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幻想第二世界鉄道(小説) の記事一覧
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幻想第二世界鉄道  ~正常な街~ 
2006.07.18.Tue / 06:32 
「クロワッサンにカフェオレ、ミルクティーにアップルパイです。では、ごゆっくり。」
「有難うございます。」
街の大通りに面したカフェ、店外に置かれた白い丸テーブルの一つから甘い匂いが漂う。
仄かに立ち込める湯気は青空へ上ろうとするが、薄手の大きな白い布を張ったパラソルに遮られ霧散した。
銀のトレイを持ったボーイは深々と一礼し、店内へと戻って行く。

「さ、召し上がってください。」
テーブルに着くは二人の男女。
男は十代中盤で、端正な顔立ちをしていた。雪の様に白い真っ直ぐな髪は長く伸ばされ、うなじ辺りで二つに括られている。
中肉中背を上下黒のモーニングで身を包み、手袋も黒、ネクタイも黒。葬式帰りかその行きかどちらかを思わせる井出達。
その男はティーカップとポットにミルク壷、狐色に焦げたアップルパイを女性の前に置きなおした。

「疲れた。」
その女性は小さく、だが凛と通る澄んだ声で呟いた。
女性、と言うにはまだ早いか、こちらは十代前半でまだ少女と呼んでも良いだろう。
燦燦と照る太陽をいっぱい浴びた大麦の様な金髪は短く切りそろえられている。
右目には小さな正方形の布が当てられており、ゴム紐で固定されていた。俗に言う眼帯である。
黒無地の質素なワンピースを着込んだ彼女の傍らには金属製の一対の松葉杖が置かれていた。
まるで入院中の少女が喪服を寝巻きにしたような体である。

「随分と歩き回りましたから。それにしても、こんな大きな街は久しぶりですね。」
「ん、結構美味しいわ。87点」
少女は小さな手で掴んだ銀のフォークでパイを崩し、早くも攻略しつつ、採点する。
「それは良かった。」
なんだか根本的にずれている会話を続けながら昼下がりのお茶会を開く二人。
少女が二三口でアップルパイを平らげ、二つ目を眼帯の少女が注文。そして男がクロワッサンにはじめて手を付けたときに異変が起こった。

何やら往来が騒がしかったのだ。
確かに大通りなので喧騒があるのは当然だったが、その喧騒は少々異質なものだった。
行きかう人々が一斉に内緒話を囁き合って居るような静かなざわめきが起こっている。
男は口を開き食もうとしたクロワッサンを一先ず皿に戻し、喧騒へと視線を向ける。
「号外ーっ!号外だよーっ!」
さざめきの中、微かだが男のよく通る声が響き渡った。
人々が固まってる中心から声は発されているようで、辺りには薄手の新聞紙がこれでもかと撒かれている。
「一部貰ってきます。あなたは此処に居てください。」
「わはっは。」
越冬時の餌を蓄えるハムスターの様に頬をアップルパイで膨らませた彼女は、男へ見向きもせずに、メニュー表に向かい答えた。



すぐにテーブルに戻り、席に着いた男の手には、カラー印刷された新聞紙が握られていた。
号外、と紙面の半分ほどを埋めているのではないかと言うほど大きなフォントで飾られた新聞紙に彼は目を落とす。
「おや」
少々目を動かしてから意外そうな声を上げ、少女に目を向ける。
が、彼女はカフェ手作りのチーズケーキと激闘しており、とても話しかけられる表情ではなかったので、男は軽く肩を竦めて再び紙面を見つめる。
「母親が子殺し、ですか。」

一通り読み終わり、新聞紙を半分に折りたたんだ時だ、横のテーブルに新しく腰掛けた中年夫婦の夫が男に声をかけた。
「失礼、君達は旅人さんかい?」
「はい、近くを通りかかったもので。」
「そうかい。えっとー…」
「僕はアンリ、そして彼女はコッペリアと言います。」
アンリと名乗った白髪おさげの男は、チーズケーキを貪る黒衣の少女を手で示し紹介する。
コッペリアは口を開こうとしたが思い直した様に閉口。恐らく頬にケーキが破裂せんばかりに詰め込まれているからだろう。彼女は中年夫婦に目礼をする。

「ご丁寧にどうも。」
と夫婦は微笑み、返礼。
そのまま短い顎鬚を生やした男性の方がアンリへと向き直る。
「アンリさんは新聞読んだのかい?」
「はい、母親が実の子を…殺めたそうで。悲しいことです。」
アンリは顔に僅かながら影を落とし、悲哀が篭った声を紡ぐ。
夫婦は二人ともその言葉に力強く首肯し、同時に額に皺を深く刻んだ。
恰幅の良い婦人が眉を潜めて、忌々しげに、
「最近はこういう『壊れた』人が多くてねぇ…」
「『壊れた』ですか。」
「そうよ、殺人なんて倫理的にありえないわ。きっと精神に異常があるのよ。」
それを聞いた男性は力強く首を一回縦に振り、
「そうだそうだ。ましてや自分の子を殺すなんてね。狂っているに違いない。」

アンリはすっかり冷たくなったコーヒーを一口呷ってから再び口を開く。
「判決はどうなるのでしょうね。」
ボーイがカフェオレを二杯、中年夫婦のテーブルに置き、一礼して去る。
男性は陶磁器のカップに砂糖を入れつつ、なんだそんな質問かと軽い調子で答えた。
「恐らく無罪だろうね。」
新聞紙の一文を太く角ばった人差し指で示した。
「ここ、見たかい?証言が一貫していないって書いてあるだろ?精神異常者によく見られる傾向だよ。精神鑑定も明日明後日には終わって、そのまま病院行きだろうね。」
「無罪、ですか。」
するとカフェオレを飲んでいた女性が目を見開き、驚いた表情で、
「こういう狂ってる人はね、即座に病院に隔離されるの。」
「事情聴取などは?」
「しないわよ。何聞いたって無駄でしょ?自分の生んだ子供を殺したのよ?とても正気とは思えないもの。こんな人間に責任を取れって言うなんてナンセンスだわ。」
旅人さんのお国でもそうでしょう?と婦人はアンリに問いかけ、アンリは苦笑した。



暫くその夫婦と雑談を交わした後、別れを告げてアンリとコッペリアは街を出た。
二人はイチョウの緑葉が咲き乱れる広い幅の街道をゆっくりと歩いていた。
衣類や食料が詰まったこげ茶の紙袋と、カフェで包んでもらったケーキの箱、一本の松葉杖を起用に抱えるのはアンリである。
コッペリアは銀色軽金属で出来た松葉杖一本だけで体を支え、余った片方の手で新聞紙を掴み、眼帯をした目で読んでいた。
少女の視線が上下に往復すればするほど、比例して表情が険しくなる。
アンリは横目でコッペリアを見てから、イチョウで出来た天然の天蓋に目を移し、唐突に暗唱発表会の様に語りだした。
「犯人は20代の母親。お子さんは小学生二人に、幼児が一人、乳児が一人の計四人。夫は依然失踪中であり実質的離婚。国から生活保護を受けつつ働くも、莫大な借金の返済に追われる日々。…あなたはどう思います?」
意表を付いたパスにコッペリアは一瞬戸惑うが、すぐに口をアヒル口のように歪め、
「べつに。」
そうですか、とアンリは力なく笑い、そのまま続ける。
「間引き、と言うのはご存知ですか?口減らし、とも言いますが。」
再度問われたコッペリアは感情がリセットしたのか無表情になる。
「…失言です。まぁ、私の故郷では実際によくあったことなのですよ。頻繁に、とは言いませんが珍しいことではありませんでした。」
「………。」
「先ほど子殺しが精神異常者だと言われたとき、肯定も否定も出来なかった私は、彼らに言わせると同じく心が狂ってるのでしょうね。」

街道に乾燥した涼やかな風が走り抜けた。
辺りはイチョウの葉擦れと二人の足音だけが鳴り渡る。

「何が正解かは解らない。けれど一つだけ解るわ。」
コッペリアだった。
「少なくとも、病院に叩き込むだけなら、これからも似たような事件は続くってことよ。」
「…腐った蜜柑、ですね。」
アンリは眼を閉じて口元を緩やかに曲げる。
それを見たコッペリアは鼻を鳴らし、立ち止まる。松葉杖の石突を並木の続く先へ向けた。
「お茶が飲みたいわ。」
指された方向には深緑色の列車が止まっていた。駅は無く、また線路も無いが風に乗って僅かながら人々の喧騒が聞こえる。
「そうですね。私も少し咽が渇きました。戻ってお茶にしましょう。幸い、ケーキもあることですしね。」
「わ・た・し・の、ケーキよ。」

眼帯の少女は手早く新聞紙を畳み、それをアンリの抱える荷物に叩き込む。
そのままもう一つの松葉杖をぶんどり、彼女は、彼女なりの足早で列車へと進んだ。




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【あとがき】

どうみてもキノの旅のインスパイアです。
これはもう簡潔に一話で終わります。
そして次がいつかは解りません(ひ

生きているとやたら疑問は浮かびます。
それを愚痴っちたり否定したりしたいけど、ただ書くだけじゃつまらない。
どうせなら皮肉をこめて小説風にしてみようと思ったのです。
簡潔に言えば、ただの回りくどい主張です。

また何か引っかかることがあったら、それが二話目となりますww
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