったらなんと言ったと思います?『私。八神の。力になりたい。』って言ったんですよ。」
何があったのかは解りませんけどあの子なりに考えた事なので、私もちょっと頑張っちゃいました。と彼女はくすくすと笑う。
「因みに名前はですね、セス・ビショップ抜書を形成する『ナコト写本』からナコト、『ネクロノミコン』からミコ、『屍食教典儀』からテン、『ルルイエ異本』からルルイエ。一つずつ取ってみました♪」
えっへん、と胸を反らし自信満々な表情の菜月。
「安直ですね…」
「えぇぇぇええええ!!」
授業中の廊下に叫び声が染み渡った。
二人して先生に怒られたのは言うまでも無い。


     ■     ■     ■


「はぁ…」
「はぁ…」
昼休みの生徒会屋敷、畳が敷き詰められている修練場に二つのため息が生まれた。
一人は肩を落とした八神、もう一人は疲労困憊なつららだ。
二組の視線は上座の位置に仁王立ちする舞鬼と、その前に蹲る二人の男女に向けられている。
「是非!新撰組に入れてください!もうガキんちょなんて言いません!」
男は焔色の長髪で目つきは険しい。いかにも不良の顔つきだが今は引き締められ真剣そのものだった。
「新撰組。ください。」
片言の日本語で喋る女は黒髪のショートヘアで前髪は眼が隠れるほど長い。
なにやらそれを聞いた舞鬼は眼を堅く閉じ、うんうんと首を深く上下に振る。
「言いたい事はわかっちゃったよ!つまり…下克上!」
「違ぁああああああう!!それはコイツの言葉が悪いんだぁ!」
赤髪の男、クトゥグアがナコトを指差し半狂乱で叫ぶ。
指されたナコトは何が間違ったのか解らない顔できょとんとしている。
かれこれこんなやりとりが30分は続いていたりする。
(ナコトは新撰組入れてください、って言いたいんだろうけど上手く言えないみたいだな…。にしても…)
八神は舞鬼をじっと見詰める。太陽の様な笑顔にはいつもと違う色が混じっており、
(会長もわかってるのだろうに意地悪な人だなぁ…。きっと凄い嬉しいんだろうなぁ…。)
「おい、覇道、そろそろ決めてやれ。さすがに哀れにになってきた…。」
座っていたつららが時計を示し告げる。そろそろ昼休みが終わりそうな時間だ。
「あはは、ごめんね。…いいよ。二人の入隊を、許可しよー!!」
「ホントか!?イィィィヤッホウ!!姐さんのために働きますよぉ!!」
「…やった。」
クトゥグアは片手を握り天に翳し、きらきらとした眼でつららを見据える。
ナコトも手をきゅっと握り、腰の辺りで小さくガッツポーズを取っていた。

八神は見知らぬ男について先ほどつらら先輩から聞いたところ、彼は火のなんたら、で見回り中に少々嗜めたら気に入られたと言っていた。
マゾなんだろうか、と思いつつ八神は尋常じゃない喜び方をしているクトゥグアに冷めた視線を送る。

なにはともあれ、これで新撰組には新たに二人の隊員が加わった。
二人とも人間では無いと言う事に一抹の不安を覚えるが、会長の決定なら仕方ない。
つらら先輩も「やはりこうなったか…」と言いたげに眉間に手の平を当てうんうん唸っている。

その後、聞いた話によるとハスターは動き回りたいから体育教師に(よくなれたと思う)。
イタクァは図書館の司書をすると言っていた。
二人とも暇なのだろう。「仕方ないからオレらも貢献してやるか」みたいな事を言っていたが満更では無さそうだった。

「…にぎやかになったな、八神。」
「あはは、そうですね。にぎやか過ぎるほどかも。」
いつの間にか笑顔のつらら先輩は湯のみを二つ持っていて、一つを勧めてくる。
八神は礼を良い、ほどよい暖かさの緑茶を咽に通す。
二人は前方で手をつなぎ回転している舞鬼、クトゥグア、ナコトを見つつ茶を啜る。
八神は視線を感じ、ふと横を見た。こちらを向くつららの表情からは笑みが消えていて、
「…八神は…これからも続けてくれるのか?」
「…当然です。辞めろと言われない限り。それに…」
「それに?」
「つらら先輩だけ、こんな楽しい仕事をやるのはずるいですから。僕にもやらせてください。」
八神は淀みなく、素直な気持ちでそう告げた。
それを聞いたつららは「そうか」と呟き顔を伏せ、深く一呼吸。
「ありがとう…八神。」
そして、彼女は微笑んだ。
いつか見た悲しい笑顔ではない。はにかんだような、照れを含む少女の笑顔。

八神は思った。
僕はこの笑顔が見れるならば、いつまでも頑張れると。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ △▼△▼△▼△▼△▼△▼

【あとがき】

↓学生簿更新
http://yukito25.blog31.fc2.com/blog-entry-158.html


雪都「はぁ…終わった。というより終わらせた。」
つらら「私が出たじゃないか」
雪「うん、その日暮らしにストーリー決めてるからね。」
つ「…なんて行き当たりばったりなんだ。」
雪「初期からそうだったしなぁ…。今最初の見るともうひぃ!って感じだよ。設定とかもうね。」
つ「一人称は変わる、口調も変わる…だな。」
雪「うん、小説ってどう書くのかなーって手探りでやってたからね…。」
つ「処女作というわけか」
雪「乙女がそんな…!」
つ「…っ!なななな何を言っている!」
雪「まぁ、処女作以前。ホントは落書きの気持ちだったんだ。でも、書いてるうちにけっこう愛着が沸くもんでね。」
つ「……ほう。」
雪「今ではもっとちゃんと考えて、ゆっくり書けばもうすこしマシなものが書けたんじゃないかな、って思ってる。」
つ「そうか。」
雪「いや、悪いね。…ちょっと甘く見てたわ。」
つ「……一つ、学んだな。」
雪「そうだねぇ…。うん…もっと頑張るよ。今はコツを掴むためがむしゃらに書くだろうけど……」
つ「あぁ。」
雪「いつか、ちゃんとした形にするよ。してみせる。」
つ「待ってるぞ。」
雪「…じゃ、またいつかね。」
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学
覇道高校、新撰組! 第十九幕  
2006.06.27.Tue / 01:22 
「なん…で…?」
鮎はふらふらとした足取り近づく。
糸の切れた操り人形の様に八神は動かない。
「何で死んじゃったんだよ!」
「だっから、誰かが犠牲になんないと助かんなかったんだろ!」
「じゃあボクが!…あれ?」
八神は上半身だけ起こし、右腕を擦っている。
顔には苦悶の表情が張り付いていた。
大きく深呼吸し、再び八神は続ける。
「鮎には任せらんないってーの。本当は、一か八かだったしさ。」
疲労が残っているのか、八神は一旦立ち上がり、がくりと膝を折り中腰になる。
そのまま崩れそうだった所を鮎の後方から剣信が飛び出し肩を貸し支えた。
「あ…りがと、剣信。」
「…気にするな。」
体に寄り添うように体重を預ける八神。
剣信はほっとした顔で優しい声を出す。言葉は少ないが思いやりが十分伝わる。そんな声。

「……まさかアイツとやりあって勝つとはね。感服だよ、ミコト。」
ハスターは少女をお姫様抱っこで抱え、ふわりと空中に浮いていた。
「それ…なんて書いてあるんだい?」
両手が塞がっているので首を回し、何かを指すような仕草。
鮎は何の事か解らなかったが、八神がそれに反応した事で、問われたのが彼だと解る。
八神は剣信に頼み、ゆるりとその場を半反転。背中には青白い文字でこう書かれている。

《ライフ あと1機》

「これは…っとさっきので一個減ったけど『あと一回死ねるよ』って意味が書いてあるんだ。ハスターが言ってたろ?黒い雪は一つイノチを持っていくまでは帰らないって。だから―――」
何やら八神がハスターに向かい説明しているが鮎はまったく耳に入らない。ただ唖然とするだけだ。
「太古、文字は50ほどしか無くてね。それゆえにバルザイはあまり力が無かった。でも、今は違うようだね。君らとバルザイが組めば、それこそなんでも出来そうだ。さっきは馬鹿にして悪かったね、バルザイ。」
ハスターは少女を抱えたまま器用に肩を竦める。
八神が下げている肉厚の黒刀の表面に紅の光がじわりと宿り、そして消えた。
「ハスター、その女の子は…」
「あぁ、生きてるよ。君が助けたんだ。」
「良かった…。後やることは…」
八神はありがとう、と支えていてくれた剣信に告げ、飛び込み台の端に落ちていた『本』、セス・ビショップ抜書をゆっくりと持ち上げ――思い切り表紙を叩いた。
鞭を打ったような乾いた音が鳴り響く。
鮎は何をしたのか解らずにとにしてるの?と言おうと口を開きかけたが、それは阻まれる事となる。
『…痛いです。』

「え?だれ?剣信?」
きょろきょろと鮎は顔を巡らせ、剣信へと問いかける。
だが剣信は被りを振る。
女性の声で違うと解ってはいたが聞いてみたのだ。、ハスターでもは無く、黒魔術部の少女は未だ気絶しているので違う。
当然自分は声を出していなかったし、八神が叩いておきながら痛い、と言うのは変だ。それとも叩いた手が痛いのだろうか。
「こいつが言ったんだ。『本』を持ち出した犯人であり、全ての元凶。」
八神が大型の『本』を片手で持ち上げ、ゆさゆさと振る。
『頭。クラクラです。やめて…。』

耳を澄ませば確かに『本』から声は聞こえていた。
八神はばしばしと表紙を叩き続ける。
「鮎、知ってたよな?あの雪が水に弱いって。」
「う、うん。言われるまでは忘れてたけど、本で読んだよ。でも、なんで?」
「有名なオカルトの本に載っている事を黒魔術部の子が知らないなんて変じゃないか?それに知ってたら使わないよな。こんな水がある場所で。」
「たまたま読んでなかった…とかじゃないの?」
鮎の疑問に八神は首を振り否定を表す。
「たとえ読んでなかったとしても…彼女は笑ったんだ、喚び出した後にね。これから何が起こるか解って居る、そんな風に。」
八神は本を脇に抱え、そのまま続ける。
「黒い雪を知っていたのにリスクを知らないはずが無い。」
「じゃあ…」
「笑えるのはリスクを受けても平気な奴…この『本』だ。大方、あの女の子を操っていたんだろう。」

八神がしゃべり終ると静寂が訪れる。
風にみなもが揺れる音だけが聞こえる。
『ごめん…なさい。ごめん…なさい。』
八神が抱える『本』から女性のすすり泣く声がする。
「ごめん、って人を殺そうとしといてそれだけ!?」
鮎がたまらず声を張り上げた。
親友がぐったりと倒れていたのがまだ目に焼きついている。
結果、永らえたが一つ間違っていれば八神は死んでいただろう。
思わず歩きよっていたのを剣信に掴まれた。
八神も頭を振り、鮎を静止する。
『ごめん…なさい…。ごめんなさい。』
広い広い水面を駆け巡る夜風に乗って、何度も何度も悲痛な言葉が溶ける。
息を呑むほど美しい月が中天に輝いていた。


     ■     ■     ■


深夜、生徒会屋敷。
和風さが漂う棟に囲まれた中庭には大きな火が焚かれており、橙の焔が屋敷に纏う暗い藍を払う。
低い櫓状に組まれた薪が勢い良く燃え、濛々たる灰色の煙は天へと昇る。
焚き火の周囲には物干し竿が設置され、制服が幾つも干されていた。
「にしても…」
すらりとしたスタイルの長身の女性が呟く。
「夜間、プールで泳ぐのは関心しないな。」
「っくしゅ!違いますよつらら先輩!」
首から下をまるごと包み込む、大きな白いタオルを体に巻いた八神が声を荒げる。

あの後、ハスターがおもむろに飛び込み台へと着地。
『本』を抱えた八神、鮎、剣信、鉄の塊同然のハスターと抱えられた少女。
重量がさすがに耐えられなくなったのか台が深くしなり、反動で全員が春先の未だ冷たいプールに叩き込まれたのだ。
そのときの光景をちょうど八神を探していたつららと舞鬼に見つかったのだ。
確かにあれだけ見れば単なるお調子者の集団だろう。
「ということで悪いのはあの甲冑を着込んだ変態です。」
「また変態になってるYO!?」
なにやらハスターが叫んでいるが、つららは眉一つ動かさずに呆れた声で、
「何が『ということ』なのか解らんが、まぁ…無事ならば構わない。」

キャンプファイヤーと呼べなくもない大掛かりな火に新たな薪をくべた左蔵(ちょうど『本』を回収した時刻、海賊船を制圧した様で八神らの様子を見に生徒会屋敷に来ていた)が言う。
「流石、御堂先輩。懐が深い。八神よ、新撰組であるならばかくあらん。」
「はいはい、僕が悪かったですよ…。」
「自白しましたぜ?つーちゃんおやびん。」
いつの間にか八神の傍に居た舞鬼がタオルの裾を捲ろうとしつつ(八神は無言で押さえている)告げ口する。
つららは舞鬼を目で制しつつ、
「川原…と言ったか。お茶でも飲むか?」
「あ、はい…ありがとうございます。」
知らない土地、知らない人に緊張しているのかしおらしい鮎。
鮎も当然プールに浸かり濡れ鼠になったが、今は舞鬼の制服のスペアを着させてもらっている。
少しキツいと漏らしていたが、それを言ったら舞鬼先輩がどう発狂するか解らないから、と緘口令を敷いている。
「橘も飲め。遠慮はするな。」
「…すいません、部長。戴きます。」
剣信は剣道部に入っており、その部長が御堂・つららである。
面識があるゆえか、こちらにはあまり問題はなかった。
左蔵はどこでも自分主義(そういえば『天動説ではない。我輩以外動説だ』と、以前言っていた)だからどうでも良かったりする。
黒魔術部の少女は学校内にある病院へとハスターが搬送した。
別状は無いらしく、暫くすれば元気になるとの事だ。

「して、八神。」
そんなことを考えていると、つららが思い出したように告げる。
「…本当に傷はないのか?」
心配顔で問いかけてくる。まだ知り合って間もないが、この人は本気で心配してくれているのが解る。
「はい。大丈夫ですよ。任務も無事完了です。明日、図書委員会へ掛け合います。」
ぽん、と八神は横に置いた『本』の表紙を触る。
その『本』をつららは一瞥し、また八神へと視線を戻す。
「唯の書物ではないな。恐らく今日起こった一連の事件の大元…と言ったところか。」
「まぁ…そんな感じです。」
「八神…」
侍のような意思が強い相貌が向けられる。
つららはそのまま手を挙げ、
「良くやった…。偉いぞ。」
わしわしと頭を撫でてくる。
つららの顔は笑みにあふれ、鋭かった眼も今は優しげに曲げられている。
「は、恥ずかしいですって!先輩!」

みんなの笑い声が屋敷に響き渡る。
春の夜、そんな事件に幕が下りた。



▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

【あとがき】

雪都「あー、終わりませんでしたよー。どうせ終わりませんよー」
つらら「何を拗ねている…」
雪「このあとエピローグ的な展開なんだけど」
つ「ほう」
雪「すっごく長くなった…いや、長くなってる途中だからここら辺で切った次第」
つ「どれどれ?…捲るのが面倒くさいな。」
雪「長いと読む気うせるしね」
つ「稚拙な文はな」
雪「……まぁ、19話で終わりってのも半端だし、20話目で限よく終わらせたくなったということで、どうでしょう?」
つ「まぁ、仕方ないな。」
雪「ということで次回は淡々と後日談ですがお付き合いいただけると嬉しいです。」
つ「…因みに私は出るのか?」
雪「今のところ出番は無いです。」
つ「…………。」
雪「痛い!痛い!無言でぶたないで!深刻に痛い!」
テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学
覇道高校、新撰組! 第十八幕  
2006.06.25.Sun / 05:13 
八神は足が縺れつんのめる様に倒れた。
黒い雪に全身を包まれ、身動きも呼吸も出来ない。
既に肺腑には酸素など無く、体のありとあらゆる器官から警鐘が鳴り響いている。
(腕突かないと…顔から落ちちゃうな…)
場違いな感傷に浸る。
考える事すら怠慢なのだが、体の防衛本能だろう、腕が咄嗟に前方へと動こうとするがもはや体に積もりに積もった黒き雪が阻み指一本すら曲がらない。
体から一切の力が抜けた。
感覚神経は既に降参したらしく今どんな体制なのかが解らない。
ふわりと浮いた感じがすることだけは辛うじて解る。
ごぼり、と身を包む外殻から音が漏れた。地面にぶつかった音だろうか。
八神は体が次第に冷たくなるのを感じた。
(ごめん…僕…死ぬわ…)
五体を伸ばし、空に昇る感覚に身を任せる。
死の恐怖からか、自然と閉じていた目を見開く。
別に意味は無かった。もし何かが見えたら儲け物だ、ぐらいだった。
(綺麗な月だ…)
眼前には星空が広がっていた。最後にこんな景色を見れて死ぬのも悪くは無い。
大きく深呼吸をし、空の肺に冷たい空気を取り込み――
(息が出来る!?)
八神はがばりと体を起こすが不安定な足場に体がぐるりと回る。
夜空が一回転して、水面へと顔面が思い切り叩きつけられ何か破裂したような音が響く。

「ミコト!だいじょぶ!?」
「掴まれ!」
なんとか地に足を付き立ち上がった。水を纏いつつ顔を上げるとプールサイドからこちらに手を伸ばす鮎と剣信が見えた。
何がなんだか解らなかったが、とりあえず差し伸べられた二つの手に片手ずつ差し伸べると、二人はプールに浸かった体を引き上げてくれた。
「ごほっ…ごほ…僕…生きてる?」
「ボクが聞きたいよ!大丈夫なの!?」
八神は一通り体を見回すが全身がびしょ濡れという以外、外傷は無い。
横隔膜は酸素を貪欲に欲し未だ痙攣を繰り返す。
「こほっ…縺れて…倒れたのが…プールだったのか…」
「なんか、なんかなんか!ミコトが急に黒くなって膨れ上がって!もう解んなくなって!それで、それで!」
「ぁー、頭がジンジンする…ちょっと落ち着いてよ鮎。」
「落ち着いてなんかいられないよっ!」
大声で喚く鮎。プールに浸かって全身から塩素の匂いを漂わせる八神の襟首を掴み高速に揺する。
八神は殺意があるのではとも思えるほど絞めてくる腕にタップをしつつ、
「…でもなんで?」

答えは帰ってこないだろうと思っていた呟きに律儀に返す者が居た。
「狙ったのか、はたまた運が良かったのか…後者だったら大したもんだよ、ミコト?」
先ほど隠れていた更衣室の影から鮮やかな薄緑色の西洋甲冑が現れた。ハスターだった。
がしゃり、がしゃりとプールサイドをゆっくりと歩きつつ、こちらに寄ってくる。
そして吟遊詩人の様に詩の一説を歌う。

  <暗黒のもの>を召還せし者
  凶事あるを肝に銘ずべし
  滅ぶべき敵 流るる水により命護らる  

「<暗黒のもの>ってのがあの黒い雪みたいなもんだよ。呪われた対象は体を包み込まれ、酸素を奪われる。その弱点が…」
「『水の中では呼吸できるのよ』…か。」
八神は先刻、イタクァが最後に呟いた謎の言葉を思い出す。
「そ。奴らは水が嫌いな様でね。その水を浴びると消えてなくなるんだ。」
「あ!ボクそれ本で読んだ気がするよ!オカルトでは有名な話だよね?」
鮎がさっきの動揺は何処へやら。目を爛々と輝かせ話に乗ってくる。
(こいつ、オカルト好きだったのか…)
と八神は親友の知られざる一面をかみ締める。
そんな事を知ってか知らずか、鮎は続ける。
「でも…さっきの詩、続きあるよね?」
ご名答!とハスターは鮎を指差し、
「最後の節はこうだ。」

『喚び出されし暗黒 喚びし者に報いぬ…』

「水を浴びた<暗黒のもの>は…詠唱者へ返っていき、殺すんだ。腹癒せにね。小さい奴だよ、まったく。」
ハスターは両手の手の平を天に掲げる。
「かはっ!!」
飛び込み台のほうから擦れた呻き声が聞こえる。
黒魔術部の少女は既に全身が<暗黒のもの>に包まれ咽を掻き毟っている。
顔面といえば既に黒頭巾を被ったかのようになっている。先ほどの呻きは体内から搾り取られた酸素が漏れた音だろう。
八神を包んでいた物が全部返ったとすると、小柄な少女では数刻と持つまい。
少女の体は可也の量の<暗黒のもの>に包まれて膨れ上がっている。
「あの子の負けだね。ジ・エンドだよ。」
ハスターはまるでニュースキャスターの様に淡々と告げ、
「これで『本』も戻…」
「そこからプールに飛び込めーーーっ!!」
八神の大音声がそれを遮った。
思わぬ行動をされたハスターは多少混乱し、
「あの子はミコトを殺そうとしたんだよ?なのにキミは…」
「早く飛び込めっ!」
八神は耳を貸さずに叫び続ける。
だが少女は既に動いては居ない。黒い雪はまだ積もり続け完全な球となっている。
「遅いよ。あれだけ膨れればニンゲンじゃ身動き一つ出来ないね。気絶、してるんじゃないかな?あのままあとは死ぬだけだよ。」
「なら!ならあんたならなんとか出来るだろ!?あの子を助けられないのかっ!?」
八神はハスターへと険しい剣幕で詰めかかる。襟の一つでもあれば掴んでいるだろう。
だがハスターは冷酷にも吐き捨てる。
「それは無理だよ。呪われた者は決して逃げられない。それはオレにも当てはまる。奴らもあれでいて古代の支配者だからね…。喚び出されたからには一つのイノチは必ず持って行くぞ。」

黒い球体は蠢動を繰り返す。それは咀嚼している様にも見え、酷く禍々しかった。
「ミコト…あの子…死んじゃうっ…」
八神の腕を力強くぎゅっと握る鮎。小さな両手は白く成る程結ばれて震えている。
鮎も怖くて直視できないのだろう堅く目を瞑っていた。
「こんなことする悪い子じゃなかったのに…なんでっ…!」
目の端に雫を浮かべ、頭を振る彼女。

八神はそんな鮎を見て、腰に挿したバルザイの柄をぎゅっと掴んだ。
(目の前で困っている人が居る…)
もう片腕でスラックスのポケットの奥に突っ込んだニトクリスの鏡を力強く掴む。
(何人も、何人もだ…!)
飛び込み台の上に存在する黒い球体となった少女を見据える。
(そして…僕は助ける術を持っている。)
先ほどの自分の体を締め付けられる音が――フラッシュバックだろう――幻聴が聞こえる。
(間違ってないですよね、つらら先輩!!)
幻聴を打ち払う。恐怖は確かにあった。だがこのまま何もしない方が、怖かった。

「鮎、剣信…」
八神はゆっくりと口を開く。ガクガクと震える体を抱きしめ、気合を込めて言葉を作る。
赤い目で見上げてくる鮎。多分察してくれているのだろう、沈痛な顔をした剣信。
「すぐ…終わらせてくる。あの子を助けて、終わりにする。」
「…えっ?」
「命…!」

はにかんだ表情をしているのだろう。それを自覚し、気合を入れる。
八神はすっ、と鏡を掲げた左手を翳した。

"汝とは解り合えぬ。――逆転世界"

女性の声が聞こえた途端、スピーカーから流れるノイズの様な音が一瞬辺りに響く。
ぶつっ、と言った音が途切れると、鮎が握っていた筈の八神の腕は無く、代わりに気絶した少女がプールサイドに横たわっている。
「えっ?…嘘。嘘、だよね?」
鮎は瞬き一つ無く、
「ミコト?隠れてるんだよね?冗談…だよね?いつもみたいにさ、ボクを驚かせるんでしょ?」
剣信は静かに目を瞑り、口を閉ざす。
鮎は震える声で、
「ねぇ…やだよ…嘘って言ってよ…ミコト…ミコトぉー!!」
凝縮の感覚が早くなり、心臓の様に蠢く、<暗黒のもの>に―――叫んだ。


      ■        ■        ■


「はぁ…」
春の夜風は未だ冷たく、火照る肌を優しく撫でる。
縁側に、もの鬱気に月を見上げる女性が座っていた。つららだ。
「はぁ…」
「二十四回目」
傍から見れば深窓の令嬢にも見えなくも無い、メランコリックを漂わせるつららの横には舞鬼が寄り添っている。
手にはカウンターを持ち、かしゃりとボタンを押す。数字が刻まれたバレルが回転し、『0024』を小窓に表示する。
つららはその光景を横目で見据え、ゆったりと手をカウンターへと伸ばし――ボタンを連打する。
ガシガシガシガシ!
「ああーっ!あああああーっ!」
この世の終わりとでもそうは驚きそうも無いテンションで舞鬼が叫ぶ。
だが、けろりとした表情に戻り、
「まぁ、落ち着けよ。つーちゃんよー」
いつ用意したのか程よい熱さの湯のみを渡してくる。
つららは緑茶という事を確認し、こくりと咽を鳴らす。
一息ついたところで、見上げていた月から目を離し、畳の部屋へと目を移す。
そこには昏倒しているクトゥグアの姿があった。
「ナイス、パワーキャラ」
舞鬼が親指を立て、ウインクしつつ言ってくる。
「…怖かったんだ。これは正当防衛だろう。きっと。」
つららは湯飲みに口をつけ、再び月を見上げる。
「八神が出て行ったきりだが…どうしたのだろうか…」
「黙って帰ったってコトは…ないね。もう一度探しに行こう。つーちゃん。」
「…そうだな。」
つららは綺麗に背筋を伸ばし、優雅に立ち上がる。
嫌な予感がして、少し胸を押さえた。
「ん?どしたの?びっくりして胸がおっきくなっちゃった?唯でさえ大きいのに!ムキーっ!」
「そそんな訳あるかっ!」
つららは顔を高潮させて生徒会屋敷の玄関へと移動する。
「…少しは元気、出たかな。」
「覇道!何をしている!?行くぞ!!」
「はいはーい♪」
気絶したクトゥグア以外、生徒会からは人が居なくなった。


      ■        ■        ■


八神の視界は再び闇に包まれていた。
当然身動きなど出来ず、当然呼吸など出来やしない。
(つらら先輩のが移っちゃったかな。)
ため息の一つもしたいが、生憎肺には吐く息が無い。
(僕も十分馬鹿だな…。)
急に頭の後ろがむず痒くなるが腕が動かせないので掻けない。
(ま、体が勝手に動いちゃったんだ。仕方ないよな。)
体内に入り込んだ雪がまた一塊の酸素を奪ってゆく。
それにつれ一気に持って行かれそうになった意識を何とか取り戻す。
ぐぐぐ、と体にこびり付いた雪が圧縮を繰り返し始め、
(そろそろだな…。)
<暗黒のもの>は限界まで圧迫し、そして――爆ぜた。


      ■        ■        ■


鮎はその光景を見ていた。
黒い雪が弾け、中に居た八神がどさりと飛び込み台の上に落ちる音も聞いた。
震えて一歩も動けなかった足を睨み括を入れる。
鮎はプールサイドを走り、走り、飛び込み台の梯子へ向かう。
スカートなど気にせずに昇る。
最後の段を上り、高みへと移動。
そこにはぴくりとも動かない親友、八神・命の姿がある。
「うっ…ううっ…」
鮎は力なく膝から崩れ落ち、
「うぁああああああああん!!バカバカバカぁ~!」
泣いた。





△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

【あとがき】

雪都「来週終わる確立80%」
つらら「天気予報みたいだな。」
雪「もし終わんなかったとしても20%の所為にします。」
つ「そういえば、天気予報の0%や100%は解る。だが…」
雪「間の数字が微妙だよね。」
つ「そうだ。50%と60%など、もはや何がなんだか。」
雪「どっちかにしなさい!って感じだよね。」
つ「私もそう思う。」
雪「あれ?何の話してたんだっけ?」
つ「天気の話だろう。」
雪「あ、そっか」
つ「では、私は急ぎの用事故」
雪「やがみんならプールですよ。」
つ「そうか、すまない。ではな。」
雪「じゃねー。……あれ?」
テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学
覇道高校、新撰組! 第十七幕  
2006.06.24.Sat / 04:12 
イタクァはもう一度足元の雪球を見る。
何やら淡い青色で文字らしきものが刻まれていることに気づく。
彼女はゆったりとした仕草で屈み、まじまじと見つめた。
『対イタクァ用追尾弾』
「ついび…だん?」
「そ。追尾するから追尾弾。」
ざくざくと小気味良い音で雪を踏み締め、悠然と歩いてくる男二人。
その内、黒剣を片手に下げた整った顔の少年が言う。
「このバルザイの堰月刀、ルーン文字を刻めば誰でも魔術が使えるらしいですね。」
そして、と続ける少年。
「便利なことに翻訳機能も付いてる。何やら現代文字でも刻めばその記された意の効果が出るとか。」

足を崩したまま地べたに座り、唖然としているイタクァ。
似たような格好をしていた少女―――鮎が立ち上がり、
「場所チェンジのへんな鏡は第一の罠って感じかな。本命じゃなかったんだよ?」
何故か得意げな表情で告げる。そして剣の少年、命が続ける。
「本命は鮎の持った追尾性能を持った雪球。あと、僕らはそれから目を逸らさせる第二の罠、かな。」
こくこく、と横で頷く剣信。
イタクァは呆然を通り越し、無表情に近い顔で二人を交互に見つめ、
「じゃあ…最初に私の弾が当たらなかったのはぁ…」

遠く、最初に三人が出てきた塹壕から罵声が上がる。
「オレに当たったんだよ!!」
黄緑色の西洋甲冑を着込んだ男が肩を怒らせガラの悪い男の様に歩いてきた。
近づくにつれ腹部に青い光が見えた。それは文字でこう書かれていた。
『よく当たる的』
「いつの間にか勝手に書きやがって…痛かったぞミコト…」
「あはは、悪い悪い。」
ミコトと呼ばれた少年は少しも悪びれずに返す。
突然の乱入者にイタクァは狼狽し、
「ハスターじゃなぁい…」
「よっす!やっぱお前も負けたかぁ。」
「…も、って事は?」
ハスターは申し訳なさそうに小首を傾げヘルムの横を掻く。
痒いから、では無く照れた時の癖なのだろう。
「言葉の通り、だ。コイツらこの学校の生徒。で、オレらみたいなの取り締まってる。OK?」
「正確にはアンタ達を呼び出した本人から『本』を取り上げることが目的なんだけど。」
剣を持った少年、命がすかさず訂正する。

未だ勝負に負けたという事態が飲み込めていないイタクァ。
いつの間にか周囲には命、鮎、剣信、そしてハスターが取り巻いている。
「さて、約束ですが当然覚えてますよね?」
小柄の中性的な顔立ちの男、命が言う。バルザイは腰の辺りに鞘も無いのに収められている。
「敗者は勝者の命令を一つ、聞くんだよねー」
何処か幼さが残る整った顔を精一杯淫靡さを映し、にやにやと笑う鮎。
「一生奴隷、ってーのはどうだい?こんなんでも役に立つんじゃないかな?」
ハスターは若草色の甲冑を着込んでいて表情は解らないが、恐らくとても憎たらしい顔をしているのだろう。
声のトーンでそうイタクァは察した。

「さーて…どうしよっかなぁ~…?」
命と鮎、ハスターの三人は両手をわきわきと蟹の足の様に蠢かせ、イタクァを取り囲む。
なにやら困り顔でその三人を見つめる剣信。
そんな中、彼女は先ほどのショックで腰が抜けてしまったのだろう。
下半身を引きずるように後退するがままならない。
「い…い…」
百人が見れば百人が恋に落ちそうな怜悧な美しさを持ったイタクァの顔は恐怖に引きつり、今にも泣き出しそうである。
「嫌やぁああああああ!!」
純銀の世界が広がる体育館。
一人の女性の叫び声が響き、そして消えていった。


     ■    ■    ■


山林の中、開けた土地があった。
そこには古びては居るが寂れてはいない洋館――女子寮である――と船首を半分ほどその建物にめり込ませた廃船さながらの海賊船が存在していた。
深い瑠璃を流した夜空、寮の広大な庭には篝火が焚かれ、辺りを昼間の様に煌々と照らしていた。
「ん?深山、どうかしたのか?」
将校服を着込んだ体躯の良い青年が問いかける。
問われた先には眼鏡をかけ、黒髪をオールバックにした青年が居た。
深山と呼ばれた青年は思案顔で校舎の在る方向を見つめていた。
「いや、少々気にかかることがあってね。」
「お前にも気に掛けることがあったのか、はっはっは。…さては女か?」
「まさか。」
鼻を鳴らし一笑に付す、深山・左蔵。
くるりと優雅に体を回し、海賊船へと向き直る。
「戦況はどうかね?」
右腕を勢い良く水平に払う。皺一つ見当たらない制服がぱんっ!と小気味良い音を奏でた。
将校服を着込んだ男が通信兵――サバゲーとは思えない程の装置を使っている――から受け取った穴が開いたレシートの様なものに目を移し、
「順調に制圧中だ。女子寮に入り込んだ賊は全て排除。以後、あの船に残った奴らを排除するために突入をかける。」
「そうか。負傷者は如何かね?」
「負傷者はゼロ。相手は刀剣を使用との事だが、さすが深山コーポレーション製の軍服だ。防刃に優れているな。あって打撲程度だ。」
「ふむ、担当の者に伝えておこう。」
「他にははじめての女子寮に興奮し、不埒な行為をした男子兵数人を独房に連行するなどの珍事があったが概ね作戦に支障は無い。」
「ご苦労だ。」

左蔵は腕を組み、泰然自若と海賊船を見つめる。
既に数人の尖兵がガスの圧力でBB弾が発射されるAKを掲げ、突入しているのが見えた。
「にしても…相手は何処の所属だ?本物の骸骨だぞあれは。中には人はます入れない。それに撃てば砂の様に消滅すると聞く。あれは何だ?」
左蔵はにやりと口を歪め楽しそうに告げる。
「それは秘密だ。別段、貴様も気にしては無いのだろう。アレが使えているのだ、内心相手など気に掛けてないのでは無いかね?」
「…ふふっ、まぁな。違いない。」
二人の男は顔を見合わせ笑いあう。
そして将校服を着込んだ男が笑いを止め、真剣な面持ちで、
「左蔵、うちの部活に入る気は無いか?やはりお前以上の指揮官は悲しいことに居ないんだ。」
「断る。私は既に部活に入っているのでね。それを止める気もないし、掛け持ちもせん。」
「君の様なフレッシュな部員を募集中!一緒に青春の汗を流さないか!?」
「…言い方の問題では無いが。」
「また振られた…か。」


     ■    ■    ■


八神、鮎、剣信、ハスターの四人は野外プールの更衣室の影に隠れていた。(ちなみにイタクァは今頃体育館の掃除をしている頃だ。)
冗談の様に広い校庭の一角、これまた冗談のような広さのプールだ。
プールには何個か種類があり、一片25メートルプールに、50メートル、100メートル、200メートルと四種類存在する。
八神たちはその一片200メートルの長距離用のプールに居た。
コースもとんでもない数があり、クラス全員(平均して百人ほど)に一コース宛がわれるので、広さといえばちょっとした湖であった。
水面は静かに波を立たせ、映る夜空を歪ませる。
神秘的な光景の中、背の低い影が飛び込み台に立っていた。

「あいつか?」
八神は近くに居ても耳を澄まさねば聞こえないような小声でハスターに語りかける。
「そうだよ。オレらを呼び出したのは彼女だ。」
八神はもう一度月明かりに照らされる少女を見た。
背は低い方だろう、長い髪は二つに結われている。
何やら制服の上にストールを羽織っている様で、時折ゆったり吹く風に棚引いていた。
その小柄な体格には不釣合いな大きな板の様なものを抱えていた。
あれが探していた『本』であり、全ての元凶である魔書、セス・ビショップ抜書なのだろう。

「あれ?あの子…」
鮎は隠れていることを忘れたのか、雑談をするようなトーンで言う。
三人は慌てて止めようとするが気になる単語がその口から出た。
「黒魔術部の子だよ。ボク知ってるよ?仮入部したとき見たもん。」
「後半は聞かなかったことにする…。けど黒魔術部か。魔法に憧れはしそうだな…。」
「おいおい、そんなことより召喚の儀に入ったようだよ!」
ハスターが小さい声で咎めるように叫ぶ。

八神はイタクァの事を思い出した。
「私を呼び出したら、プールの方へ行くような事を言っていたわぁ。水辺で召喚と言えば…クトゥルフよぉ。間違ってもアイツだけは目覚めさせては駄目。」
イタクァの表情は真顔になる。
「呼び出されたら世界中のニンゲンの気が狂い、そして死ぬわ。たった呼び出されただけでね。洒落じゃ済まない奴なのよ…。」
そう言い終わると表情は元の気だるげなものに戻る。
ゴシック調の服についた雪を手で払い、
「そうそう、坊や、水の中では呼吸できるのよ。知ってた?」
そうワケの解らない事を言って彼女は掃除に取り掛かったのだ。

「よし、僕が行く。皆は隠れていてくれ。何があるか解らない。」
「ミコト…」
「……解った。」
剣信は相変わらずの心配顔で同意してくれた。
鮎は納得の行ってない声だが仕方ない。
「そうだ、あの鏡貸してくれる?」
八神は鮎に問いかけ、しぶしぶ彼女は位置逆転の魔法が罹った鏡を手渡してくる。
渡された手の平大の鏡をポケットに仕舞い、バルザイの柄をぽんと叩く。
「行こう。」
黒い刀身に緋色の光が滲んだ。


     ■    ■    ■


一方その頃――
「姐さん!オレを弟子にしてください!」
畳が敷かれた部屋、生徒会の屋敷に土下座を繰り替えす男が居た。
「い…いや、クトゥグア君、少し落ち着いたらどうだ?」
土下座にターゲッティングされたのは日本人形の様な美しさを持った女性だった。
『常に冷静さを』がモットーの御堂・つららだが、今は明らかに狼狽が見て取れる。
「私はまだ修行中の身の上、弟子というものは…」
「そこを何とかお願いします!姐さんの強さに惚れ込みました!どうかお願いします!」
赤毛の長髪が土下座されるたびに翻り、まるで焚き火を見ているようだった。
男、クトゥグアの額は畳に擦られ血が滲んでいた。
畳にも当然血は付いており、
「…新手のストーカー?」
つれを見つつ舞鬼は至って真顔。
「違わい!」
土下座のスピードを上げつつ律儀につっこむクトゥグア。

(ストーカーより怖いものが有るんだが…)
つららは水呑み鳥のおもちゃさながらがくんがくん揺れているクトゥグアを怯えが多少入った目で見つめる。
「頼む、頼むから土下座を止めてはくれないか?」
「いえ!弟子にして頂けるまで止めません!オレの誠意です!」
「その誠意が怖いんだ…」
つららはふっと目を逸らし、どうしたものかと困り顔。
開け放たれた襖から、庭が見える。
夜空には鮮やかな黄金色の月が浮いている。


     ■    ■    ■


もう一人、その月を見る者がプールサイドに佇んでいた。八神だ。
そしてゆっくりと視線を下ろし、「よしっ」と小声で気合を入れる。
八神は瞳に意思を灯し声を上げる。
「『本』!返してもらえるかな!」
プールサイドから飛び込み台は15メートル程の高さにある。
その飛び込み台に一人の少女が立っている。その少女はそこで初めて八神を見据える。ガラス玉のような空ろな瞳で。
少女は開いていた一抱えもする大型の『本』をばたんと閉じ、
「嫌。」
感情が篭っていない声で、きっかりと拒否を示した。
「嫌…じゃなくて、それ貸し出し禁止なんだ。危険だからさ。」
「危険。無い。」
会話するのも億劫なのかぶっきらぼうに澄んだ声で応答する少女。
「ね?怒ってないから、一緒に返却しよう?」
「うるさい。邪魔するな。」

少女は感情の篭っていない顔を八神に向ける。
それは目の前を横切る羽虫を見るような冷たい目で、
「――――――――――。」
何かを言った。
少女の口から何かが発せられるが、それが何なのか解らなかった。
大勢の男たちの呻き声の様なものが聞こえる。
歌っているのか、それとも叫び声なのか、判断つかない声が少女の口から発せられる。
ただ一つ解るのは恐怖だった。

八神はがばりと顔を上げた。
いつの間に俯いていたのかもすら思い出せない。
気づいた頃には既に少女の歌は止んでいた。
少女は羽織っているストールをマントの様に翻す。
今まで筋すら動いて無かった無表情顔に仄かに笑みが生まれた。

「ん?雪?」
八神は空を見上げた。
顔に冷たいものがヒヤリと付いたのだ。
拭いつつ上に視線を移すと確かに雪が降っていた。
だがその雪はただの雪ではなかった。黒い雪があるだろうか。
八神は肩に積もった黒の雪を払い落とすが、なお深深と振り続ける雪がそれを許さない。
周囲を見回すも黒い雪が降っているのは八神の周りだけ。
そして――
「これ、何だよ…」
止む事を知らないのか、雪は今だ降り続ける。振り続け雪は八神の体を包み込む。
地面に落ちた黒い雪は蟲の様に這い回り、足に纏わり付いたかと思えば徐々に上ってきている。

「ばいばい。」
少女はもとの鉄面皮に戻ると再び『本』を広げプールを見据えた。
八神は静止しようと口を開いたが、
(声が出ない…!?)
いつの間にか黒い雪は体の周囲に厚く積もっており、まるで着ぐるみをしているようだった。
顔にも徐々に積もってきており、口が塞がれ、息をすることも侭ならない。
(冗談じゃないぞ!窒息しちまう!)
急いで手で口を塞いだ雪を払おうとするが、降る勢いが増した雪に追いつかず拭う事が出来ない。
もがいている間に雪は目の高さまで包み、脳天へと移動し、八神を完全に包み込んだ。
「ミコトっ!」
「…くそっ!」
遠くのほうか微かにくぐもった声が聞こえる。鮎と剣信だろう。
「まだいたの。」
少女は面倒くさそうな、いや、その感情すら込めるのが面倒くさいと言わんばかりの声で呟く。
(馬鹿、こいつは危険すぎる!二人とも逃げろ!)
声に為らない声で叫ぶが伝わるはずも無かった。
思い切り叫ぼうとしたからか、口から気管へと雪が入り込み、吐き気と同時に更に酸素が奪われる。
もう咳き込む息も、吐き出す息も無い。
横隔膜が空気を寄越せと蠢動するが生憎雪を口から招き入れるだけだった。
(鮎、剣信!逃げて…くれっ!)
霞がかかって来た意識を呼び起こし、最後の力を振り絞り意思を伝えようと八神は体を動かす。
関節が思うように動かず、油が切れた人形のようにギクシャクと体を動かすが、
(…くそっ!)
縺れた足が何かに引っかかり、そのまま落下する。

「――!」
「――!」
何か聞こえた気がするが、もはやその意味も八神は解らなかった。
全身に力が入らず、意識もまた薄れていった。
軽い浮遊感を覚え、八神は―――




▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

【あとがき】

雪都「三時間かかったよママン」
つらら「私はお前の母上では無い。それよりなんとかしてくれないか?」
雪「律儀に突っ込むね。で、何を?」
つ「もはや職業病だ。なんとかして貰いたいのは――」
クトゥグア「姐さん!こんな所に居たんですか!」
つ「いやぁああ!!」
ク「……姐さん?」
つ「いや、何でも無い。それよりお前、何故此処が解った?」
ク「あのチビっこい奴が教えてくれたんですよ。」
つ「覇道め…」
ク「それより姐さん!どうか弟子に!」
つ「…おい、何とか為らんのか?」
雪「ならないんじゃないかな…。」
ク「姐さぁーん!」
テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学
キャスタ×ホリック 『バカ野郎に花束を ~最終話~ 』  
2006.06.23.Fri / 05:07 
空には飽きることが無く雲が流れていた。
丘の頂に虹のように架かっていた石のアーチの姿は今は無く、膨大な量の石片が墓標のように風の丘に刺さっている。
瓦礫の中、二つの人影がひょっこりと現れた。
全身黒ずくめのスーツを着込んだ目つきの悪い男が丘を端から端まで見回し一度小さな嘆息をする。
「事故ってことに…ならないよな。」
黒服のシュウの隣にいる体格が良い女――高原の少女に似合うだろう純白のワンピースに陸軍払い下げのジャケットを着込んでいる――ベアトリクスが誰に向けるとなしに答える。
「ま、まぁ、私たちの命と比べれば安い犠牲だって。」
「俺らにアイザックを足したとしても、この遺跡のほうがなんぼか価値があるぞ。」
「…………。」
「…………。」
はっきりと無言が丘に響き渡る。
沈黙が支配者となった中、二人は口を開かず黙々とある地点へと歩き始めた。

その地点は先ほどシュウが連鎖瓦解の魔術を解き放った地点であり、その魔術で出来た巨大なクレーターにバジリコックが落ちた場所でもある。
クレーターにはアーチを形作っていた岩石が積もっていた。それはクレーターに落ちたバジリコックの上にも当然――
「死んだか…?」
「いや、気絶、と言った所か。」
シュウは穴に目を向け、ぴくりとも動かない巨大な爬虫類を確認する。
呼吸はしているようで、緩やかに口から火の粉が舞っていた。
「なら起きたらよ…」
「大丈夫だ。危険と解ればもう近寄らないだろう。痛手を負っているし、目が覚めればきっと巣に帰る。」
「なら…任務完了だな。一時はどうなるかって思ったけどよ」
ベアトリクスは両手を腰のくびれに宛て、空を見上げる。
シュウは背広の裏地に縫いこんだ鞘から隠しナイフを取り出し、クレーターから出ているバジリコックの片腕へと近寄る。
「すまんな、一本貰うぞ。」
「あっ、私のも慰謝料ってコトで!」
「はいはい…」
人一人はゆうに踏み潰せる足から生えた四本の爪。
成人男性の腕ほどの大きさはあるだろうか、その爪の先端を黒塗りのナイフで二本切断した。
「危ないから気をつけろよ。」
シュウは二つ皮袋を取り出し一本ずつ中に仕舞う。
一つを腰に下げ、もう一つをベアトリクスに放り渡す。
「サンキュ♪」
「よし、帰るぞ。」

シュウは踵を返し、丘の下に広がる遺跡へと足を向ける。
ベアトリクスは慌ててシュウを追いかけた。


        ★  ★  ★


「何ゆえ正座させられているか、解るかの?」
鏡面の如く磨かれた大理石の部屋、園長室。
壁の一面だけは前面ガラス張りとなっていて、そこから覗く夕陽が部屋を鮮やかな緋色に染上げる。
床に長い影を伸ばすのは一人の少女だった。
年は十代後半に見えるが言葉遣いがえらく古臭い。
派手な色彩の杖(羽が生えていたり、拳大の水晶が取っ手の部分に付いていたりする)でぺしぺしと手のひらを打ちつつ、悠然と立っている。
見下ろす視線の先には正座をした二人の男女が居た。

「学園長」
男、シュウが仁王立ちする少女に顔を向けるが、その少女はそっぽを向き口を硬く閉ざしている。
「……………お母さん」
「なんじゃ?」
間髪居れず返答する少女。シュウは一旦目を深く閉じ、深呼吸とともに告げる。
「バジリコック退治は成功したのですが」
「…そして丘の『天麒麟の輪』も退治というワケじゃな」
少女は三白眼でそれぞれシュウとベアトリクスを交互に睨め回す。
「バレてたか…」
「ぁぅ…」
「当たり前じゃ!このうつけがぁ!」
少女は杖でばつの悪そうな顔の二人を殴打。
声にならない呻きを上げ、両手で頭を押さえ転がりまわる二人の男女。

「この魔女スカサハの目を誤魔化そうなぞ――」
スカサハの一喝はそこで途切れた。
樫製の重厚な扉がノックされたからだ。
「――入ってよいぞ。」
扉が軋みの悲鳴を上げ、ゆっくりと開かれる。
「失礼します。シュウとベアトリクスが帰還したと聞きましたので。」
ほんわかした表情を浮かべる中性の顔立ちをした男がそこに立っていた。
短く刈られた緑色の髪が夕陽に混ざり、結構エグイ色になっている。
「っつつつつ……アイズか?」
「うん。」
アイズと呼ばれた青年は柔らかな笑顔でシュウに答える。
「えと、先ほどの話ですが…あ、いや、立ち聞くつもりは無かったんですけどね…」
少し申し訳なさそうな顔でアイズ――アイザックは続ける。
「『天麒麟の輪』は僕とシュウとベアトリクスの魔術で直すということで…。もちろん時間は掛かるでしょうが、直して見せます。」
「それは既に決定済みじゃ。怒っているのは隠そうとしたことなのじゃ。」
「あー、それは庇えませんねー。」

もう一度スカサハは杖を振り上げ、大気を裂く低音を纏わせつつ再びシュウとベアトリクスの脳天へと打ち下ろした。
「~~~!!!」
頭蓋から嫌な音が響いたシュウはもんどりうってびくびくと痙攣を起こし、ベアトリクスはもはや動かない。
そんなドメスティックでバイオレンスな躾を見つつ苦笑いのアイザック。
「に…しても…何でアイズが?」
一文字一文字思い出すようになんとか言葉にするシュウ。
アイズはきょとんとした表情で告げた。
「だって、元はといえば僕が悪いんだし…」
「…は?」
「なんじゃ?知らんかったのか?アイザック教師がバジリコック捕獲の為に餌を遺跡に撒いたんじゃが、予期せぬ大物が掛かってしまったというワケでな。」
「いやー、焦ったよ。一人じゃとても太刀打ちできなくて…ってあれれ?」

シュウは幽鬼のようにゆらりと佇んでいた。
ベアトリクスもいつの間にか立ち上がっていて指の関節を鳴らしている。
「二人とも、落ち着こう?ね?ね?」
尋常じゃないほど冷や汗を垂らしているアイズの声は無残に響く。

「貴様が…貴様が…」
「犯人かぁあああああああ!!!!」

シュウとベアトリクスは示し合わせたように皮袋からバジリコックの爪を取り出し、スローイングダガーの要領で投擲。
まるで猛毒を持った二本の爪がアイズの額に深々と刺さった様な形の影が、それはそれは綺麗に床に映ったという。



(おわり)


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

【あとがき】

雪都「予定より一話増えましたが無事、何事も無く終了です」
コタロウ「それ、無事って言わないんじゃ…」
雪「なんだと!?」
コ「ななななんでもないよ!なんでもない!」
インレ「それよりアイザックさんマズくないっスか?顔色が面白いように紫っス」
コ「嫌ぁあああああ!!!アイザックさん!?アイザックさん!?」
雪「はっはっは、落ち着けみんな。」
イ「逆に考えるっス」
コ「えぐ…ひくっ…ぎゃくにぃ?」
雪「この駄文はコメディで出来ています。」
イ「次の話にはきっとにゅるりと元気になってるっス」
コ「…ほんと?」
イ「だって『あの子』のマスターなんスよ?」
コ「あ、そっかぁ…」
雪「あとがきでアイズの使い魔の複線を書くという、なんともズルイ方法ですが」
イ「いつか始まるキャスホリの話に書かれるんじゃ無いっスか?」
コ「そ、それまでみなさん」
一同「しばしのお別れー!…っス!」
キャスタ×ホリック 『バカ野郎に花束を ~三話~ 』  
2006.06.22.Thu / 04:32 
シュウが目を覚ますと空が見えた。
それはまるで鮮やかな水色のカンバスに所々綿飴を散りばめた様。
彼は違和感を二つほど覚えながら抜けるような蒼穹を見つめていた。
一つめは雲が尋常じゃない速さで流れていること。
二つめは後頭部に定期的に鈍器で殴られるような衝撃と熱が与えられていることだ。
「おい、ベアトリクス。いつから俺はソリにジョブチェンジしたんだ。」
「知るかっ!」
「お前、人様を引きずっといてなんだそれは!?摩擦熱で目を覚ます黄金体験させやがって!!」
「目の前でオオトカゲの餌やりショーなんか見たくなかったんだよ!もういい!じゃあ離す!」

ベアトリクスは大八車のように掴んでいたシュウの両足をパッと離した。
軽くなった所為かそのまま長身の彼女は加速し走り去って行っていく姿が見える。
「痛つつつ…」
慣性で少し距離を追加し引きずられたシュウは後頭部を擦りつつ立ち上がった。擦った方の手のひらを見ても血は付いていない。
(ベアトリクスに殴られて…気絶したのか…。で、そのまま引きずられていた、と。)
半眼でどんどん背中が小さくなるベアトリクスを睨む。
愚痴の一つでも零そうかという時、それは不意に阻まれた。
背後から大地よ裂けろと言わんばかりに振動が起こっていてる。
それはしだいに近づいてきて―――
「きしゅあああぁぁ!」
シュウは声の主、爬虫類王バジリコックを確認もせず、尋常じゃない冷や汗を浮べ全力で驀進した。

ずいぶんと走っただろうか、遺跡の石畳もまばらになってきている。
シュウは踝ほどの長さの草むらを踏みしめ前方を見据えた。
地面はゆっくりと上り坂となっている。
この小高い丘を登れば砂漠地帯へと繋がる。
「そう言えばよ、お前さっき私を制止したよな?何でだ。」
あれからベアトリクスに追いつき今は併走している。
彼女は疲れ一つ見せない顔でシュウを伺い見た。

魔術師はイメージ的に部屋に閉じこもり研究ばかりしていると思われがちだが、実際はかなり肉体の鍛錬も重視している。
研究に対しての体力、スタミナ、精神鍛錬などの目的もあるが、真の目的は魔術が対応できない場面に備えての事だ。
自然の理に揺さぶりをかける魔術は万能ではない。
呪文――声がキーとなる故、声帯を潰されたり、口を塞がれるだけで魔術など使い物にならなくなる。
そんな事態に陥れば、最終的には身体能力に頼るほか無い。
よって魔術師の間では研究と同等に運動にも重きを置いている。

疲れを見せないベアトリクスに対してシュウももちろん例外ではなく、息一つ荒げずに問われた疑問に答えた。
「バジリコックの爪を採ってきて欲しいとアイザックに頼まれたんだ。」
「アイズぅ?」
ベアトリクスは頓狂な声をあげ、一人の男を思い浮かべた。
体格は少し小柄でいつも笑顔は絶やさない奴。シュウと同じく学生時代からの付き合いの男だ。
そのアイズがバジリコックの爪を欲しがっている?
「なんでだ?」
自然と疑問が声に出る。
シュウはそんなことも知らないのか、と言いたそうに嘆息。
「極めて高価なんだ。バジリコックの爪はな。文献にも『剥いだ爪の毒は十年隔てた今でさえ尚分泌され続けている。恐らく恒久的なものではないかと推測される。』と記されている。おおかた、研究にでも使うんだろうさ。」
「…いくらだ?」
シュウは視線をやや上げ、虚空を見つめ軽く唸る。
そしてすらりと伸びた指を何本か立て、数回に渡り形状を変えた。
変わったのはシュウの手だけではなく、ベアトリクスの目の色もそうだった。
「よし、足だけ残して他は焼こう。」
「そこの金に目が眩んだ女、待て待て待て。」

またもや後方に付いてきている大型のトカゲ、バジリコックに手を翳し、魔術を編んでいるベアトリクスをシュウが静止する。
唇を尖らせた不機嫌顔のベアトリクスを一瞥し、
「お前の十八番、炎は効かなかっただろうが…」
「じゃあ、お前の消滅の『可能性』の魔術で足以外消してくれよ。」
「それは無理だ。成功か不成功かだったら成功してみせる。だが足以外消すとなると体液が吹き出るだろう。アイツの体には猛毒が駆け巡っているのを忘れたか?肌に触れるだけで死に至る様な冗談みたいな毒だ。それが断面から勢い良く散布されて見ろ、流石の俺でも死ぬかもしれん。」
「次の論文のテーマが決まったな。未知なる不死魔術の考察 -何処まで適用されるのか-、でどうだ?」
「そんな体当たり的企画嫌だ…」

やりとりをしている間に緩やかな丘の頂に着いた。頂と言っても一番高い場所というだけで大して高度は無いのだが。
丘は展望が良く遺跡を遥かまで見通せる。
反対方向には砂時計の中に入ったらこんな景色なのだろうかと思えるほど砂しかない大地、砂しか見えない雄大な砂漠だった。
追われている立場で無ければシートの一つや二つは広げて弁当でも食べたいと思える、そんな絶景だった。
その頂にはまるで円環が半分埋まったような形をした、とても大きな石製のアーチが架かっている。
見上げればアーチの内側には文様が描かれている。古代の住民の生活の様子にも、小粋なミミズが躍り狂っている様子にも見えた。
恐らくこれは遺跡と砂漠の境界として建てられた門のような物だろう。
砂漠に棲むバジリコックもここを通って来たのか、とシュウは想いを馳せる。

「こっから先は走れねぇな…」
ベアトリクスは苦虫を噛み潰した表情。
砂漠を走るなど装備上自殺行為な上、足を取られロクに進むこともままならないだろう。
地元民のバジリコックに追いつかれるのは予想が容易だ。
「背水の…この場合、背砂の陣という事だな。」
「余裕じゃねぇか、シュウさんよ?」
「そうでも無いさ。まぁ、一つだけ策は有るが。」
「つ、爪は採れるのか?」
「…採れる、だろうけど、食うか食われるかって時に己の身の安全より先に金か…」
「そそそそれよりどんな作戦なんだよ!?」

耳の先端まで真っ赤に染めたベアトリクスを冷ややかな視線で見つめるシュウ。
吊り上がった双眸を細めつつ、作戦を世間話でもする様に告げた。
それを聞いた彼女は眼を見開いたかと思えば口元を緩める。
大きな胸をぼふんと叩き、シュウから離れて行った。
「先に謝っとく、悪いな。」
シュウは後ろをすっと振り返る。
草原の丘に一際目立つこんもりと盛り上がったものが見えた。バジリコックだ。

砂塵を巻き上げ暴走列車のような勢いでこちらに向かってくるのを見据え、シュウは精神を統一する。
(チャンスは一度…悟られるな!)
右手を開き前方に向ける。一度大きく空気を肺に送り込み十分に酸素を蓄える。
バジリコックは前方十メートルを切った。
血走った眼に自分が映っているのを泰然と見つめ、シュウは呪文を紡いだ。

"―――汝、凍れる国の姫と為れ"

辺りを取り巻く大気が一度蠢動。
それは直ちに収まるや、乾いた音が丘に木霊する。
見えない鞭が空を打った時発するような小気味良い音だった。

突如、シュウの手の向けられた方向、ターゲットの色が無くなった。
モノクロになったそれはガラスを踏み割るような音を発てつつ砕け散る。
砕けるのは―――草揺れる大地だった。
そこだけ白黒写真なのでは無いかと思える奇妙な地面。
最初は点ほどだったものが徐々に同心円状に広がって行き、広がるに連れ世界に嫌われたかの如く崩壊する。
異変を感じ取ったのかバジリコックが足を止めるが、既に遅かった。
四本足が支える地面は灰色に染まり、バリン、バリンと叫び陥没してゆく。
バジリコックが悲鳴を挙げる暇も無く、巨大なクレーターに飲み込まれると同時、
「ベアトリクス!今だっ!」
「おうっ!」
シュウから遠い地点からベアトリクスの声は届く。
立つ位置は巨大な石アーチの根元。そのアーチの壁に向かい手を翳している。

"―――無間地獄の柘榴を刻め!"

澄んだ声が響き渡るとベアトリクスの上等なシルク糸を思わせる赤髪が踊る。
不自然なほど強い突風が一瞬吹いただけでもとの静寂が戻る。が、それの静寂は柄の間だった。
アーチの壁には一筋の紅い線が走っていた。
熱した鉄線でスチロールを削った断面に似ていて薄黒い煙が天を目指し昇っている。
異変は音から始まった。
ずり…ずりり…と死体を引きずるような音が鳴ってから、
紅い線が奔った壁が徐々にスライドしていく。
この時点で鳴動は休み無く轟いていた。
石が複雑に組まれて作られているアーチが崩壊を告げている。

「一旦撤収だ!逃げるぞベアトリクス!」
「言われなくても逃げるっつーのぉ!」

シュウとベアトリクスはバジリコックが落ちたクレーターに、アーチを形作る石というか岩が埋まっていくのを確認。
その後直ぐに頭上から降ってくる石の雨を掻い潜りつつ、丘を走り下っていった。


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…終わらなかった。
あっれー、おかしいな。
テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学
キャラクターバトン 
2006.06.18.Sun / 02:07 
久しぶりに小説以外を書いてみるよ。
面白いバトンが殿下から回って来たからね。
題してキャラクターバトン!(命名:殿下)
指定された自作キャラで答えるらしい気がする。
そしてご氏名されたのは『深山・左蔵』
ちょwwwww変化球きたwwwww


【というわけでいってみようー】

・質問(台詞)に自分の指定されたキャラで答える

・回った人は台詞を一つ増やして次の人に回す

・できるだけ回してください(ぇ

■『彼方は・・・誰だ?』
先ず人の名を尋ねる前に己の名を名乗ったら如何かね?
そうそう、我輩は深山・左蔵(ミヤマ・サクラ)と謂う故宜しく頼もう。

■『戦争って・・・何時になったら終わるのかな?』
何を終わりの定義にするかに縁るがね、大概にして終わるべくして終わるものだよ。

■『へへっ、僕はお茶が好きなんだ~君は?』
我輩は生八橋を炙ったものを好むぞ。

■『何で俺を裏切ったんだ・・・俺はお前を信じてたのに ! !』
それも愛と思い込むことにより幾分か幸せに成れるぞ貴様。

■『彼方は・・・何のために生まれて来たの?』
三千世界の愚問共の要望でね。どうしても我輩が世には必要なようだ。
サインは一人一枚で頼むよ?。

■『何故・・・? 何故俺達は戦わなくてはいけないんだ・・・?』
「戦う」という選択肢しか見えない時点で然るべき事となったのだ。

■『君はどんなお花が好きなの~?』
桜だな。我輩の名と同じ響き故共感出来る。
それに万人に愛されている所など、正に我輩と似ているではないかね?

■『ちょっ・・・何所行くの?』
そろそろ部活の時間なのだが…。まだ有るのかね?

■『初めて見たときから・・・ずっと好きでした、付き合ってください』
我輩は女には興味がない。
かと言って男にも興味ないがね。

■『明日も晴れるかな~♪?』
晴れれば良いな。
八神達と屋上で食す昼は格別なのでね。

■『俺とお前は何かの縁があるらしいな・・・』
なぬっ!?さては我輩の靴を舐める縁だな。
さぁ、存分に舐めたまえ。遠慮は要らん。

■『あれ買って~~』
~くれるのかね?
だが我輩は校庭に半分埋没している人体模型(サトシ君)は正直要らぬ。

■『俺と力比べ、してみる?(ぇ』
ではジャンルは「財力」でいこうか。
覇道嬢では分が悪いが、貴様になら我輩の口座一つでねじ伏せてみせよう。

■『友達いる?』
友達は居ない。
だが親友ならば三人居る。

■『最近面白いことあった?』
八神の弁当箱の中身を全て蝋製に変えた時の反応が中々爆笑ものだったね。

■『変身!』
我輩が八神を肩車にし、その我輩を更に橘が担ぐ!
そして川原はジュースを買ってくるんだ!
む、冗談だからそのコブシ大の石を放棄したまえ川原よ。

■『今君が居る世界ってどう思う?』
今はとても充実している。
世界が色づいて見える日が来るとはね。

■『次の人に回しなさい・・・』
では「今日もまたつまらない1日」の美咲さんでいこうかね。
いやなに、時間が有るときで構わんよ。

■それとだな
『大切な人を言い給え』
 






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何とか父親のお下がりPCを借りたので更新できました。
途中まで書いてた小説が消えたのが惜しいな…

ま、明日は暇なんで書いてみようかな。
キャスタ×ホリック 『バカ野郎の落書きを』 
2006.06.13.Tue / 02:36 
明日なにげ学校が早いので小説書く時間がなかとです。

でも、なにかしたかったので(?)落書きしましたやっほい。
ということで新キャラ、ベアトリクスの使い魔『コタロウ』きゅんを投下。




雪都(以下、雪):わんこー、わんこー
コタロウ(以下、コ):こ、ここどこっ!?コタ、インレに勉強教わってたのに!
雪:夢じゃ。夢の世界じゃ。英語にするとドリームワールド。
コ:なんだぁ…夢かぁ…ほっ…ってコタ寝てるの!?
雪:夢だけにな
コ:別に落ちてないよっ!
雪:ほらほら、起きないとインレがコタの顔に落書きしそうだぞー
コ:えぇっ!?やだぁ!
雪:おぉ ひげをかかれるとは なさけない
コ:んっ…!だめだぁ!起きれないよ!
雪:夢だけにな
コ:ワケわかんないよっ!
雪:次回で多分、短編『バカ野郎に花束を』終了です。そしてインレはネギを持ってきました。
コ:ね、ネギ!?なんに使うの!?
雪:ではまた明日~
コ:やだぁ~、起~き~れ~な~い~!
覇道高校、新撰組! 休み時間(BlogPet) 
2006.06.12.Mon / 13:32 
いつも、雪都は
積極的な覇道ならば攻撃的な可能性を感じやすいし、博愛的な覇道ならば医療的な可能性を感じやすかったりする。
とか思ってるよ。

*このエントリは、BlogPet(ブログペット)の「ちぃ」が書きました。
キャスタ×ホリック 『バカ野郎に花束を ~二話~ 』  
2006.06.12.Mon / 04:59 
オルムズド大学園。

敷地は峻険なる峰に囲まれた広大なる盆地を半分ほど占め設えられている。
平らかな敷地の中心に一際高い四角柱の塔が建つ。時計塔である。
四角柱の先端には冗談の様に大きな円盤が付いており、一から十二の数字が外周に沿って刻まれていた。
短い針と長い針が各円盤二本付いており、時を刻む。

その時計塔を緩い三日月状に囲んで存在する一際豪華な建物が居住館。
全寮制なので生徒は勿論のこと、上位階には教員も住んでいる。
その居住館を時計塔を挟み対称となって居るのは研究館。
外部構造は居住館と変わらないが、こちらは蔦が巻きついており外壁が少々崩れ歴史を感じさせていた。
柵などは無く、外部との境界を敢えて挙げるなら時計塔を囲む居住館と研究館であるか。
学園の周囲には手付かずの鬱蒼とした森や鏡面の様に空を映す湖。
そして暫く離れたところにはそれなりに大きな街があった。

そんな学園の研究館の一室。
『シュウ教室』と金字で彫られた黒色の表札が掛かる扉を叩く者が居た。
眠たげに端が下がった眼をした長身の男で歳は十代後半。
酸化した黄金を思わせる色の曲がある髪は肩ほど迄伸ばされている。
黒い皮製のジャケットに黒光りした皮パンツにローファーを履いていた。
皮製の衣服には悉く銀の鋲や用途不明のジッパーがごたごたと付く。
首には凶悪な棘が付いた首輪を下げていた。

「はぁ~い、っス!」
扉の向うからは間延びした声がする。
ドアノブがガチャリと回され開き、健康そうな肌の少女が顔を出した。
明らかにサイズが合ってないだぼだぼの深紅のローブを床に引きずりつつ、
「ん?コタロウじゃないっスか。」
「あぅ、インレ…ち、ちょっと時間いいかな?」
コタロウと呼ばれた長身の男はしどろもどろに告げる。

少女のインレは頭を掻きつつ、
「今マスターが出かけてるから、自習任されてるんス。」
「うん…コタもご主人様が居なくて自習任されてるんだ…でも…でもね?」
コタロウは腰に付いたチェーンをじゃらりと音を立て肩を竦める。
長身のコタロウは俯きつつインレの顔を伺い、
「生徒に質問されてね…?それが…わ、解んなくて…聞きに来たんだけど…」
語尾に近づくにつれどんどんと小さくなっていくコタロウの声。
インレは一瞬呆けるような顔をし、一拍おいてため息を付く。

「ごごご、ごめんねっ!ごめんねっ!」
コタロウはぺこぺこと腰を折りインレに何度も頭を下げた。
その度に皮の衣類に付いた金属がジャラジャラと音を鳴らす。
「…主の留守くらい補ってこその使い魔っスよ?」
「うんっ、ごめんね…コタ、駄目な子でごめんね…」
「別に責めてないっスよ。て言うか、泣くな男の子!」
「ひっ!ごめんねっごめんねっ!」
「ぁー…、取り合えず教室の中に入るっスよ。」

インレは大きく扉をあけ、コタロウに中に入るよう促す。
コタロウは眼の端に薄く滲んだ涙を拭い、ぱっと顔を上げる。
側頭部にぴょこんと跳ねている犬耳が揺れた。
「あ、ありがと!インレ!」
「…耳が出てる耳が出てる」
えぇえっ!?っと目を見開き、頭に付いた耳を両手でぺたぺたと撫で付ける長身の男、コタロウ。
インレは半眼でコタロウを見つめた。
「飼い狼は飼い主に…カケラも似ないっスね…」

       ●

「私のために生贄になってくれぇぇえええええええ!!」
「全力で断るわボケぇぇぇぇぇぇええええええええ!!」
忘れられた太古の都、名も無い遺跡に一組の男女と、
「くぅるるるぉおおおおぉぉぉ!!」
一頭のバカでかい爬虫類が一列になって駆け巡っていた。

見渡す限りクリーム色をした石造りの街を一同は破壊の限りを尽くし練り周る。
現代と、いや現代以上に平らかに整備されているのではないかと思える石畳は最後尾の大型爬虫類が踏み砕く。
オオトカゲの高さは十メートル以上、幅二十メートル、全長は三十メートルは在るだろうか。
砂漠の砂のような鮮やかな黄色で処々に灰色の斑点が浮かんでいる。
頭には冠にも見える駁が見える。
バジリコックが爬虫類の王と呼ばれる由縁である。
凶悪な歯が覗く横に広い口からは鞴の様に呼吸が送り出され、それと共に高温の火炎が洩れる。

「ちっくしょう!先手必勝、燃え尽きろ!」
シュウの後ろを走る長身の女性、ベアトリクスが自棄を伴った声を吐き出し右手を後ろでに翳した。
すると周囲の空気が張り詰め、水を注がれた氷のような音が空間に奔る。

"―――三千世界の鴉を殺せ"

「バカっ!やめ…」
シュウの静止も間に合わず、ベアトリクスの掲げた手から幾条もの光の帯が放たれる。
一つ一つが炎上の『可能性』を含んだ熱波である。
視界に入れるだけで眼が焼けるような眩い光を発する熱波の帯はバジリコックの頭部に突き刺さった。
目標を穿ったベアトリクスの魔術は膨れ上がり噴煙を巻き上げ爆砕する。
「ふふん、どんなもんだい。」
ベアトリクスは徐々に走るスピードを落とし、立ち止まる。
シュウも足を止め、もうもうと巻き上がる黒煙を伺い見る。

「最初からこうすれば早く終わったんだよ。楽勝楽勝。」
ベアトリクスは揚がった息を整えつつ、額に浮かんだ汗を手の甲で拭う。
大きく突き上げられた白ワンピースの胸元をぱたぱたと扇いでいた。
身を前に掲げ、上目遣いでシュウに自慢げな顔を向ける。
だがシュウはまだ煙を巻き上げている地点を見つめており、
「いや…残念ながら終わりはもうちょっと先のようだ。」
すっ、と指で示した。

颯々と遺跡を撫でる風が徐々に粉塵を取り除く。
爆発地点から同心円状に瓦礫と化して居たが、一つだけ変わらぬものがあった。
「ぐるるるるるぅぅぅぅぅ……」
濃い金色の目がぎょろりと一回転。
そしてベアトリクスに焦点が向けられる。

「あたしは本気で撃ったぞ!」
「ほう、さすがは砂漠出身。熱いのはなんのその、か。」
「んなんで納得出来るかぁ!」
ベアトリクスはなにやら納得顔のシュウを張り手で倒し叫んだ。

       ●

「そういえば、コタロウのマスター…ベアトリクスさんも居ないんスか?」
シュウ教室。比較的賑やかな自習風景の中、一つの空いた机にノートを広げインレとコタロウがそれを挟むように座っている。
「うん…コタのご主人様は学園長に呼ばれて、おでかけ。」
コタロウは教科書から顔を上げ、インレに向ける。
金色の曲がある毛が生えてた犬耳がぴょこぴょこと揺れている。
インレは眉を寄せるが皺は出来ない。
うーん、と唸り思案顔をし、
「ウチのマスターもさっき学園長に呼ばれたんスよ…」

さぁっ、と二人の顔から血の気が失せ顔色が真っ青になる。
「どどどどどどうしようっ!?」
「どうするも何も…っス」
コタロウのマスター、ベアトリクスと自分のマスターのシュウが犬猿の仲というのはインレも良く知っていた。
別に積年の恨みだとか、親の敵だとか悪意に満ちたものではなく…
(あの二人…水と油っスからねぇ…)
我ながら良い例えだ、とインレは肯く。

「けんかになりませんように…」
「祈るしかないっスね」

長身の体を小さく竦め、手を組み祈っているパンクな服装をした使い魔、金狼のコタロウ。
イスの背もたれに力なく背中を預け、頭を後方に反らし緩いブリッジを描く使い魔、黒ウサギのインレ。
二人のため息が騒がしいシュウ教室に溶けて消える。





△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼


【あとがき】

ホントは二話で終わる予定だったが、コタをどうしても出したかった。
後悔はしていない。まったく。まったくだ。
テーマ:なんかヘンな物語 - ジャンル:小説・文学
キャスタ×ホリック 『バカ野郎に花束を ~一話~ 』 
2006.06.11.Sun / 05:54 
「マザコン」
ぴくり。

見渡す。
視界いっぱいに石畳が広がっている。
見上げる。
底が知れないほど遠くまで青空が広がっている。雲ひとつ無い。
周囲には風化した家屋だったものらしき壁や、見上げるほど大きなアーチ状の天蓋が所々に点在する。
石が敷き詰められた大地の僅かな隙間に生えた雑草や、石版を捲り上げるほど太い根を張った大樹などが既にここが崩壊した街だと主張する。
そこは遺跡だった。

「マザコン~♪マザコン~♪」
ぴくっ。
そんな学者以外は興味も持たない多くの人に忘れられた土地を闊歩する二人の男女が居た。
先ほどから冷や汗をだらだらと流しつつ先頭を歩いているのは上下を黒色スーツに包んだ、まるで葬式帰りを思わせる男だった。
男は生まれつき吊りあがった眼の端を若干痙攣させて足を止め、また歩き出す。

「マザコンだぜ~♪シュウは~♪そりゃあもう無意識に倒置法で強調しちゃうくらい~♪」
音程が滅茶苦茶な即興の歌を唄っているのは長身の女性。
どこからか調達した短い小枝を指揮棒のように振りながら唄っている。
焔色の長髪は束ねられる事無く伸ばされ、腰の辺りで「こんな感じか」と適当に刃物でざっくばらんに切られている。
白いワンピースに体を包み、上に陸軍のジャケットを羽織っている。靴は学園支給品の戦闘用ブーツ。
上着と靴は幸い共通点があるが、まだアンバランスさは拭い去れていない。
そのアンバランスさは顔には適用されておらず、顔立ちは整っている。
片目が前髪で隠されていて、残った意思が強そうな琥珀色の眼は鼠を見つけた猫の様な面白いことを見つけたと言わんばかりの弓形になっている。

「うがぁー!黙れベアトリクス!俺は断じてマザコンではない!あれは…そう!妖精の仕業だ!」
吊り眼のシュウは今日何度も発した抗議の声を張り上げる。
ベアトリクスと呼ばれた長身の彼女はちらりとシュウを一瞥し、また、
「マッ・ザッ・コッ・ンッ~♪」
握った小枝をぶんぶか振り回す。どうやらサビに入ったようだ。

シュウは目頭を押さえつつ熱病患者の様な苦悶の表情を浮かべ唸る。
なぜこんな事態になっているかを検討するために時間を振り返り始めた。

      ●

「さて、俺らは何故魔術を行使できるかという初歩的な問題だが…ポリアンナ言ってみろ。」
「は、はひっ!」
五六人ほど入ればいっぱいいっぱいな小部屋の中に並べられた重厚な木製の机が並ぶ。
机には四人の少年少女が腰をかけていた。
シュウは鋭い視線を長い金髪を持ったその内一人の少女に向けた。
少女はおずおずと立ち上がり、
「えっとえっと、特殊な血統を継いでいるから…ですわ。」
「…そうだ。魔術の素質は先天的なものだ。魔術師の家系でもない一般人が使いたいな、と思おうと100%無理だ。」
シュウはくるりと振り返り黒板に向く。
白墨を手にし、簡易的な木を描きクリスマスツリーの様に小さな丸を五つ飾る。
「魔術が魔術と呼ばれる所以、それは在る物に強制的な揺さぶりを掛け自由に異変を起こすことからそう言われる。」
一つの小さな丸に矢印を伸ばし、
「世界は可能性に満ちてる。燃える可能性、凍る可能性、爆発する可能性、再生する可能性、滅ぶ可能性…まだまだ沢山ある。」
各個丸に『燃』『凍』『爆』『再生』と書き綴り、新たな小さい丸を書きなぐる。
「その小さな、だが目に現れない弱い可能性を掻き集め、具現化させる。それが俺たち魔術師の能力だ。」
木の外部に小さな丸を新たに記し、その丸から木へと矢印を描く。
『燃』と描かれた丸に矢印は集中しシュウは炎の絵で木を包む。
「この可能性を感じるのには各人適正がある。これは性格に起因する。積極的な性格ならば攻撃的な可能性を感じやすいし、博愛的な性格ならば医療的な可能性を感じやすかったりする。だからだな…」

シュウは白墨を置き、マントの様に羽織った深紅の教員用ローブの裾で指に付いた粉を拭く。
再び生徒のほうへ向き直り、
「自分の得意分野を早めに理解し、伸ばすことが重要だ。これはまた後に教えるが、可能性を集め、具現化するに至るスイッチとなるのが呪文だ。これは詠唱者の集中の妨げにならなければどんな言葉でも良い。これも自分に合ったものを考えておけよ。」
分かったか?と言おうとしたシュウは口を閉ざした。
教室の扉を軽くノックする音が聞こえたからだ。

「マスター?授業中失礼っス。お義母様がお呼びっスよ。至急来い、って言ってたっス。」
申し訳ない様に小さな軋んだ音を立てつつ開けられた扉から小麦色の肌をした銀髪の少女が顔を出す。
シュウの使い魔、黒ウサギのインレだった。
黒いタートルネックに下はスパッツ。長い黒靴下に白黒のバッシュを履いている元気の塊のようなオーラを漂わせた少女。
「母さ…学園長が?」
シュウは眉間に皺を寄せ疑問を口にする。
暫く硬直し、目を閉じた。そしてふるふると震えだす。
「嫌な予感が…そこはかとなくあり申さんことものぐるほしけれ。」
「マスター!お気確かにっス!」
シュウに駆け寄ったインレが袖を掴み揺する。
眼は虚ろで首が据わっていない赤ん坊の様に力なく項垂れているシュウの首ががくがくと揺れた。
その光景を黙って(というか口を開け唖然)見守る生徒たち。
「とりあえず行った方が良いっスよ!なんせ『至急』っス!」
「む、『至急』か…。」
両眼に精彩と鋭さが戻るシュウ。
「今日は復活早いっスね。お帰りっス。」
「ただいま。では、そういう事だお前達。すまないが自習していてくれ。インレ、後は頼んだぞ。」
「がってんで!行ってらっしゃいっス!」
軍隊の様だがどこか子供さが残る敬礼をするインレ。
シュウはローブを脱ぎ教壇に設置されたイスに掛け、黒ネクタイの位置を直す。
「『至急』の事態…か…。」
シュウは固唾を飲み込みどこか痛いような表情を浮かべる。
目を閉じ深く考える仕草。ふっ、と息を吐き眼を開く。
覚悟を決めた目だった。

「遅刻したら何をされるか。…行ってくる。」

      ●

「バジリコックの退治を命ずる!」
彩光の取れた大理石の広間。
薄い灰色を宿す石製の部屋扉には『えんちょうしつ』とカラフル+ポップ調のプレートがかかっている。
命令を発するのは小柄な人間だった。
眼はやや吊りあがりどこか楽しそうな表情を浮かべているが別に楽しいというワケではない。この顔が生まれつきだった。
ゴシックな服に身を包んでいるのは十代後半ほどの若い少女だった。
鴉の濡れ羽色の髪は両サイドで括られ腰まで長く伸ばされている。
その少女は体をすっぽりと覆うほど大きな皮椅子に腰掛ていた。
その目線の先には二人の男女が居る。
シュウとベアトリクスだ。

スーツに身を包んだ男、シュウが口を開く。
「学園長…。」
「お母さん、と愛を込めて呼ぶんじゃ!」
「お、お母さん…」
「うむ!」
シュウは横でにやにやと気持ち悪い笑みをしているベアトリクスを睨みつつ言った。
「執行部でも無い俺がなぜ怪物退治など?」
「先日の誘拐事件の罰、じゃなー。一刻も早く助けたいのは分かるが、下手をしたら生徒の身が危ないじゃろうが。」
魔法少女(実際魔法少女なのだが)のようなごたごたと装飾が付いたステッキでぽんぽんと手の平を叩きつつ、
「事態は良いほうに転がったが、もし悪いほうだったら?生徒は死んでいたかもしれんのじゃぞ?」
「…………。」
シュウは目を閉じ、黙して聞き入る。ベアトリクスも真顔で園長を見つめる。
「伊達に会議はしておらん。それに勝手に行動するものが居れば規律が乱れる。」
じゃが、と少女は続ける。
「その気持ち、解らんでもない。妾もお前…シュウが攫われたら、居ても立っても居られないじゃろう。まぁ、攫われる様には教育しておらんがの。」
かかか、と口を開け笑う園長。
イスから降りてシュウの前にぺたぺたと緊張感の無い足音で歩み寄る。
少女の背はシュウの胸ほどの高さでかなり背が小さいことが伺うえた。

「偉いぞ。シュウ。」
少女は背伸びをし爪先立ちで立ちつつ、シュウの頭を危なっかしく撫でる。
シュウは顔を真っ赤に染めてそっぽを向いた。
「じゃが規律は規律。泣いて馬謖を斬る、そのための罰じゃ。」
シュウは首を縦に振り、肯定の意を表す。

「ベアトリクスもベアトリクスじゃ!」
くるりと少女は長身の女性に振り向き睨む。
突然の事にシュウを見つめほくそえんでいたベアトリクスは眼を白黒させ、狼狽する。
「シュウに掴みかかり作業の邪魔をしたと報告が入っておる!討伐隊のお前が荒らしてどうするんじゃ!」
「あうあうあう…」
いつも気丈な態度で男勝りなベアトリクスが言葉を失い項垂れている。
ベアトリクスの半分ほどの身長の園長が両手を腰に宛がい説教している。
そんな不思議な光景を仕返しとばかりにシュウは笑みを浮かべつつ眺めていた。

      ●

意識を再び現代に戻す。
「あの時の仕返しか…つーか、俺は仕返しの仕返しをされている訳か…くそっ!」
「マママママママザコン~♪」
「うっせぇ!!お前もバジリコックをさっさと探せ!!」

バジリコック。正式名バジリスク。
トカゲ亜目バジリスク科。
小さいものでも全長20メートル、大きなものは小山ほどのものが観測されている。
トカゲをそのまま巨大にした風体だが特筆すべきはその猛毒性。
前足後ろ足の爪から分泌される毒は触れるだけで皮膚から体内浸透し死に至るという。
まず常人では相手にすらならないだろう。
爬虫類の王とも呼ばれるバジリコック。
普段は人が立ち寄らない砂漠地帯に住んでいるのだが時折人里に下りてくるのだ。
その度にオルムズド大学園に依頼が舞い降り、魔術師はボランティアとして討伐する。
他にも厄介な事態には魔術師に応援依頼が来る事が頻繁にあるのだが、それはまた別の話。

「って言ってもよぉ~」
ベアトリクスが小枝を振りつつ詰まらなさそうに抗議する。
「私の魔術で焼き払っちゃうか、お前の魔術で消し飛ばしちまえば視界が良くなって良いじゃんよ?」
「駄目なの。遺跡は大切だから傷つけちゃめーなの。」

遺跡は在るだけで良いのだ。
存在することに価値があるからだ。
古いものは希少で存在することだけで十分なのだ。
そんな遺跡になりたい、とシュウは良く分からないことを考えつつ古代人が舗装した石道を歩いていた。

「第一、奴はデカいんだよ。遠目にでも解るはずだ。それを退治ならいざ知らず、捜索する為に破壊したなんてのはだな――」
シュウは首だけ振り返り、後ろを歩いているベアトリクスに顔を向ける。
当の彼女の顔は勉強をやれと親に言われた子供の様に不貞腐れていた。
「だってよ、ここら辺をごっそり焦土にしちゃえばいつの間に倒してたりとかさ?こう、ゴォーって」
彼女が手を横の壁に翳すと綺麗に積み上げられた石の壁の一点が赤く光り、膨れ上がったかと思えばとろとろと溶けていった。
げっ、とベアトリクスは顔を引きつらせて呻き、
「いや、今魔術使う気はなくてだな、こう若きパトスが迸っちまったと言うか…」
ちろちろと残った火を驚愕の目で見つめているシュウに告げる。
怒るだろうな、と予測していたベアトリクスは疑問顔で見返す。

「落ち着いて聞けよ、ベアトリクス。」
シュウは右手の手の平をこちらに翳し静止のジェスチャー、もう片方の手は人差し指を口に当て、黙れの意。
ベアトリクスが再び疑問に思い、聞き返そうとしたとき、思わぬ方向に答えを発見した。
溶解した石壁の向こうからフシュルルルルと沸騰したやかんから蒸気が吹き出るような音が断続的にする。
定期的な音と共にこれまた律儀に火炎がたなびく。
穴から覘くは巨大なこげ茶色の爬虫類。目を閉じた顔はおそらく寝ているのだろう。

「一旦逃げるぞ!」
くるりとシュウは背を向け、恐ろしい速さで逃げていく。
ベアトリクスもハッと我に返り叫ぶ。
「お、置いてくんじゃねぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!」
「ぎゃおおぉぉぉおああううう!!」
彼女の叫び声が響いた一拍後、その後方には高さ十メートルはゆうにある巨大爬虫類が上体を反らし、天へと咆哮を突く。
「バッカ!起きただろうが!」
「知るかぁあ裏切り者ぉ!!」
「うぎゅるるるぉ!!」

シュウの後ろに半泣きで走り寄ってくるベアトリクス。
その後ろに向こう側の景色の色がほんのりと伺える薄い皮膜が付いた翼をはためかせ、石畳を踏み砕きつつ追跡してくる爬虫類王バジリコック。

前代未聞の追いかけっこが今開幕する。





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【あとがき】

雪都(以下、雪):また別の話が始まりましたね。
舞鬼(以下、舞):あたしの話がね!
雪:ちげーよwww
舞:えっ!?
雪:何その顔!?今気づいたの!?
舞:実は園長はあたし!
雪:子持ちかよ!?
舞:…しかもつーちゃんとの子だよ?
つらら(以下、つ):何を言っている阿呆。私はコウノトリには頼んで無いぞ?
雪:ピュアだ…
舞:ピュアだね…
つ:ん?どうかしたか?
テーマ:オリジナル作品 - ジャンル:小説・文学
覇道高校、新撰組! 休み時間 
2006.06.05.Mon / 04:43 




なんか文を書く気になれなかった。
だが落書きはしたかった。
つららの抜刀シーンのつもり。

なんかいつも顔ばっか描いてるから顔はまぁまぁ直視出来るけど、
他が色々と大変なことに。

俺の法則の中には絵の才は無いのか。
覇道高校、新撰組! 第十六幕 
2006.06.04.Sun / 05:17 
「はっ…!あぐっ…」

非情にも輝く月光が蹲る影を廊下に映し出す。
響くのは声では無い。胸の中央に深深と掌底を叩き込まれ肺腑から搾り出された呼吸が喉を震わせる音。
それは―――クトゥグアから発されるものだった。
彼の抉るような右フックは空を捉えている。
その右手首にはつららの左手が添えられ振り被る前の状態で停止している。
つららは屈んだ姿勢で前に踏み込み、開いた右手の平をクトゥグアの胸、肋骨の間へ沈めていた。
踏み込んでいたクトゥグアに対し、つららもクトゥグアに向かい踏み込んだ格好になるのでカウンターとしてダメージは倍化となる。
胸に叩きつけられた手は手首までめり込んでいて、みしり、と軋む音を奏でる。

「こほっ…わざと刀を手放して、元からコレ…狙ってたのか…」
「…妖怪ながら、中々骨のあるヤツだ。私も多少本気を出させてもらった。それより、貴様は何ゆえ…」
受身すら取らずに廊下へうつ伏せに倒れるクトゥグア。
力なくだらりと下がった頭はワンテンポ遅れて床に叩きつけられ、ごっ、と嫌な音が鳴る。
つららは恐る恐るクトゥドアをひっくり返し、顔を覗き見て、
「不味いな…白目を剥いているぞ…。」
気絶確認。

背後からぺたぺたと緊張感をまったく感じさせない足音で駆け寄ってくる舞鬼。
「あいやー、一瞬ヒヤヒヤしたアルねー。」
何故か中国人の様なアクセントで喋る。
つららはとりあえず、吹き飛ばされた鞘と刃が地面に半分ほど深く刺さり埋まっている三代目フツノを抜き取る。
まるでケーキからナイフを抜くような仕草であり無音。
刀身は刃毀れ一つ無く、尚妖しく輝く。
フツノを鞘に収め、つばがパチンと鳴った。
「少々私も危ういと思ったぞ。」
「つーちゃんケガ無い…?大丈夫?」
「あぁ、私は問題無い。それよりも…」
二人は床に仰向けに倒れている大柄の男を見つめた。
軽く痙攣を起こしていて、白目。

「どうするか…」
「どうするべー…」
同時に吐息混じりに吐き出した。


         ●         ●         ●


イタクァは塹壕から勢い良く飛び出てきた三人を確認。
「ふふっ…出・て・き・た。狙い撃ちよぉ、おばぁかさん。」
戦場はただの雪原。そこには身を隠す壁なぞ無い。
距離は50メートル程。イタクァからすると十分射程圏内。
先ほどテレビで見たスナイパーライフルで敵兵を向かい撃つ兵士の気持ちが解るわぁ、とイタクァは思う。
三人は散り散りに広がり、イタクァを囲むように駆け寄ってくるのを見て、
「チョロ甘よぉ!」
パチンと指を鳴らす。
背後に浮いていた無数の雪球の内二つがふわりとイタクァの目の前に移動する。
無動作で片手に一つずつ鷲掴み、身を落とし右のサイドスローで一番早くこちらに向かっている少女に投げ、すかさず左も同様に振り被り何か剣の様な物を携えた小柄の少年を狙う。
「二機撃墜っと♪」
子供の様に無邪気にはしゃぐイタクァは信じられない光景を見た。
先ほど投げた雪球は地面擦れ擦れを高速で飛翔し、降り積もった雪を軽く舞い上がらせつつ目標へ―――届かなかった。

目測を誤ることはまず無く、狙いも正確無比の筈。
だが一直線に飛んで居た雪球は空中で大きく曲がり、三人が出てきた塹壕へと収束する。
その曲がり方は空気抵抗など生ぬるい物ではなく、異常な曲がり方。
それはまるで吸い寄せられる様に。
何やら塹壕から悲鳴のような罵倒のようなモノが聞こえたが今はイタクァそれ所ではなかった。
大柄で無表情を浮かべた青年が大きく振り被り雪球を投げるのが目の端に映ったからだ。
距離は40メートル程。コントロールがあれば当たらなくも無い距離か。
イタクァは警戒しつつ指を鳴らし雪球を補充。
青年から放たれた雪球は―――大きく山型を描きイタクァのやや左側に逸れる。
「ちゃんと狙いなさぁい…!」
イタクァが低く身を屈め、投げのモーションに入ると、

"汝とは解り合えぬ。――逆転世界"

誰か解らぬ女性の声が聞こえた。
直後、大気に波紋が広がりイタクァは耳鳴りを感じた。
ぼすっ、と左から音が鳴る。振り返り確認すると、それは大柄の青年の投げた雪球の着弾音では無く―――
「へへーん、あったれぇ!」
雪球を振り被っている少女だった。
「しまっ…」
イタクァは驚愕に顔を染める。
既に彼方の剣を携えた少年と大柄の青年を狙い振り被ったモーション。
雪球を両手に握った状態では指が鳴らせなく、魔法での回避は頼れない。
もう見破られたと言う訳!?と思うが声には出さない。そんな余裕は無かったからだ。

少女は振り被った状態から雪球を放つ。
飛来する雪球は一つ。もう片手には何も無い。
イタクァは攻撃をキャンセル。
着地のことなど考えずに身を大きく後ろに逸らしつつスウェー。
そのまま後ろへ飛び、仰向けに倒れた。
ぽすん、と音を立てイタクァは雪に埋もれる。
眼前にゆっくりと飛んで行く雪球を確認。ぎりぎり避けた事にイタクァは安堵。
出来れば喜びを噛み締め、酒の一本でも煽りたかったがまだ勝負は着いていない。
がばりと起き上がり、少女を確認。
避けられた事が信じられないのか、両手には雪球は無く呆然としている。

それより気になるのが、
「バルザイ!行くぞ!」
剣を大きく上段に掲げる少年と、雪球を両手に握った青年との距離が既に20メートルを切っていた。
(バルザイ?…あの儀式刀ぉ!?)
イタクァは両手に握り締めた雪球を捨て、手を掲げ防御を取ったとき、
右の頬に軽い衝撃が走った。

「えぇっ…?」
呟き終わると同時、イタクァの足元に崩れた形の雪球が落ちる。
右手で頬を押さえると雪の残骸が僅かに残っていて冷たさを覚える。
(当たった…の?)
少女の方を振り向く。
彼女はにやにやと笑みを浮かべているが、呆然としていた先ほどと格好は同じ。投げた様子は無い。
それに―――当たった方向とは逆だ。
残りの二人を見てもハイタッチをしてるが雪球を投げた素振りは無い。

「なんなのよぉ~!」
広大な体育館にイタクァの悲鳴が響き渡る。



▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

【あとがき】

雪都(以下、雪):CLANNADの『同じ高みへ』という曲を聴きつつ書いてた。
インレ(以下、イ):ついに本文の内容にも触れないあとがきっス…。
雪:あー、内容ね。そういや雪原の場面だとさ…
イ:だと?
雪:かき氷食べたくなるよね。俺はー…レモンが良いかな。うん。
イ:…………控えめに言うとバカじゃないっスか?
雪:なんだと!?
イ:かき氷はイチゴ一択っス!それ以外邪道っス!
雪:ぁー、そっちツッコんじゃうんだ
テーマ:創作小説 - ジャンル:小説・文学
覇道高校、新撰組! 第十五幕 
2006.06.03.Sat / 03:52 
「はぁ…」

同時刻。
部室棟一階の長い長い廊下、月明かりに照らされたリノリウムの床に二つの影があった。
長い影を落とすは気だるそうな吐息を浮かべた長身の女性。御堂・つららだ。
光が当たれば深い瑠璃色を反射する髪は長く伸ばされ、うなじ辺りで結ばれている。
刃物の様な鋭い目つきで右目は縦一文字に傷痕が奔る。
糊で皺ひとつ無いブレザーに包まれた肩は心なしか下がっていた。

「つーちゃん先輩、今日は家に誰も居ないんです…」
小柄の影を廊下に伸ばすのは生徒会長の覇道・舞鬼。
束ねられていた髪は解かれ、肩ほどで切りそろえられている軽くウェーブがかかった栗毛の髪が歩くたび跳ねる。
眼をうるうるさせ、両手を丸めて口元を隠す舞鬼。頬を赤く染めているのは何故だ。
「先輩も何も私とお前は同じクラスだろう…」
タイの横、胸に付けられた校章は二人とも三年を表す群青色で縁取られている。
「こういうのは形から入るんだってー」
「そんな形の巡回なぞ聞いたことは無い!」

つららと舞鬼は放課後の見回りをしていた。
普段はつらら一人でやるのだが、今日は舞鬼が閃いた様に、
「今日はつーちゃんと夜を共にする!」
と言い出し(本当にただ閃いただけなのだろう)今はこうして二人で夜を纏う校舎を巡回していた。
当然つららは止めたのだが頑として舞鬼は譲らず仕方なく、という形なのだが。

「…む、どうした?」
いつもならここでノリがどうのだとか栄光の漫才ロードがどうのと喚くだろうとつららは踏んでいたが、舞鬼の反応は無い。
横を向けばぴったしと並び付いてきた舞鬼の姿が見当たらず、はっとして後ろへ振り返ると、
「つーちゃん逃げて!」
舞鬼の眼は大きく開き、廊下に響く大声で絶叫していた。
顔を振り返る状態で舞鬼を見ていたつらら。
その背後から強烈な熱風とプレッシャーがかかるのを感じ、低い姿勢から強く床を蹴り跳躍。
何か強烈な勢いで質量あるものが通過したのだろう。耳元から轟とした音が聞こえ、刹那追い風を感じる。

「只者じゃねぇと思ったけどよぉ、良い動きするじゃねぇか、あぁ?」
回転受身を取りつつ、つららは背後に向いた。
左手を水平に伸ばし舞鬼を庇う様に佇む。
廊下にはいつの間にか新しい人影が現れていた。
それは大柄の十代後半ほどの青年だった。
目つきは悪党顔負けの悪どさを漂わせている。
焔色をしたストレートの髪は長く、無風の廊下だが何故かゆらりと揺れていた。
筋肉質の体に制服を纏っていない事からは覇道学園の生徒では無いことが解る。
両手には淡く赤銅色に光る皮手袋を填めていた。
手袋の位置を直しているので先ほどの熱を伴った風は拳圧なのだろう。

「…にしてもアンタは手品師か何かか?」
男はつららを睨みつつ言う。
いつの間にかつららの舞鬼を庇う逆の手には一本の鞘に収まった長刀が握られていた。
「気にするな。乙女の嗜みだ。」
と真に皮肉ひとつ無い真面目な口調で語るつらら。
すっと前に出て、男と対峙する。
「私は御堂・つらら。この学校の治安を守っている者だ。君は…この学校の生徒ではないな。名は?」
つららは両手を下げたまま、背筋を伸ばし立つ。鞘に収まった刀は握っているが構えてはいない。
ほう、と男は感嘆。
「名乗られたらコッチも名乗らないとな。確かブシドーって言うんだっけ?そういうの嫌いじゃないぜ。」
威嚇するように睥睨していた眼をすっと細める男。雰囲気に真剣さが生まれる。
「俺様はクトゥグアってんだ。別名"生ける炎"。よろしくな。」
「別名"イケイケホモ"?」
と、いつの間にかつららの横へ立っていた舞鬼がすかさず突っ込む。
「うっせぇ上にちげーし!黙ってろガキんちょ!」
「ガキじゃないもーん!30歳のマダムだもーん!」
「マジかよっ!?」
「…嘘に決まってんじゃん。」
「急に冷めるなっ!」

舞鬼とクトゥグアと名乗る赤髪の男のやり取りに、つららはこめかみを抑えつつ間に入り仲裁。
「クトゥグア君と言ったか。君は何故ここに居る?」
「……………。」
何やらクトゥグアは額に深い皺を刻み苦虫を噛んだ様な顔をしている。
一頻り唸った後、
「………俺が俺であるため、かな。随分哲学的な事を言うんだなぁ、アンタ。」
「そういう事を聞いているのでは無いっ!何故生徒でもない君が学園内に居るのかと聞いている!」
あぁ、と男は呟きぱぁっと顔を明るくする。何だそんな事かよとでも言いたそうな顔だ。
「強いヤツを探してたんだよ。正直暇なんだよなぁー…。ここに呼ばれたんだけどよ、アイツ別に用は無いとか言いやがるわけよ。」
そう言い終ると口の端を仄かに上げ、不敵な表情を浮かべる。
「だけどよ…見つけたぜっ!」
 
言うや否やクトゥグアの足元から爆発した様な音が鳴り響く。
五メートルほど離れていたつららに向け超加速の突進をかける。
距離は一瞬に詰められ常人では反応できない速度で男は腰に溜めた拳を一気に解き放った。
廊下に穿つ音が響き渡る。

「…おいたが過ぎるな。クトゥグア君。」
男の硬く握られた拳はつららの掲げた鞘に収められた刀の背で受け止められていた。
傍目から観ると絵画を見ているような停止した空間。力は拮抗している。
クトゥグアは目をゆっくりと細め感心するように呟く、
「アンタ、やっぱなかなかやるねぇ。楽しめそうだぜ。」
「私は貴様みたいな曲者を取り締まるのが仕事だ。…かかって来い。」
舞鬼はそんな光景を見てすすっと遠巻きに移動。
口をつんと尖らせて詰まらなそうな顔をする。
「あーあ…つーちゃんのスイッチ入っちゃった…」
暫しの沈黙。
二つの影は示し合わせたように飛び退り―――再び激突する。

つららは抜刀していないまま、低い姿勢で走りつつ身長ほどある長刀で大きな弧を描いた。
鞘に納まったままの刀の切っ先がクトゥグアの顎目掛けて放たれる。
クトゥグアはほぅ、と感心した声を出し首をほんの少し後ろへ逸らす。
刀は空気を裂く音を奏でつつ高速で通過する。
「ガラ空きだぜ!」
クトゥグアは上半身を右に屈め、右手を下から打ち上げるような格好で拳を繰り出す。
つららの顔は驚愕に固まって―――居なかった。むしろ口の端が上がっている。
「甘いっ!」
つららは予め刀を当てようとはせず、既に刀は振り切る事無くぴたりと止まっている。
手首を早送りのような速さで返し、頭―――柄の底辺の部分を襲い来る拳目掛けて打ち下ろす。
鈍い音が響きクトゥグアの拳が刀の頭に穿たれる。
並みの人間では拳が砕かれる一撃。
遣りすぎたかと思ったつららは男の顔を確認する。
それは苦痛に歪む表情ではなく、
「くっくっく…あっはっはっはっは!そうでなくっちゃな!」
「貴様は…」
「あぁ、俺は残念ながら人間じゃあない。だから本気でかかってきて良いぜ。アンタの限界、知りたく…なった!!」

哄笑と共に開いた左手を抜き手の形にし、つららの傷が走る右目を狙い突き穿つ。
「ちぃっ!?」
寸での所でつららは顔を引きつつ捻る。物凄い速さで出された突きがつららの頬を掠める。
頭を後ろに反らした勢いを殺さず、そのまま足をクッションにし野生動物のように後方へ飛び下がる。
「何故人外が居るかは今は問わぬ。貴様が仇なす魍魎とならば…成敗してくれる!」
「そうこなくっちゃ!」
クトゥグアは再び地面を抉らんばかりの踏み込みでつららまでの距離を詰める。
強く固められた右の拳を前に出しかけ―――深く屈んだ。
つららから見えない位置の左手を地面に沿え、リーチの長い足で水面蹴りを放つ。
フェイントを込めた足払いにつららは微動だにせず放たれた足の首を狙い、上履きを履いた左足の踵で踏み抜く。
クトゥグアの顔は一瞬顰められるがそれは直ぐに目を見開く形で変わる事になる。
つららは足払いを踏み抜いた足を軸とし、鞘付きの長刀でクトゥグアの目を狙い猛スピードで突く。
地面に添えた左手を開いたまま眼球を襲う刀の腹に叩き打ち、突きの軌道を変えるクトゥグア。
そのままカウンターの形でつららの腹部に右拳を打つ。
だがその軌道に進入物があった。
つららの右足の裏がクトゥグアの右拳に添えられ、衝撃を吸収し其の儘つららは後方へ飛ぶ。

彼女は着地の衝撃を膝を曲げることで往なす。。
乱れた長めのプリーツスカートにも目も暮れず優雅に立ち上がる。
クトァグアも踏み抜かれた足を回しつつ、むくりと立ち上がった。
「その刀、抜かないのか?」
「…抜いても良いのか?」
「是非見たいねぇ、感じたいねぇ、スリルってのをさ。」
「成らば魅せよう、そして愚かさを噛み締めろ。起きるがいい、三代目フツノ。」
つららは刀を胸の高さで水平に持ち、右手を柄に、左手で鞘の根元を握り、徐々に刀身を顕にする。
ゆっくりと姿を見せるは珠散る刃。
素人目にも惹かれる美しさ。とても血を吸う凶器には見えない。
窓から射す月光に照らされているがぎらぎらと刀身は光らず、濡れたようにじわりと光る。まるで光を吸っている様だ。

「御堂・つらら、参る。」
つららは右手にフツノ、左手に鞘をそれぞれ持ち廊下を駆ける。
だらりと両手を下げた格好で、正眼ではなく八双の構え。
「鞘も使うとは、珍しいじゃんか。」
「ならば篤と見るが良い。」
つららは低い姿勢から右足を踏み込む。
廊下に爆発音が響き、そのまま左手に下げた鞘でクトゥグアの右膝を狙い―――同時に右手に携える抜き身の刀、フツノを上段から振り下ろす。
クトゥグアは下段と上段からの迫る攻撃を一瞥。
死角は無い。ならば正面の懐―――と見せかけつららから見て右へサイドステップ。
首を捻る。先ほど立っていた所の丁度頭があった場所にフツノが振り下ろされた。
風を切る音すらしない妖しく光る日本刀にクトゥグアは口笛を吹く。
あとは鞘を片手拳の背で受け止め、右ストレートを顔面に打ち込めばその微笑を浮かべた綺麗な顔は―――微笑?
クトゥグアは悪寒でとっさに飛び下がる。
先ほど防ごうとした横から迫る鞘は、フツノの刃に変わっていた。
いや、変わっていたというより―――フツノの棟に鞘が宛がわれている。
振り下ろしたフツノを右に避け交わされた瞬間右手首を返し刃を右に向け、予め左から放っていた鞘でフツノの棟を叩き強制的に軌道を変えたのだ。
鞘だと思い下手にガードしていたら今頃手は持って行かれていただろう。

「エゲツねぇな、アンタ」
「お喋りする時間は無いぞ?」
とっさに飛びのいたクトゥグアが後方に着地しようかと言う頃には既につららは元の腕を垂らした八双の構えに戻っている。
突進のスピードは少しも衰えては居ない。
「チッ…どんなスピードしてやがる…」
クトゥグアは忌々しげにごちる。
「その首、貰い受ける。」
又もつららは屈んだ姿勢から双撃を放つ。
それは同じ軌道で、下段に鞘、上段からまた先ほどと同じ軌道のフツノ。
「舐められたもんだ!二度目は無いぜ!」
クトゥグアは怒気を纏い叫ぶ。
予め出しておいた左足の蹴りで鞘を蹴る。
タイミングは抜群。カウンターで入った鞘は音を立て飛び、廊下の壁にぶつかる。
左からの攻撃は空になった。
すぐさまクトゥグアは体勢を立て直すが上からの斬撃を交わす余裕は無い。ならば―――
「逸らすまで!」
先ほどの鞘での強制方向転換は無い振り下ろされるだけのフツノ。
横から刀の腹を叩き、懐に潜ればクトゥグアの勝利だ。
予定通り振り下ろされたフツノ。
左手の掌でフツノの腹を叩く。確かな手応え。軌道は大きく逸れた。
「貰ったぜぇ!」
クトゥグアは右手を軋まんばかりに握り硬め、渾身の力でつららの腹部に叩きつける。

廊下には肉が叩かれた低音が鳴り響く。
床には吐血で血溜まりが出来る。
静まり返った校舎の中、悲鳴とも聞こえん呻き声が生まれた。





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【あとがき】

雪都(以下、雪):長っげ!長っげ!
インレ(以下、イ):というか、何でボクなんスかね?話違うっスよ?
雪:いや、覇道はみんな大変なんだよ。うん。
イ:それじゃあボクが暇を貪り放題してるみたいじゃないっスか!
雪:…違うの?
イ:………あ!なんかこの女の人強いっスね!
雪:ココだけの話、実はつららんも『本』から出たんだよね。だから強い。
イ:大事件!?
雪:という冗談は置いて、と
イ:かじかじかじかじかじ…
雪:ウサギだからって噛むな!痛い!地味に痛い!地味に!
イ:というかあとがきって何書くもんなんスか?
雪:…さぁ?
テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学
覇道高校、新撰組! 第十四幕 
2006.06.02.Fri / 04:29 
覇道高校体育館。
造りとしては特に特筆する場所は無いが、広さが異常であることで有名である。
もし野球をするのならば10試合同時に出来るのではなかろうかという広大な建築物。
室内で長距離走が可能という冗談のようで本当であるから恐ろしい。

ハスター(人間に加勢していると知られたら何を言われるか解らないと言い、風を屈折させ透明化している)に連れられ、命と鮎と剣信は体育館入り口に唖然として三人並んで立っていた。
体育館の重厚な鉄扉を開けたら―――そこは雪国だったのだ。

胸の高さまで雪が積もっており、背の低い鮎なんか身長と同じくらいだ。
まだ尚、上空から少量だが滾々と雪が降っているのを確認。
命が堆積した雪を恐る恐る触ってみるとやはり冷たく、掌の温度で水滴と化す。
「本物の雪だよ、これ。」
雪原は遥か遠くまで続いており、視界の届く限り白が続いている事を確認する。
天井に幾本も吊るされた水銀灯が銀世界を更に白く染めていた。

三人で入り口の雪を軽く手で掻き出し、即興の階段を造りうず高く積もった雪上へ出る。
「うぇー…手が痒いよ…」
鮎は小さな手が真っ赤になっており、両手を擦り合わせ摩擦熱で暖を取っていた。
命は生暖かい視線でその光景を見てからゆっくりと雪原を見回す。
するとやや前方にドーム型の膨らみが目に映る。
ちょうど人が潜れるぐらいの穴がぽっかりと開いており、中からは煌々と明かりが洩れていて、
「かまくら、なのかな?」
命は誰に言うと無しにつぶやく。
見回しても他には特に気になるものは無かったので(何で雪が降っているのかを除いて、だ。)一同は"かまくら"を目指した。

"かまくら"に近づくにつれ入り口から中の様子が伺える。
何処から引いたのか天蓋には白熱電灯がぶら下がっていて、中をオレンジ色に照らしていた。
足が短い四角のテーブルに布団がかかったものがある。炬燵なのだろう。
卓上には籠があり、温州みかんが幾つも盛られている。
その炬燵の中に入りプラズマテレビを観ている女性がいた。

「あの、ごめんください」
命一行は"かまくら"の入口兼出口に立ち、声をかけた。
予想外だったのかその女性はびくんと震え、物凄い勢いで振り返る。
凛とした目付きに引き締まった唇。意志の強そうな整った顔立ち。
青空のような色をした髪は長く伸ばされ、後ろに流れる。
肌はこれまた雪のように白く、線は硝子細工のように細い。
痩せ型であるが出るとこはしっかりと出ていて、へこむ所は律儀にへこんでいる。
胸を強調したゴシック調の服を着ていて正直目のやり場に困る。

「なんですかぁ?」
鼻に通る艶かしい口調で女性は応答。
「この雪はひょっとして貴方が…」
「そうですけど…何かぁ?」
「出来れば止めてほしいなぁ…なんて思うわけですが…」
命が尋ねるとその女性は詰まらなさそうに炬燵に顎を乗せて喋る。
「だって暇なんですものぉ」
つーんとした表情で視線を薄型プラズマテレビに顔を向け、みかんを手に取り向き始めた。
(なぁ、ハスター、お前ら召還された組って暇なのか?)
命は"かまくら"から出て小声でハスターに告げる。
(当ったり前だ!オレらは別に呼び出されただけで何も指示はされて無いんだからな!)
(『本』を持ってる人も何がしたいんだか…。というかあの人を止めるにはどうすれば良い?)
剥いたみかんを口に入れ、咀嚼しながらチャンネルを変えている美女を指差し命。
炬燵に一緒に入りテレビを観ている鮎はこの際無視する。
(うーん、刺激ある遊びで欲求が満たされれば良いんじゃないの?オレみたいにさ。)
(剣信はどう思う?)
(そうするしか無いんじゃないか?)
小声の談義が終わったところで、命は再度女性に声をかけた。

「あの、暇なら僕たちと遊びませんか?負けたら勝者の命令を一個聞く、でどうでしょう?」
油が切れたロボットの様にコマ送りで首を向けてくる美女。
んー、と唸り天蓋のライトを見つめつつ
「まぁ、良いでしょう。暇だし、ねぇ。」
リモコンの電源ボタンを押してテレビを切りつつ、すくっ、と炬燵から出て伸びをする。
以外に身長は高く、剣信ぐらいあるだろうか。
「では外に出ましょお。」

女性は指を天に掲げ、ぱちんと鳴らす。
すると何処からともなく降り注いでいた雪がぴたりと止まった。
視界が良くなった体育館。よぉし、と女性は言い命らを見回す。
「私はイタクァって言うのぉ。昔は氷を統べるもの、とか言われてたけど知らないかぁ。」
イタクァは苦笑しつつ頭を掻く。
そしてふと思いついたように、
「坊や、大切なものって何だと思う?」
命を人差し指で指名する。
「えっと…」
『自分と戦うことだ!』
透明化したハスターが命の後ろから大きく叫んだ。
対するイタクァは目を細め、哀れんだ目で命を見つめた。
「ハスターと同じようなこと言うのねぇ…」
命は何も言わず振り返らないでバルザイの堰月刀で背後を突く。
ひぇう、と謎の声を挙げエビの様に飛び退るハスター。

「私は『冷静さ』だと思うのよぉ。」
透き通った瑠璃色の長い髪を人差し指に巻きながらイタクァ。
「冷静な判断力を養えつつ楽しむことが出来る良い遊びがあるわぁ。」
それはね、と勿体振りつつ、
「みんなで雪合戦しましょお!」
無邪気な子供のように朗らかな笑顔でイタクァは告げた。



         ●         ●         ●


イタクァが提案した遊び『雪合戦』の条件はこうだった。
①イタクァ対ニンゲン3人のチーム。
②雪球が一発体に当たったら退場。
③ニンゲンチームは何してもOK。
④イタクァは能力を行使するが本体を直接狙った攻撃はしない。
⑤敗者は勝者の命令に一個従う。
つまり、イタクァに一発でも当てれば勝ちという勝負。
なんとしても勝って体育館を取り戻さないとここが雪合戦場としか使えなくなる。

命、鮎、剣信、ハスターは塹壕のように掘った穴に隠れ作戦会議をしていた。
実は既に始まっていたりするが作戦は大事だ。
先ほどから頭上をびゅんびゅん飛んでいる雪球(イタクァが投げている)を一応気にしつつ命が言う。
「④番が曲者だよな。相手の出方がまったく解らない。とりあえず、今みたいに雪球を大量生産する能力はあるんだな。お、手出しが出来ない事は分かったぞ。」
「魔法使うとなるとねぇ…」
と鮎が珍しく頭を使っているような顔をしている。
剣信はというと目を閉じ黙考していた。
三人がうんうん唸り考えていた時、ハスターが飄々とした声で提案した。
『イタクァはね、魔力感知が弱いんだ。オレにも気づかなかったし、勿論キミらがバルザイとニトクリスを持ってることも解って無いだろうね。』
だから、と続ける。
『③番にもあるんだ。バルザイとニトクリスを使って一気に攻めれば案外直ぐ勝てるんじゃないかな。』
「ニトクリスの鏡は何とか解ったよ。でも、バルザイの使い方がいまいち解らないんだ。」
と命が片手に持った三日月形の幅広の黒剣を見つめながら言う。
バルザイと呼ばれた剣の表面にじわりと赤い光が走り、ゆっくりと消える。
『そうなのかい?走る前でも言ってくれれば教えたのにねぇ…』
と両掌を上に挙げやれやれのジェスチャー。
キミ達なら上手く使いこなせるんじゃないかな、とハスターは言い三人に語りかける。
ハスターから身振り手振りで教わっている三人。
命と鮎の顔は徐々ににやつき、剣信はふんふんと肯きつつ聴く。
バルザイ使い方講座が終了すると三人は円陣を組み気合を入れ、塹壕から飛び出した。
反撃が始まる。





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【あとがき】

雪都(以下、雪):覇道よ!私は帰ってきた!
つらら(以下、つ):む、久しぶりに現れたな。
雪:久しぶりゆえ設定を忘れかけました。
つ:そんなことより八神が頑張っているのに局長の私はのうのうとしても良いのか?
雪:ははは、もうちょいしたら程よく大変になってもらいます。
つ:ほぅ!(キュピーン)
雪:先輩の凄さを知ってもらえますよ?
つ:伊達に鍛えてはいないからな。
雪:脱いでも凄いですもんね。
つ:そ、それは関係ないだろう!
雪:と言う訳で、次回はクロスなんたら式で『つららん(脱いでもゴイスー)その頃は!』をお送りです
つ:まだ引っ張るか!

ベジータ:!!
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